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オ・ジェソクは今のJリーグと日本代表をどう見ているのか。古巣同僚、同郷の後輩との縁も明かす【一問一答】

  • 2022.7.6
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昨季開幕前に名古屋グランパスから仁川(インチョン)ユナイテッドに移籍し、9年ぶり母国復帰を果たしたオ・ジェソク。

第2回目の前回はKリーグでの戦いぶりや結婚生活など、韓国での近況について大いに語ってくれたが、話を聞くと、復帰後の現在もJリーグや日本代表の試合はチェックしているという。

それだけでなく、古巣でプレーする韓国人選手の後輩、さらには元チームメイトとも連絡を取り合っていることを明かしてくれた。

全5回でお届けするオ・ジェソクとの単独インタビュー一問一答も第3回目。今回は「オ・ジェソクが見る今の日本代表とJリーグ」、そして「古巣同僚、韓国人選手の後輩との縁」についてお送りする。

「今の日本代表のサッカーは…」

―オ・ジェソク選手が水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスでプロデビューした2010年当時と比較して、Kリーグ全体でサッカーのスタイルが変わったと感じたことはありますか。

「蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)のように、後方からボールをつなぐチームが増えましたよね。韓国は元々結果中心のサッカーで、サイドからのクロスを多用して、とにかく走るというスタイルが多い。もちろん、今もその名残はありますが、それでももっとテクニカルに、もっと面白いサッカーをしようとするチームが出てきています。そのような点が、以前と比べて変わったと思います」

―現在の韓国代表を率いるパウロ・ベント監督も、「後方からのビルドアップ」を目指すサッカーとして掲げているように、韓国サッカー界全体の潮流が変化しつつあるように感じます。

「相手よりも多く走り、スピーディーに、ボール奪取も激しいというのが、これまでの韓国サッカーの特徴でした。そんななかで、代表監督が正確な哲学を持っているというのは良いことだと思います。実際、今の代表でプレーする選手たちも満足しているみたいですしね。

それに、ビルドアップといえば日本サッカーの特徴だと思いますが、今の日本代表を率いる森保一監督のサッカーは、前線から素早くプレスを仕掛け、そこからスピードのあるカウンターで得点を狙う、というスタイルですよね。その一方で、韓国代表はビルドアップをするようになった。日本と韓国の両方で、お互いのサッカーの長所がよく混ざっているのではないかと思います。昨年3月の日韓戦では韓国が0-3で敗れましたが、今お互いにベストメンバーの状態で試合をしたら、どんな結果になるのかは気になりますね」

(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)インタビュー中のオ・ジェソク

―森保監督の名前を出されましたが、現在の日本代表の試合はチェックしているのでしょうか。

「チェックしていますよ!(6月2日の)パラグアイ戦を見ましたが、日本らしく技術的な上手さはありましたし、攻撃的なサッカーを上手く展開していたと思います。ただ、以前と比べて、守備が少し弱いという感じはしました。

日本の選手は欧州や南米と比べて身体が小さいですが、代わりに豊富な運動量を活かしたプレスやショートカウンターが効いていて、それが日本サッカーの新しい特徴になったんだなと感じています。パスは元々上手ですから、そういうところも日本代表の変わった点だと思っています」

―では、現在の日本代表で印象深い選手はいますか?

「全員印象深いですが、守備陣だと川崎フロンターレのキャプテンの谷口彰悟ですかね。前線はどの選手も素晴らしいですが、そのなかで特に印象深かったのは三笘薫です。三笘のプレーは日本で一度経験してみたかったのですが、あいにく一度もマッチアップできませんでした。三笘は東京五輪のとき、ケガもあってあまり出られずにいましたが、それでも終盤に良いプレーを見せていたので印象深かったです」

「プロスポーツはファンがいなければ意味をなさない」

―韓国では今年4月から、Kリーグやプロ野球などで声出し応援が解禁となりました。それから約2カ月が経ちますが、コロナ禍以前の日常に戻りつつあると感じますか?

「感じますね。ただ、今はもうコロナとともに生きていかなければならない時代に変わったと思っています。韓国も防疫のために最後まで最善を尽くしましたが、完璧にコロナ禍以前の時代に戻ることはほぼ不可能となってしまったので、韓国では早期に感染対策が緩和されました。日本でも無観客試合を経験したことがありますが、早く以前のようなJリーグに戻って、素晴らしい雰囲気で試合をしてもらいたいという願いがあります」

―Jリーグでも声出し応援の検証試合を実施するなど、段階的に声出し解禁に向けて動き始めています。Jよりも早く声出し応援が可能となったKリーグのスタジアムの雰囲気はいかがでしょうか。

「“プロスポーツはファンがいなければ意味をなさない”というのを強く感じました。声援がなければ雰囲気も生まれないですし、ファンの声援を聞くことで、改めてプロ選手としての自負心が芽生えます。それに、スタジアム全体の盛り上がりや観戦の面白さにもつながるので、選手やファン、関係者などサッカーに携わるすべての方のためにも、声出し応援は解禁されてほしいですね。日本も一日も早く以前の日常が戻ってきてほしいです」

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)熱い声援を送る仁川ユナイテッドのサポーター

―そのKリーグですが、デビュー当時と比較して、興行面や環境面での変化は感じますか。

「感じますね。以前よりもファンが多くなったと思います。何より、これまではどのチームも守備に重点を置くカウンターメインのサッカーをしていましたが、今はスタイルも変化し、環境もたくさん変わりました。昔は韓国サッカー特有の強圧的で硬い雰囲気がありましたのですが、今はメディアもそうですし、選手たちも積極的に意見を表現するようになりましたね。

それに、僕が最初にKリーグにいた当時は日本人選手がほとんどおらず、(水原三星でチームメイトだった)高原直泰さんや、(江原FCでチームメイトだった)島田裕介さん、大橋正博さんといった選手ぐらいでしたが、今ではたくさんの日本人選手がプレーするようになって、良い変化だと思います」

―ガンバ大阪、FC東京、名古屋グランパスに在籍したJリーグでも、2013年から2020年までプレーした8年間で変化した点はありましたか?

「2013~2014年頃までのJリーグは、いつも強いチームが勝つという雰囲気がありました。ただ、Jリーグが面白いのは、優勝するチームが毎年どこになるかがわからないところ。近年は川崎の優勝が目立ちましたが、今季は以前のようなJリーグの良さが出ていると思っています。それは観戦する楽しさにもつながりますよね」

―というと、Kリーグに復帰した後も、韓国でJリーグを見ているんですね。

「そうですね。特によく見るのは名古屋の試合です。名古屋もそうですが、ガンバも、今は下位にいますが、本来はもっと高い順位にいなければならないチームだと思っています。FC東京も含めて、今も古巣は応援しています」

―名古屋と言えば、オ・ジェソク選手がJリーグ時代に指導を受けた長谷川健太監督が、今季からチームを率いています。

「ガンバでずっと一緒でしたし、FC東京で監督を務めていたときも呼んでいただきました。僕の日本生活における“オンジン(恩人)”と言いますか、師匠ですよね。僕が最も尊敬する指導者です。

名古屋では、マッシモ・フィッカデンティ前監督が(ルヴァンカップで)優勝してチームを離れることになり、オフに選手もたくさん入れ替わりました。今季は難しい戦いが続いていますが、健太さんは名将なので、どんな困難も乗り越えてくれると思います。

ガンバでも東京でも優勝を成し遂げたので、名古屋でも優勝してもらいたいと願っています」

「コロナが落ち着いたらみんなで大阪に…」

―ガンバ大阪には今季からクォン・ギョンウォン選手が加入しました。彼の活躍をオ・ジェソク選手はどう見ていますか。

「(クォン・)ギョンウォンとは今も連絡を取り合っていて、ガンバの状況をよく聞いています。ギョンウォンも、韓国ではKリーグトップレベルの選手でしたが、日本に行ってからは“ガンバの選手がかなり上手で衝撃を受けた”、“サッカースタイルがKリーグと全然違う”といった話を聞きます。僕が初めてJリーグでプレーしたときに感じたことを、ギョンウォンも同じように感じているみたいです。

ガンバはとても素晴らしいチームですし、韓国人選手に対しても友好的なクラブです。それに、ギョンウォンはヨングォンとも似たプレースタイルなので、上手く適応してくれると思っています」

―一方、チュ・セジョン選手は今季あまり出場機会を得られていません。

「韓国のMFが日本で認められることは簡単なことではありません。日本のMFには優れた選手がとても多いので、セジョンもなかなか試合に出られないのだと思います。ただ、彼自身、Jリーグに行くことが本人の目標であり、夢でした。それに、例えガンバでなくても、ほかのチームで挑戦するという選択肢もあると思います。セジョンは韓国代表経験もある素晴らしい選手なので、もっと良い姿を見せてくれると信じています。

日本で生活する今の時間は、セジョンの家族にとっても良いと思います。例え試合に出られなくても、生活面では韓国よりもストレスが少ないので、家族の生活や人生という意味では、日本にいることが助けになります」

―ガンバではこれまでも、キム・ヨングォン選手やファン・ウィジョ選手など、多くの韓国人選手がプレーしてきましたが、“ガンバファミリー”のつながりは今も深いのでしょうか。

「もちろんです。コロナが落ち着いたらみんなで大阪に行って、スタジアムで直接応援もしたいと思っているので、いつか必ず行ってみたいですね。

ヨングォンとは彼が蔚山現代に移籍した今もガンバの話をよくしていて、“今の状況はどうなんだろう”、“今は順位が少し下だね”みたいな話をしています。

ウィジョは、ガンバで自身のキャリアハイを築き、欧州にステップアップできたので、常にガンバに対する感謝の気持ちは持っていると思います。これは個人的な考えですが、彼が今後年齢を重ねて、機会があればまたJリーグに挑戦するのではないかと思っています。ウィジョは欧州で長く活躍できると思いますが、日本で良い思い出を残したので。

ウィジョやヨングォン、そして自分にとっても、ガンバ大阪というチームは最高の記憶として残っています」

元ガンバ大阪のキム・ヨングォン(左)、ファン・ウィジョ(右)

―かつてFC東京でチームメイトで、今夏にヴィトーリア・ギマランイスへのレンタル移籍が決まった小川諒也選手は、5月末の壮行セレモニーで「僕は選手たちに恵まれた。素晴らしいサイドバックの先輩たちがいた」として、オ・ジェソク選手のことも言及していました。

「諒也には、インスタグラムで個人的にメッセージを送りました。FC東京でチームメイトだったときも、諒也は本当に素晴らしい選手だ、日本代表にも入れるレベルの選手だと思っていました。

同じサイドバックでしたが、単なる競争というより、本当にワンチームという雰囲気がありましたね。諒也が今回、自分の能力を発揮して海外進出することになったのを本当に祝福したいです。難しい挑戦になるとは思いますが、しっかり勝ち抜いてほしいです。

同じくFC東京で一緒にプレーした室屋成も、今はドイツにいますよね。彼らのような欧州に進出したサイドバックの選手と一緒にプレーできたことが、僕にとってはプライドとして残っています」

―では、Jリーグで最後に所属した名古屋グランパス時代のチームメイトとは、今も連絡を取り合っているのでしょうか。

「もちろんです。アベちゃん(阿部浩之)とはたまに連絡を取りますし、相馬勇紀や稲垣祥とも連絡を取り合っています。成瀬竣平がファジアーノ岡山に行ったことも知っています。(相馬に)子どもが生まれたときは“おめでとう”ってメッセージを送りましたよ。名古屋の選手の活躍は今も見守っています」(つづく)

(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)Jリーグ選手名鑑内の名古屋のページを眺めるオ・ジェソク

(取材・文=姜 亨起)

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