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他人を利用する、平気でルールを破る......あの人のヤバさは、「H因子」が低いせい。

  • 2022.7.7
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同じロースクールに通うメアリーとジェーン。育った環境もよく似ているが、二人にはまったく異なる面がある。それは、メアリーにとって法律は戦いの術であり、ジェーンにとって法律は正義を実現する手段であるということだ。

メアリーはたくさんお金を稼ぐために法律を勉強する。報酬の高い分野の勉強に力を入れ、地位のある教授に自分をアピールすることも忘れない。一方ジェーンは、人を助けるため、世の中を変えるために法律を勉強している。教授に対しては礼儀正しいが、機嫌を取ろうとは思っていない。

二人とも将来は結婚したいと思っている。メアリーは社会的に地位のある男性との結婚しか考えていない。ジェーンはお金も地位も関係なく、心から愛する男性を見つけたいと思っている。

この二人の違いを説明するのが、本書『パーソナリティのHファクター』(北大路書房)のテーマである「H因子」だ。H因子は、簡単に言えば人の性格を測定する基準の一つで、「正直さ・謙虚さ」の度合いを測るもの。H因子が低い人は、自分の利益のためなら他人を利用したり出し抜いたりすることもいとわない。あなたの周りにも、そんな人がいないだろうか?

H因子は、人の性格や特性を分析する「パーソナリティ心理学」の用語だ。パーソナリティ心理学の考え方の一つに、「ビッグ・ファイブ」というものがある。これは性格を5つの因子で測定するものだ。あらゆる性格の特徴のほとんどが、この5つのいずれかの尺度で測ることができる。つまり、5つの基準を測定すれば、その人がどんな性格かおおよそわかるということだ。

〈ビッグ・ファイブ〉
・外向性(例:活発⇔シャイ)
・協調性(例:寛容⇔頑固)
・誠実性(例:勤勉⇔ずさん)
・神経症傾向(例:感情的⇔鈍感)
・経験への開放性(例:クリエイティブ⇔単純)

ビッグ・ファイブは1960年代初頭に報告され、さまざまな研究で裏づけられてきた。しかし1997年、本書の著者であるK.リー氏(現・カルガリー大学教授)とM.C.アシュトン氏(現・ブロック大学教授)らは、ビッグ・ファイブに当てはまらない6つめの因子を発見した。それが、正直さ・謙虚さを示す「H(Honesty-Humility)因子」だ。

その名の通り、H因子の高い人は正直・謙虚・まじめ・公平といった特徴をもち、反対にH因子が低い人は狡猾・欲張り・自己中心的といった特徴をもつ。パーソナリティの因子自体はいずれも高い低いで優劣がついているわけではなく、あくまでそういう性格だというものだが、H因子が低い人はちょっと困りもののように思える。H因子が低い人は、己の利益のためなら何の抵抗感もなく人を騙したり、利用したり、ルールを破ったりするおそれがあるからだ。

H因子が低い人は、外面上は好意的に取り繕っていたり、権威があるように見えたりして、意外と見分けるのが難しい。H因子が低い人を見分けるポイントとして、本書では以下の特徴が挙げられている。

〈H因子が低い人の特徴〉

●「社会制度を打ち破る」人
法律や制度の抜け道を自慢げに語る人には要注意だ。

●「取り入る」人
自分にとって都合のいい人にだけ好意的な態度を取っていないかどうか見極めよう。

●「ギャンブルと金融投機」をする人
手っ取り早く金持ちになりたいと思ってギャンブルや投機に手を出す人が多い。

●「浮気」をする人
パートナーを欺く人、性的関係を手段として扱う人はH因子が低い。

●「顕示的消費」「ネームドロッピング」をする人
要は、権威・肩書きや高価なもちものを見せびらかす人だ。

●「『掟破り』のメンタリティ」をもっている人
「自分は優れていて特別階級にいる。通常のルールは適用されない」と考えている。

●「他のグループへの蔑視」をする人
他の集団に対して嬉々として誹謗中傷している人とは......言われずとも、あなたも距離を取ろうとするのでは。

周りにいたらちょっと厄介な「H因子が低い人」。本書では、H因子が低い人はどんな行動を取るのか(主にお金・権力・セックスに関して)、他の因子との関係(たとえばH因子が低くて神経症傾向も低い人は「恐れ知らずの強欲」で、神経症傾向が高い人は「責任逃れ」をする)、身近にH因子が低い人がいたらどうつき合えばよいのかなどを詳しく解説している。専門的な用語や言い回しの多い本だが、人の内面に興味のある読者ならたいへん楽しめる一冊だ。

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