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俳優・中村倫也さんインタビュー「『いい役者』の次に言われてうれしいのはセクシーって言葉」

  • 2022.6.18
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レディたちが気になる「彼」の本音に迫る『#いま彼を知りたい』。俳優・中村倫也さんのインタビュー後半をお届けします。

掲載:美人百花2022年7月号「#いま彼を知りたい」

自分は芝居が下手だなっていつも思っています

出典: 美人百花.com

――職人気質な中村倫也さんにはストイックな人特有の〝静の色気〞がある。「美人百花読者からも色気がすごいって声がとても多いです」と言うと、ちょっと照れた(気がする)。終始、冷静で穏やかだった表情が一瞬困惑。隙のあるその顔がまた色っぽくて萌える♡

「みんなだまされているんじゃないですか? キツネに化かされてるみたいな(笑)。でも、そう言ってもらえるのはめちゃくちゃうれしい。僕、『いい役者』の次に言われてうれしいのはセクシーって言葉なので、なんかありがたいですね」

――映画「ハケンアニメ!」でも、磨き抜かれた職人技を発揮している中村さん。今作は新人アニメ監督・斎藤瞳(吉岡里帆)と、中村さん演じる伝説の天才アニメ監督・王子千晴がアニメの覇権を争う物語。心に刺さるシーンやセリフがちりばめられたエモなフックの多い作品だが、なかでも中村さんがもっとも「気持ちよかった」のは瞳と王子が同じ舞台に上がるイベントのシーン。

「あそこは台本上の字面だけだと緊張した瞳が王子に『覇権、取ります! 負けません!』ってタンカを切り、2人がバチバチで終わるってシーンなんです。でも、実際に芝居をしたら必死になっている瞳に対してすごく優しい気持ちになった。王子がそういう感情になるって僕自身イメージしていなかったから、それがうれしくてなんか気持ちよかったんですよね。よくこの仕事は正解がないって言われるけど、こうなったらいけないって不正解はあって。それ以外の選択肢の中でいちばんいいものをその都度探すんだけど、自然と湧いてきたあのときの王子の感情は、不正解じゃない。むしろ芝居しながら役が進化したシーンです。自分が演じておいてなんだけど、瞳と王子があの瞬間、リアルタイムであそこに〝いた〞なって思いました」

――こういったシーンを生むためには緻密な思考と瞬発的に反応する感覚が必要。そのバランス、さじ加減は説明不可の領域だという。

「だって、例えば生きていて呼吸の位置とか深さとか重心を考えたり、まばたきするとき、目の玉をどれぐらい動かすかとか意識することってないじゃないですか。でも、役者はそういう一挙手一投足どころじゃないところが表現の可能性になる仕事。そこを引き出すために、センサーをどれくらい働かして、どこまでを把握し、取捨選択していくか。その嗅覚みたいなものは役者それぞれの個性でしかないんだけど、僕は細かく意識化している方だと思います。ただ、芝居はひとりでやるものではないから、本番ではそれ(個性)をひっくるめて全部投げ捨てるんです。だから、思いどおりにいかないこともいっぱいあるし、思いどおりにやることがベストでもない。その瞬間、その空間が何かで満ちていればよかったりもするんですよね」

出典: 美人百花.com

――深い。深すぎる。しかも、そういった技は「できるから良い、できないから悪いとくくれることでもない」というから〝職人〞の世界は計り知れない。

「そう、面白いでしょ?(笑) でも、年と共にいろんなチャンネルを解放することが楽にはなってきています。若いときは内側から勝手に生まれてくる圧と外側からくる圧に押されて、芝居どうこう以前のところで自分を見失うことがあったんですよ。でもそういう〝圧〞の乗りこなし方みたいなものを経験と共に培ってきているかなと。ま、そう言いつつ自分は芝居が下手だなっていつも思ってます。演じる側の手触りと、それを観る人の印象や結果はまったく別モノだから。そこが『できる、できないではくくれない』ってことでもあるんだけど。……って話をされても何を言っているか、わかんないですよね(笑)。こんなことばっかり考えているから僕、仕事をしていても体より脳が疲れるんです」

――いえ、面白くて貴重なお話。そして説明の難しいことを伝えようと言葉を選び、さらに、こちらは芝居のド素人なのに全然上から目線じゃなく(むしろ目線を下げて)丁寧に話してくれたことにちょっと感動。その誠実さはやっぱり変わらない。ここ数年はエッセイの執筆や歌、トークライブなど芝居以外のマルチな才能も発揮しているが、各所で求められるのは人柄も大きいのだろう。

「いや、やりたいことをやっているだけです。仕事がなかったとき、この世界を目指す人が10万人いるとして、その中の1人になるには10万の分の1の能力が必要だけど、自分にはそれがないなと思って。だったら10人に1人の能力をいくつも持って分母を増やそうと。そうすればいつか10万分の1になるって考えて、とりあえず何でもかんでもやっておくようにしたんです」

――「10人に1人の能力」の中には料理も入っているが、それも納得。中村さんは中村倫也という素材をどう生かすか考え抜き、何年もかけて美味に仕上げてきた人。その腕前はまさに名職人、匠の技だ。

Profile

中村倫也(なかむらともや)

1986年12月24日生まれ。2005年俳優デビュー。数々のドラマ、映画、舞台に出演する他、エッセイ執筆など幅広く活躍。今年秋には主演舞台のMUSICAL「ルードヴィヒ〜Beethoven The Piano〜」が上演予定。

Information

『ハケンアニメ』

直木賞作家・辻村深月の小説を映画化。アニメ制作の舞台裏を描いたストーリーで、新人監督・斎藤瞳とカリスマ天才監督・王子千晴がアニメの頂点=覇権を目指して奮闘。過酷な創作現場の苦しみ、歓びが描かれていく。

原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)

監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑 出演:吉岡里帆、中村倫也/柄本佑/尾野真千子 他 配給:東映

公開中

撮影/中村和孝 スタイリング/小林新 ヘアメイク/Emiy 取材・文/若松正子 再構成/美人百花.com編集部

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