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俳優・中村倫也さんインタビュー「僕は僕のやってきたことを超えるのが仕事」

  • 2022.6.17
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レディたちが気になる「彼」の本音に迫る『#いま彼を知りたい』。今回は、2年ぶりに美人百花に登場してくれた、俳優・中村倫也さんのインタビューをお届け。淡々としながらも熱い語り口など、ひと筋縄ではいかない中村さんは、相変わらず〝沼〟(笑)。今回はさらに深みへ踏み込もうとしたけれど、その魅力は予想を超えた、まさに底なし沼でした。

掲載:美人百花2022年7月号「#いま彼を知りたい」

メンタルが安定した代わりに若い頃の不確かな感覚は失った

出典: 美人百花.com

「『腐っていた時期がありました』って言っても、今は誰も信じてくれないんです。そういうイメージがないみたいで『中村さんはいつも笑顔でしょ』って。いやいや、本当にひどい時期があったんですよ(笑)」

――10年ぐらい前、中村さんをインタビューしたとき「僕のことを知ってる人なんているんですかね」と、ポツリとこぼした言葉をよく覚えている。おそらく本人の言う「ひどい時期」だったのだろうけど、まったく「ひどい」と思わなかった。むしろ葛藤を隠さない率直さ、初対面の相手にもきちんと向き合う配慮と誠実な人柄を感じた。その印象は今も変わらない。

「でも、メンタルは昔より安定しています。元々あまり感情の起伏はないけど、より地に足がついた気がする。その代わり、10代や20代の頃の無意味にイライラしたりヘコんだりする不確かな感覚はもう失ってしまった。役者なのでどんな感覚も全部持っていたいけど、やっぱそれって無理なんです。年を重ねた、人としての変化だから。この間、スカパラ(=東京スカパラダイスオーケストラ)の谷中(敦)さんとお話しする機会があったんですが、谷中さんも『若い頃作っていたような音楽はもう生まれない。無理して作ろうとしても恥ずかしいからしない』っておっしゃってて。僕も若い時に持っていたわけのわからないイラつきより、今はやさしさの方が感情として出しやすい。あの、地から足が浮いているような感覚はもうなくなってしまいましたね」

――10代20代の頃に抱いていたコンプレックスも、徐々に形を変え、自らの個性として捉えられるようになった。

「20歳そこそこの頃、蜷川幸雄さんの舞台に出たときに『お前は育ちのいい感じがつまんない。コンビニの前でしゃがんでたむろしてるような、なんかねーのか』って言われたんだけど、そんな時期、オレ、ないしって(笑)。でも確かに、役者って不安定なやつが安定するか、安定したやつが崩壊していくか、どっちかが多くて、その方が面白いんですよね。それが自分にはないことがコンプレックスだったけど、だんだん『しょうがねーじゃん』って思うようになってきて。そこに嘘をついて焦っても嘘だし、不安定な役や役者だけが求められているわけじゃない、自分みたいなヤツに来る役もいっぱいあるんじゃないかと。ザ・役者ってイメージとはちょっと違うかもしれないけど、それはそれで面白いじゃんって思えるようになりました」

出典: 美人百花.com

――「自分」とほどよい距離感を取るのがとてもうまい人だと思う。それはコントロールが難しい自意識を含め、自分自身ととことん格闘してきたからこそ得ることのできる、中道のメンタル。「正解を外に求めない」スタンスも培われた。

「僕はエゴサとかはしないけど、褒められても否定されても話半分で聞いて、両極端の意見は放っておくようにしています。というか、そんなんでいちいちヨレていたらやっていけない。正解を外に求めると自分で自分の首を絞めちゃうし、僕は僕のやってきたことを超えるのが仕事ですからね。誰かに『あの芝居は良かった』って言われたら『じゃあ、次は同じ表現を繰り返さないようにしよう』って考えないといけない。そうやって自分の中でブラッシュアップし続けることはすごく楽しいし、それが現場で面白くハマるともう、たまらないんです。そう考えると結局、僕にとっていい芝居、いい作品作りは誰かのためではなく自分のため。自分が納得できるかどうかで、つまるところやっているのは職人的なこと。自分が作った壺とひたすら対話するみたいな、そんな感じです」

ーー後編へ続く

Profile

中村倫也(なかむらともや)

1986年12月24日生まれ。2005年俳優デビュー。数々のドラマ、映画、舞台に出演する他、エッセイ執筆など幅広く活躍。今年秋には主演舞台のMUSICAL「ルードヴィヒ〜Beethoven The Piano〜」が上演予定。

Information

『ハケンアニメ』

直木賞作家・辻村深月の小説を映画化。アニメ制作の舞台裏を描いたストーリーで、新人監督・斎藤瞳とカリスマ天才監督・王子千晴がアニメの頂点=覇権を目指して奮闘。過酷な創作現場の苦しみ、歓びが描かれていく。

原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)

監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑 出演:吉岡里帆、中村倫也/柄本佑/尾野真千子 他 配給:東映

公開中

撮影/中村和孝 スタイリング/小林新 ヘアメイク/Emiy 取材・文/若松正子 再構成/美人百花.com編集部

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