1. トップ
  2. 富山・若鶴酒造内にある〈三郎丸蒸留所〉。ジャパニーズウイスキーの造り手の元を訪ねて

富山・若鶴酒造内にある〈三郎丸蒸留所〉。ジャパニーズウイスキーの造り手の元を訪ねて

  • 2022.6.20
  • 510 views
富山〈三朗丸蒸留所〉天然樽貯蔵庫

「古き良き時代のアイラモルトを目標に取り組んでいます」

蒸留所では2021年ウイスキー造りの最終盤。80ppmのウルトラヘビリーピーテッドで乾かされたアイラモルトを使ったウイスキー造りが行われていた。

「古き良き時代のアイラモルト、例えば74年のアードベッグは、クールなピート感がありながら麦芽の甘味もある。スモーキーなだけでなく、フルーティでジューシー。この時代の世界観をいつか再現できないかと思っているんです」

日本酒の苗加屋で親しまれる富山県・若鶴酒造内に三郎丸蒸留所はある。若鶴酒造5代目で、蒸留所のブレンダー・マネージャーの稲垣貴彦さんは、IT企業に勤めた後、2016年にこの地に戻った。

富山〈三朗丸蒸留所〉ヘビリーピーテッドのスコットランド産モルト
昔から若鶴酒造で使われてきた50ppmのヘビリーピーテッドのスコットランド産モルトを用い、スモーキーなウイスキーを仕込む。
富山〈三朗丸蒸留所〉ポットスチルZEMON
ポットスチルZEMON。右が初留器、左は再留器。容量は2,600Lと、3,800L。「富山は高岡銅器が有名で、三郎丸蒸留所の看板などのデザインも銅器の着色技術を取り入れています。ポットスチルもできれば県内で造りたいと、世界でも有数の梵鐘メーカーである老子製作所に相談したんです」。銅と錫を溶かし、砂の型に流して成型するため、スチルの内側はこれまでのポットスチルと異なり、細かな凹凸ができる。表面積が増えることで、触媒反応が多く起こり、そして錫の合金という性質から酒質はまろやかになるという。熱効率も良く、省エネにもなるという。
蒸留前24時前を発酵させる木樽
蒸留前24時間を木桶で発酵させる。以前よりも乳酸発酵を効果的に行うことができるようになった。その効果で、パイナップルや柑橘のような香味成分が増加。
創業当時そのままの蒸留所外観
創業当時そのままの蒸留所外観。見学予約は、TEL:0763-37-8159へ。

若鶴酒造は戦後の米不足の時代に、新たな酒造りを模索、貴彦さんの曽祖父である小太郎さんが1952年にウイスキー造りを始めた。

貴彦さんは、曽祖父の時代に作られたウイスキー原酒の帳簿を発見。それを飲み、シングルモルトウイスキー造りを思い立つ。

曽祖父時代のウイスキーを「三郎丸1960」という銘柄で限定155本販売。先祖のレガシーと、クラウドファンディングで募集した資金と合わせて、2017年に蒸留所を再興。18年にはマッシュタンを半世紀ぶりに更新。19年には稲垣さんが発明した世界初の鋳造ポットスチルを導入する。

シングルモルト「三朗丸0」、「三朗丸1960」
右が2017年に仕込み、20年11月にリリースされたシングルモルト「三郎丸0」。左が、曽祖父のレガシー「三郎丸1960」。
富山〈三朗丸蒸留所〉稲垣
自身が開発したポットスチルZEMONをバックに立つ稲垣貴彦さん。

「20年には発酵槽の1基を木桶に変更し、来年にはもう1基導入。叶うならば、酵母用設備も改修したいと思っています」

目標に向かって驚くようなスピードで突き進む。

「試行錯誤しながら一歩ずつ。ただ、少し近づいたかなと思うと、深めていくべき部分が見えてくる。まだまだ道半ばです。ゴールは良き時代のアイラモルトとは違うものになるかもしれない、でもおいしいものができると信じてウイスキー造りを続けていきます」

富山〈三朗丸蒸留所〉天然樽貯蔵庫
蒸留所内、天然樽貯蔵庫。他貯蔵庫より温度が高く熟成が速い。毎年募集していた一口オーナーの樽も並ぶ。5年後にボトリングされる。

Information

三郎丸蒸留所

さぶろうまるじょうりゅうじょ
北陸で唯一のウイスキー蒸留所。また、日本で唯一、ヘビーピート麦芽のみでウイスキーを仕込む蒸留所でもある。1952年の製造開始以来、連綿と受け継がれてきた製法で、ウイスキー造りを行っている。

公式サイト:www.wakatsuru.co.jp/saburomaru/

元記事で読む
の記事をもっとみる