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「子どもを産まない」選択をした女性が抱く、女性支援への違和感。【アンコンシャスバイアスを探せ!】

  • 2022.7.9
Illustration_ Sheina
Illustration: Sheina

私は物心ついた頃から、自分はこの社会で子どもを産み育てられないと思っていた。父親が育児をしないことがデフォルトの家庭の中で、母親にかかっている負担はあまりにも大きく感じた。それも我が家が特別なわけではない。ただでさえ女性は命がけで妊娠と出産を経験するのに、その後の育児や家事のほとんどを多くの女性が家庭の中で担っているのが日本社会の現状だ。実際、東京都の調査(令和3年度)では、女性の家事育児時間の1日平均が8時間54分、男性の平均が3時間34分と、圧倒的な男女差がある。育児や家事を平等に分担している家庭も若い世代を中心に増えてきてはいるが、育児休暇を取得している男性は12.7%(2020年度)と少なく、30歳の私の肌感としては、ドラスティックに社会の性別役割分業意識は変わっていない。だから、私は産まない選択をした。

出産しない女性に対する社会の冷たい視線は依然として残っている。子どもを産まないことを他人に伝えると、「子ども嫌い」「なによりキャリアを優先している」「趣味に生きている」など、理由を求められることが多い。さらに、私の選択を「わがまままで幼稚なこと」のように扱う心無い言葉を浴びせられることもある。そのたびに、私たちは、「産まない」と言いづらい社会を生きているのだと感じる。

Photo_ 123RF
miniature woman and man on piles of dollar coinsPhoto: 123RF

そんな私が就職活動をしていた時にふと覚えた違和感は、女性のキャリア支援に関する説明の多くが「子育て支援」であることだった。当然、子どもが生まれたら時短勤務の選択肢があることや、ベビーシッターの補助金を得られることなど、働きながら子育てをするためのさまざまなサポートを企業が用意することは素晴らしいことだ。だが、これらは親になるすべての人が使うものであって、“女性”支援の枠組みの中に押し込まれ、「女性が働きやすい職場環境です」「すべての女性を支援しています」と打ち出されてしまうと、女性が育児や家事を担うというジェンダーロールの再生産のように感じられてしまうのだ。

企業が「女性支援」「女性活躍」というのならば、子育てにまつわることだけでなく、男女の賃金格差や不公平な雇用形態の是正、セクシュアルハラスメントの根絶などにも力を入れて欲しいと願う。なぜなら、日本の男女の賃金格差は海外に比べて大きく、OECDの最新値では、韓国(31.1%)やイスラエル(24.3%)、そしてラトビア(23.2%)についで日本は22.1%で世界ワースト4位。さらに、2020年における非正規雇用労働者の割合(厚生労働省発表)を見ると、女性は54.4%、男性は22.2%と依然として大きな差がある。それに、非正規雇用労働者のうち年間収入が200万円未満の割合は、女性は75.9%、男性は24.1%と、ワーキングプア層も圧倒的に女性が多い。この問題に切り込んでこそ、「女性支援」と言えるのではないだろうか。就労における構造的な男女不平等を見直し、是正してはじめて、誰もが安心して働き、子どもを持つ/持たないという選択肢を選ぶことができるはずだと思えてならない。

Text: Mina Oba

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