1. トップ
  2. 恋愛
  3. 夫婦の年金が「376万円→533万円に」5年の繰り下げ受給を実現するため現役時代に必須の"ある準備"

夫婦の年金が「376万円→533万円に」5年の繰り下げ受給を実現するため現役時代に必須の"ある準備"

  • 2022.6.15

2022年から、年金の繰り下げ受給が、最長70歳から75歳までに延長された。選択肢が増えたいま、年金は、いつ、どう受け取ればいいのか。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんが3つのパターンを試算する――。

手に年金手帳を持ち、見つめる女性
※写真はイメージです
5年繰り下げで42%、10年で84%増える

年金を増やす方法の1つに、受け取り時期を遅らせる「繰り下げ受給」があります。

年金の支給開始は原則65歳ですが、繰り下げ受給をすると、年金額が1カ月当たり0.7%分多くなります。従来は、繰り下げられるのは70歳まででしたが、2022年4月からは75歳まで繰り下げられるようになりました。

年金のアップ率は…

1カ月繰り下げで0.7%
1年で8.4%
5年で42%
10年で84%

……となります。

共働き夫婦の繰り下げプランを試算

同じ歳の共働き夫婦を例に、繰り下げのプランや効果を試算しました。


夫 22歳から65歳まで、43年間厚生年金に加入。平均年収43万円
妻 22歳から65歳まで、43年間厚生年金に加入。平均年収35万円

【パターン1】 2人分を65歳から受け取る

まずは繰り下げを選択せず、65歳から受け取る場合です。

繰り下げずに普通に受け取る

65歳から普通に年金を受け取った場合の年金額は、夫が199万4000円、妻が176万8000円で、2人で約376万円です。

65歳以上の夫婦世帯では毎月の支出が平均で27万円程度ですから、年金だけでも毎月の支出はカバーできそうです。共働きの場合、年金もある程度の額になる、ということが分かります。

【パターン2】 妻のみ5年繰り下げ受給する

とはいえ、いずれはどちらかが先に亡くなり、もう一方は「おひとりさま」になります。年金が1人分になっても、生活費が半分になるわけではないので、おひとりさまになると、2人で年金を受け取っていた期間より、余裕がなくなることも考えられます。

そこで、長生きする可能性がある妻の年金を繰り下げによって増やしておくのもいい方法です。

妻のみ老齢基礎年金、老齢厚生年金とも5年繰り下げ

70歳からの年金は夫婦の合計で450万円以上となり、平均的な水準からみれば、生活費としてもかなり余裕があるといえます。また妻の年金は約251万円で、夫死亡後は、遺族年金が11万円程度加わります。

ただし、65~69歳までの5年間の収入は夫の年金の約199万円ですから、この間は夫婦が年金だけで生活するのは難しいといえます。

【パターン3】 70歳まで働くプラン

パターン2では、65~69歳までの生活費が不足しそうです。そこで、夫は厚生年金のみ65歳から受け取り(基礎年金は70歳まで繰り下げ)、65~69歳は働いて収入を得る、という方法はどうでしょうか。

65歳からの5年間は、夫が月収20万円で働くことにより、年金約123万円と合わせて年収は約363万円になります。夫は、厚生年金を受け取りながら働くと同時に、基礎年金を繰り下げによって増やすことができます。

夫が70歳まで厚生年金に加入(月収20万円)、基礎年金のみ5年繰り下げ 妻は65歳でリタイア、基礎、厚生とも5年繰り下げ

参考までに、夫婦とも65歳でリタイアし、夫婦とも、すべての年金を70歳まで繰り下げると、夫の年金は282万7000円になり、夫婦で533万7000円になります。

とはいえ、70歳まですべて繰り下げるには、かなりの老後資金を準備するか、あるいは65歳以降も働く必要があるでしょう。最長75歳までの振り下げが可能になったものの、現実にはかなり難しいといえそうです。

電卓を使って計算する女性の手元
※写真はイメージです
老後資金のパズルにどのピースをはめるか

そんなに増えるなら繰り下げしたい! と思う人は多いのですが、年金は老後の生活を支えるベースになるもの。実際には、誰でも簡単に繰り下げられるわけではありません。

現時点では、65歳までは再雇用などで働き、給料で生活し、65歳でリタイアして年金生活に入る、というのが一般的です。繰り下げをするのであれば、繰り下げる間の生活費を、年金以外で確保する必要があります。

具体的な方法としてまず挙げられるのは、前述のでも示したように、「働く」ことです。65歳以降も働き、その収入で生活できれば、その間も年金を繰り下げることができます。

また「退職金」のほか、「iDeCo」や「貯蓄」など、自身で準備した老後資金で生活することにより、年金を繰り下げる方法もあります。

ちなみに、iDeCoも2022年4月以降、受取開始時期を75歳まで延ばせるようになりました(従来は60~70歳の間に受取開始)。受取期間を先延ばしすれば、より長い期間、非課税で運用できます(ただし手数料がかかる)。

65歳以降の生活をパズルにたとえると、給料、退職金、iDeCo、公的年金といったピースを用意し、それをどうはめ込むかを、自分でデザインする必要があるわけです。

より有利に、自由に、デザインするためには、現役中にピースを増やしておくことが大切です。給料が得られるようにスキルを高めておく、iDeCoで年金づくりをする、貯蓄のピースを大きくしておく、といったことが重要なのです。

1カ月でも繰り下げ可能

「5年も繰り下げられない……」という声も聞きますが、繰り下げ受給は5年単位と決まっているわけではなく、1カ月単位でも可能です。意外と知られていませんが、公的年金は受給資格ができたときに、受け取りの申請をしてはじめて受け取れることになっており、受け取りの申請をしなければ、年金は支給されません。つまり、何年繰り下げるかを前もって決める必要はなく、「受け取りたくなったときに受給の申請をすればいい」のです。

また繰り下げているものの、健康に不安が生じて長生きする自信がなくなった際などは、それまでの分を一括で受け取ることもできます。額は増えませんが、受け取れるはずだった分を受け取り損ねた、ということは避けられます(ただし、請求していなかった期間分は雑所得となり、税額を計算し直すことになります)。

5年繰り下げの場合、82歳まで12年間受け取ると「得」になる

何歳まで受け取れば得か……と考える人も少なくありません。たとえば5年繰り下げれば年金額は42%増えますが、繰り下げた期間の年金はゼロですから、増額した分が、ゼロの期間分を上回らないと、得したことにはなりません。5年間繰り下げた場合は、おおよそ12年が損益分岐点になり、受取期間がそれより長くなればなるほど、繰り下げたほうが得になります。とはいえ、年金は長生きに備える保険であり、損得という尺度で測るのが適しているとは思いません。長生きしても大丈夫なように、できる範囲で繰り下げ、額を増やすことを考えるといいでしょう。

年金額が多くなると税金や社会保険料の負担が重くなるケースもあります。年金の増え方の方が大きいですが、年金額によっては、医療費や公的介護保険サービス利用時の自己負担割合が高くなる可能性があることも念頭においてください。

井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください 増補改訂版』(日経BP社)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。

元記事で読む
の記事をもっとみる