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〈ケイタマルヤマ〉が、人生を豊かに彩る「美しい仕事」を集めた展覧会を開催

  • 2022.6.16

2022年6月16日(木)から19日(日)の4日間、南青山にある「丸山邸 MAISON de MARUYAMA」にて『CASA KEITA –美しい仕事展–』が開催される。デザイナー・丸山敬太さんが、いま、気になる作家たちに依頼し、陶芸・木工・漆・硝子などからつくられた生命力あふれる器などが、伝統工芸品とともに展示される。作家たちの美しい仕事に敬意を表したくなる、すばらしい空間だ。

なにを「美しい」と感じるかは、人それぞれ。しかし、美的感覚に関連する神経活動を研究する神経美学分野では、人がどんなときに美しさを感じるのかについて、科学的に解明されつつある。

同分野によると、人が「美しい」と感じるときに活動が活発化しているのは、驚きと似た、心の震えに関係する脳領域。芸術作品においては、それがどのようにして創られたのかなど、背景にあるストーリーを知ることによって、心が揺さぶられるケースが多いという。

〈ケイタマルヤマ〉で開かれる『CASA KEITA –美しい仕事展–』の会場に集まるのは、ストーリーに満ちた作品たちだ。

「美しいということは、その背景に気の遠くなるような、想いや、鍛錬や、時間がある。いろんなものをけずったり、研ぎ澄ましたり、自身や伝統みたいなものと、向き合いながら、物語を紡いでいる。土や、植物や、木や、鉱物や、絹……。自然の恵みを、捏ねたり、吹いたり、削り出したり、縫い取ったり、編んだり、炎にくべては冷やしたり……。美しくて強くて、そこに在るだけで、人生が豊かになる。そんな美しい仕事たちを、特別にそろえました」とディレクションを行ったデザイナーの丸山敬太さんは話す。

会場には、陶芸や木工、漆、硝子など、10組以上の作家による、生命力あふれる作品がずらり。

個人的に注目したいのは、環流しというオリジナルの釉薬づかいによって華やかな色彩を放つ陶器を生み出す岩崎龍二さんの器や、失われた技法・糸切成形の資料を掘り起こし、技術の復活をはかる浜野まゆみさんの器。そして、蒔絵や螺鈿などの伝統技法をベースに愛らしさを感じさせる絵付を行う漆作家・やのさちこさんの匙や器など。

釉薬で描いた環の連なりが溶けて花びらのような文様を作す「環流し」を得意とする岩崎龍二さんの作品。釉薬の濃淡、表面に出る結晶化した粒子のきらめきなど独特な魅力は、半磁器土に白い釉薬をかけ、その上から酸化銅や酸化クロムをスプレーで吹き付ける手法から生み出される。

浜野まゆみさんが探究を続ける「糸切成形」は、17世紀半ばから後半にかけて伊万里焼において流行った技法。彼女が生み出す、しなやかさと美しさの中に凛とした表情を持つ白磁は、多くのファンを惹きつけている。

滋賀県湖⻄の山の中で漆、蒔絵作品を制作するやのさちこさん。「工芸品とは異なり、器は料理が主役。その難しさを実感しながら、日々制作をしています」。

こんな器があったら、家ごはんがどんなに素敵になるだろう……!夢を膨らませてくれる作品だらけの展覧会。「我ながら素晴らしいラインナップになったと思います。ぜひご覧ください」と、丸山さんが胸を張るのもうなずける。

漆など多様な木の仕事を一人でこなす佃眞吾さんの作品。栗の木を用いての刳物(くりもの)のほか、指物(さしもの)による家具・箱類も手がける。なかでも⺠具のひとつである「我谷盆(わがたぼん)」を写した作品は、木の持ち味を生かした味わい深い美を備え、好評を博す。

すべてオリジナルデザインにて、手造りされる「太武朗工房」の江戸切子。同工房では「江戸切子」、「江戸硝子」、「彫刻硝子」の3シリーズが展開され、江戸とヨーロッパが持つ技術や感性を融合した世界が表現される。

韓国の現代陶芸家・李康孝氏のもとで、約1年、オンギ(キムチ壺)の修行をした照井壮さん。現在は佐賀県を拠点とし、有田焼の磁土や釉薬をベースに独自の現代的な感性を融合させる。

こちらも照井さんの作品。

すず竹細工の産地として有名な岩手県一戸・鳥越地区で作家活動を行う橋本晶子さん。全国のギャラリーやセレクトショップの展示会への出品など精力的に活動中。

三川内焼「陶房心和庵」を基盤とし、現在は有田で作陶中の中里博彦・博恒兄弟。成形を弟の博恒さん、絵付けを兄の博彦さんが担当する、完全分業スタイルで製作を行う。極限まで薄くひいたろくろ仕事に、繊細で美しい絵付けなど、それぞれが培った高度な技術を持ち寄って生み出される、双子ならではの息の合った作品だ。

有永浩太さんは、金沢の伝統工芸継承施設で若手工芸家の指導を行いながら、フリーのガラス作家として全国各地の展覧会で作品を発表する。現在は能登島に拠点を置き、活動している。

京都・伏見にて、器づくりに専念する小林裕之・希夫妻。どこか懐かしいような佇まいのあるものを目指したものづくりを行う。

田中信彦さんは、埼玉県入間市にてさまざまな表情の器を作陶する。近年は淡く、繊細な色があふれる作風が特徴的。『色のうつわ』と名付けられたそれらは、⻘色、紫色、赤色、緑色、⻩色といった多種多様な色彩と、刷毛や飛び鉋を用いたテクスチャーとの出合いによって優しい雰囲気を醸す。

ちなみに脳の前頭前野というのは霊長類のなかでヒトしか持ち得ないものなのだが、先の神経美学によれば、美を感知するのにはこの前頭前野が必要なのだという。つまり美しさを感じられるのはヒト特有。人間で、よかった。

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