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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.58血液型占い

  • 2022.7.8

クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.57この街と私のジンクス

vol.58血液型占い

「ユニークなライブだったね」ついさっきまでステージで繰り広げられていた煌めきが嘘みたいに遠い。明るくなった会場で規制退場のアナウンスに従い着席したまま、自分たちの列が呼ばれるのを待っている間に私が呟くと、隣の席に座っていた彼女がこくん、と小さく頷いた。会場の外に出て人波とは逆の方を私が指差すと彼女が笑ったので、ちょっと遠回りして駅まで歩くことにした。

ライブの感想からはじまって、なんでもない事で笑ったり、茶化したり茶化されたりしながら、楽しみにしていた事が楽しく終わった事の安心感と寂しさを感じていた。「あれ?そう言えば血液型なんだっけ?」と私が彼女に尋ねると「A型」と簡潔な答えが返って来た。彼女が私の目を見たまま軽く眉を上げてみせたので「私も同じ」と伝えると少し意外そうな表情で、先日久しぶりに会った旧友に言われたことを思い出した。

血液型を尋ねられ、「何型だと思う?」と私が質問に質問で返すと少し間があった後に「A型以外の全部」と言われたのだ。そのことを彼女に話すと「それなんか分かる気がするけど、本人どんな気持ちなの?」と顔を覗き込まれたので曖昧に笑って、「血液型占いとか信じる方?」と話題を派生させると、「好きだけど、あんまり信じないかなー」と彼女が言った。公園を抜けて駅を目指すルートなので、ジョガーが時々真横を通過する。道が夜の暗闇に濡れていて、肌にその湿度を感じながら、私は自分の中にある気持ちを言葉にした。

「A型、B型、O型、AB型…血液型ってそもそもは性格にあんまり関係してないように感じるけど。子供から大人になる過程で、あーそういう几帳面なところA型っぽい、とか。自分がある感じB型だよね、とか誰かに指摘されることで、血液型の特徴を自分の性格として受け入れ、インプットしてしまう。その結果A型らしい自分、B型らしい自分、が量産されていくのかもね…言葉が人を作っていくから、私たちも日常で自分自身に向かってヘイトやネガティブな言葉を使うのはやめよう。無意識が記憶して本当にそういう性格になっちゃうよ」

血液型から話をスタートさせて、思ってもみなかった所に着地したけど、なんだかそれも含めて夜の散歩はいいなと思った。「あーなんか今の腑に落ちたかも」と彼女があっけらかんと夜空に言い放ち、帰りの電車人が多くないと良いなと私も呑気に思った。

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