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お祭り評論家・山本哲也が語るニッポンの夏祭り!せっかく行くなら踊らにゃ損

  • 2022.7.3
お笑い評論家・山本哲也が語るニッポンの夏祭り!せっかく行くなら踊らにゃ損

BRUTUS

まず、山本さんがお祭りにハマったきっかけを教えてください。

山本哲也

学生時代にオフ会の「青森ねぶたオフ」に参加したんです。興味本位だったんですが、実際に行ってみたらハマってしまいまして。

BRUTUS

大阪出身でねぶたですか?

山本

そうなんですよ。大阪にはだんじりという勇壮なお祭りなどいろいろなお祭りがあるんですが、誘われるほど親しく地域に所属したことがありませんでした。ですから、人生で初めて本格的に参加したお祭りが『青森ねぶた』だったんです。

BRUTUS

ねぶたのどこにハマった?

山本

ねぶたはハネトという踊り手役で見物人も参加できるんですが、体力の限りハネているとトランス状態になって頭が空っぽになるんです。思考にリセットがかかると言えばいいのか、それが最高に気持ちよくて。

BRUTUS

その感覚が忘れがたく、ついにはお祭り評論家に?

山本

そんな感じです。お祭り好きの人はよく「我が町の祭りが一番」と言いますが、私にとっては『青森ねぶた』が特別な存在になったんです。今年は3年ぶりにハネトの一般参加が解禁される予定です。

『青森ねぶた』
写真提供:(公社)青森観光コンベンション協会

青森ねぶた祭(青森県青森市)
8月2日〜7日

奈良時代に中国から渡来した『七夕祭』と、津軽の昔からの風俗、精霊送りなどが一体化して発展したとされる。「見物もいいですが、ハネトとしてハネて(踊って)こそ!今年の一般参加は要事前予約。公式サイトで確認ください」。www.nebuta.jp/

BRUTUS

以来、いくつぐらいのお祭りに行ってきたんですか?

山本

正確に数えているわけじゃありませんが、少なくとも300は超えていると思います。

お祭り評論家のイチオシは、郡上市名物の二大盆踊り。

BRUTUS

では、山本さんのイチオシの復活夏祭りを教えてください。

山本

日本三大盆踊りの一つである『群上(ぐじょう)おどり』です。同時期に開催されるお隣の『白鳥おどり』と併せて、岐阜県郡上市の二大祭りをイチオシとしたいと思います。

BRUTUS

その2つを薦める理由は?

山本

私が考える祭りの醍醐味は、「賑やかなお祭りであること」「誰でも参加できること」「着物や浴衣を着る機会があること」の3点ですが、この2つのお祭りはまさにピッタリはまっていて、参加一択、踊ってなんぼのお祭りです。浴衣に下駄が正装のようになっていて、レンタル店が充実しているので、予約することをオススメします。下駄のカランコロンという音がお囃子(はやし)と相まって踊りをさらに盛り上げてくれます。

BRUTUS

特徴を教えてください。

山本

まず、7月上旬から9月半ばにかけて毎日のように各町内持ち回りで開催される点が挙げられます。これほどのロングラン開催はほかでは見られない特徴だと思います。そして最高潮に達するのが、お盆の時期に開かれる「徹夜おどり」です。郡上が13日から16日の4日間、白鳥は12日が前夜祭で、13日から15日の3日間。コロナ禍前には2つの祭り間を往復するシャトルバスが運行していたのですが、今年は25時までの短縮開催でシャトルバスの運行も見送られたようです。2つのおどりは曲調がかなり違うので、シャトルバスで行き来してそれぞれのおどりを楽しめれば最高なんですが。

BRUTUS

まだ通常開催ではないんですね。

山本

そうです。言ってみれば郡上は、年に30夜以上踊るほど踊りを愛してやまない土地柄なんですよ。400年前に城主が士農工商の融和を図るために「身分の隔てなく無礼講で」と奨(すす)めたことが、オープンな雰囲気を生んだといわれています。

盛り上がりが最高潮に達した、メイン会場の旧庁舎記念館前広場。写真提供:郡上八幡観光協会
郡上八幡は風情豊かな城下町。ぼんぼりや揃いの浴衣が街並みに映える。写真提供:郡上八幡観光協会
郡上八幡は風情豊かな城下町。ぼんぼりや揃いの浴衣が街並みに映える。写真提供:郡上八幡観光協会

郡上おどり(岐阜県郡上市)
7月9日〜9月3日

「郡上の八幡出てゆく時は、雨も降らぬに袖しぼる」で知られる代表曲「かわさき」は戦(いくさ)のあった時代に人と人との別れを惜しんだ歌。「小雨決行に、おどり好きの矜持(きょうじ)が感じられます」。www.gujohachiman.com/kanko/

発祥祭、徹夜前夜祭、徹夜おどりで行われる「郡上宝暦義民太鼓」。写真提供:白鳥観光協会
アップテンポな「白鳥マンボ」でステップを踏んでみたい。写真提供:白鳥観光協会
写真提供:白鳥観光協会

白鳥おどり(岐阜県郡上市)
7月9日〜9月25日

三名山・白山(はくさん)への信仰の拠点〈美濃馬場〉として賑わった白鳥町。白鳥おどりは念仏踊りや風流踊りを源流とし白山信仰との関わりも。「アップテンポの曲が多く、こちらも小雨決行」。shirotori-gujo.com/html/odori.htm

BRUTUS

ほかにオススメは?

山本

有名どころでは3年ぶりの開催になる『高知よさこい祭り』。今年は『2022よさこい鳴子踊り特別演舞』としての縮小開催ですが、全国のよさこい好きにとっては待ちに待った再開だと思います。

BRUTUS

よさこいも阿波踊り同様、全国に広がってますしね。

山本

大学のサークルも多いようです。今の3年生にとっては学生生活唯一の本番になる可能性が高く、熱が入っているはずです。

BRUTUS

なるほど。それは楽しみですね。

写真提供:(公社)高知市観光協会

高知よさこい祭り(高知県高知市)
8月10日・11日

昭和29 (1954)年、不況を吹き飛ばし市民の健康と繁栄を祈願するために高知商工会議所が中心となり発足。「魅力は自由度の高さ。よさこい節の一節を使う、鳴子を持つ。この2つさえ守ればアレンジ自由」。www.cciweb.or.jp/kochi/yosakoiweb/

山本

地域型の小さなお祭りでは、東京都大田区という都会の真ん中で開かれる『厳正寺水止舞』と岡山の山奥のお寺で開催される『両山寺護法祭』の2つは、ニッポンの奇祭と言ってもいいユニークなお祭りなので、ご縁があればぜひ行かれることをオススメします。

写真提供:大田区観光課

厳正寺水止舞(東京都大田区)
7月10日

1321年、厳正寺の住職が雨乞いの祈祷を行う。すると2年後、今度は雨が降りすぎて水害が。その雨を止めるために始まったのが水止舞。「太い藁縄(わらなわ)で巻かれた龍神役が寺まで転がされ、途中水をバシャバシャかけられます」。www.mizudome.com/

写真提供:美咲町

両山寺護法祭(岡山県美咲町)
8月14日

1275年、両山寺の僧・定乗が護法善神からの託宣を得て始まった。「祭り前にお籠もりした人が護法実(ごほうざね)、通称ゴーサマとなり境内を歩き回る。捕まると3年以内に死ぬという言い伝えがあり、逃げながらの見物が楽しい」。ryousanji.net/gohousai.html

BRUTUS

では最後に、お祭りに参加するための心得を教えてください。

山本

当たり前のことですが、衣装や申し込み登録といった準備を怠らないこと。地元の人の言うことをよく聞くこと。参加するにせよ、見物するにせよ、現地では一日氏子という意識を持っていれば、間違いはないと思いますよ。

profile

山本哲也(お祭り評論家)

やまもと・てつや/大阪府生まれ。旅人のように祭りの外側から楽しむプロフェッシュナルとして、祭りの情報・楽しさ・奥深さなどを伝え続けている。踊り覚えが悪いのが悩みとか。www.yamamototetsuya.com/

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