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「持ち前の明るさで…」一発でつまらない認定される祝辞に頻出する"ありきたりフレーズ"

  • 2022.6.14
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6月といえばジューンブライド。結婚式の「いい祝辞」と「ありきたりな祝辞」はどこで差がつくのでしょうか。話し方コンサルタントの阿隅和美さんは「つまらないスピーチの典型は、『持ち前の明るさ』『皆から愛される存在』『先輩からの信頼も厚く』等という抽象的な言葉だけが並んでいるものです。陳腐で新鮮味がないという感想を持たれてはあなたの格を下げてしまいます」といいます――。

式場のマイク
※写真はイメージです
祝辞の良し悪しが自身の評判につながることも

6月といえばジューンブライド、結婚式のシーズンです。イベントや飲食に関する制限も解除され結婚パーティーも戻ってきたようで、職場の部下や同僚に祝辞を頼まれることも増えてくるのではないでしょうか。

特に、管理職、経営層ともなると会社を代表して主賓挨拶をする機会もでてきます。そもそも祝辞とは会の主催者、結婚式の場合は新郎新婦やご両家にお祝いを伝えるとともに、主役である新郎新婦を褒めたたえお祝いムードを盛り上げるものです。

学生時代の友人代表としてのスピーチなら多少滑ってもご愛嬌あいきょうで済みますが、職場や仕事関係の方が列席しているセレモニーやパーティーでは立場上そうもいかず、余計緊張するという声も聞きます。さらに祝辞の良し悪しが、あなたや会社の評判に影響を及ぼすことだってあるのです。そこで、今回は職場関係の結婚式等であなたを格上げしてくれる「心に残る祝辞のコツ」について見ていきましょう。

社内評価や社員エンゲージメントにも影響

まずは、結婚式の祝辞がもたらした職場での効果について2つの事例をご紹介します。

【事例1】部下に頼まれ結婚式で主賓として祝辞を述べた部長職のAさん(女性)。後日、列席していた社内の人たちからAさんの祝辞が胸を打つものだったとうわさが広がり、列席していない人からも、「いい祝辞だったそうですね」と声をかけられたそうです。さらにそのうわさを聞きつけたお得意様向けセミナーの担当者から、登壇を頼まれるなど結婚式の祝辞の影響に驚いたということです。

【事例2】スタートアップ企業の社長Hさん(男性)。社員の結婚パーティーで主賓として祝辞を述べたところ、新郎新婦が喜んだのはもちろん、なんと列席していた社員たちから「社長、感動しました。この会社に入って、ほんと良かったと改めて思いました」と興奮気味に言われたそうです。その後、社員とのエンゲージメントがより強くなったと感じているということです。

実は、この2人の祝辞にはある共通点があります。1つ目の共通点はしっかり準備をしたこと。お2人ともビジネスプレゼンの経験は豊富ですが、主賓としての祝辞は別もの。やはり緊張しますし、せっかくのお祝い事なので、準備の時間をとり推敲すいこうを重ねてスピーチを仕上げたのです。

一方で、失敗しがちなのが自信過剰なタイプ。飲み会の席で自分は座持ちが良いほうなので大丈夫と高をくくっている人ほど、ふたを開けてみると冗長で内容が薄いスピーチで白けさせてしまうのです。こうした残念な場面をこれまで数多く目撃してきました。このように、スピーチに自信がないという謙虚な方ほど、結果的には心に響くメッセージを届けるのです。

「仕事ができないと認定される一言」

2つ目の共通点が「ありきたりのフレーズに頼らず、自分の言葉でお祝いを伝えた」ことです。スピーチ文例集に掲載されている文章をそのまま引用して、「どこかで聞いた言葉だ」という印象を与えては全く心に残りません。それよりも想いを込めた自分の言葉のほうが新鮮で印象に残りますし、何よりもあなたの人間的な魅力を垣間見ることができ、それが聞く人の心を動かすのです。

つまらないスピーチの典型は、例えば「持ち前の明るさ」「皆から愛される存在」「先輩からの信頼も厚く」等という抽象的な言葉だけが並んでいるものです。陳腐で新鮮味がないという感想を持たれてはあなたの格を下げてしまいます。こうした表現は、ぜひ具体的なエピソードとセットで使いましょう。

マイクの前で手で顔を覆う女性
※写真はイメージです
これだけ押さえればうまくいく祝辞のポイント

そうはいっても、なかなかうまいフレーズが思い浮かばないという方もいると思います。そこで、これだけ押さえておけばうまくいく結婚式の祝辞のポイントをご紹介します。

それは、基本構成をベースに部分的にアレンジしていく方法です。基本構成は、①祝福の言葉、②自己紹介、③エピソード、④パートナーについて一言添える、⑤はなむけの言葉、⑥結びです。このうち、主に③エピソードと⑤はなむけの言葉をアレンジするといいでしょう。

基本構成とフレーズ例
①祝福の言葉

例)○○さん、○○さん(新郎新婦)、並びにご両家のご親族の皆様には心よりお祝いを申し上げます。

②自己紹介

フルネームで自己紹介を行い、新郎/新婦との関係を説明します。社外の方がいる場合には、15秒程度、簡単な事業の説明を入れると親切です。

例)ただいまご紹介にあずかりました、新郎/新婦の勤務先の上司にあたります◯◯と申します。僭越ではございますが、ご指名いただきましたので、お祝いの言葉を述べさせていただきます。

③エピソード

新郎/新婦の人柄や長所が伝わる仕事ぶりなどを盛り込んだ具体的なエピソードを紹介します。新郎/新婦をほめて、2人なら結婚生活がうまくいくという流れにします。エピソードは詳しい説明が必要なものや、専門的な話題は避けて一般的なものにしましょう。

例)新郎/新婦とは、彼/彼女が新入社員として5年前に私の部署に配属された時からの付き合いで……(ほめる)

・印象に残るエピソードアレンジのコツ

スピーチはストーリーに起伏があると場が盛り上がり印象にも残ります。

例えば、上司の場合、新郎/新婦の成長の過程を切り取り、軽い失敗談からはじまり成長を遂げて今では仕事を任せているという流れにします。ただ、失敗談は、ご本人に了解を得ておきましょう。

また単に、「明るい人」と言うよりも、前に反対表現を置いて、「一見、物静かそうですが、とても明るく場を盛り上げる人です」とギャップをつくることもできます。

・上司の祝辞 エピソード例

例1)「新郎○○君は、一見おっとりしていますが、とても頭の回転が速い人です」

例2)「○○さんは、何事も丁寧で、そのため新入社員当時は、資料作成を任せると締め切りに間に合わず、周囲が手伝うようなこともありました。しかし、人一倍の努力家で、今ではPC検定の資格を取得され、エクセルの達人として誰よりも早く、そして見やすい資料を作成してくれています。いつも、うちの部署を支えてくれてありがとう」

例3)「馬耳東風ということわざ、ご存じかと思います。新入社員の頃の○○君は、まさに馬耳東風、人の話を聞き流しているようなところがありました(笑)

ところがそんな○○君が、入社3年目に突然仕事に対する姿勢が変わりました。きっかけは、チームリーダーになったことです。この頃から上司やメンバーの話に真摯しんしに耳を傾け、どんな難解な仕事からも逃げずにやり遂げるようになったのです。そうした周囲の意見を大切にする姿勢が評価され、今では大きなプロジェクトのリーダーを任せられるようになり、会社にとっても私にとっても無くてならない存在になっています。

きっと○○君なら、新婦の○○さんの話もしっかり受け止め、必ず幸せな家庭を築いてくれると信じています」

・同僚の祝辞、エピソード例

同僚の場合は、共に経験した仕事に関するエピソードを披露し、その中から新郎/新婦の長所につながる部分を紹介するといいでしょう。

例)「○○さんとは、同期として常に切磋琢磨せっさたくましてきました。実は、私は希望通りの部署に配属されずかなり落ち込んでいた時期がありました。そんな時、○○さんは、深夜まで愚痴に付き合ってくれました。おかげで気持ちの整理がついて配属先に飛び込むことができました。こんなふうに○○さんは、人の背中をさりげなく押してくれるところがあり、優しい上に頼りがいがあります」

・普段あまり接点がない場合 エピソード例

普段あまり接点がない人から祝辞を頼まれた場合には、事前に関係者等から情報収集をしておきましょう。そして「○○さんが○○と言っていた」と間接的にほめると喜ばれます。

例)「実は、山下課長から聞いた話なのですが、○○さんは、展示会の期間中、自主的に毎朝誰よりも早く会場入りして準備をしていたそうなんです。誰も見ていないところでもチームのために行動できる人だと感心しました」

④パートナーについて一言添える

相手側(新郎側のゲストであれば新婦、新婦側のゲストであれば新郎)を「素晴らしいパートナー」とほめる言葉を付け加えるとより良いでしょう。

例)「新郎は、学生時代サッカー部のキャプテンを務めたと伺っています。本日も当時のお仲間がたくさんご列席されていて慕われている様子が伝わってきます。素晴らしいパートナーに巡り合えましたね」

はなむけの言葉はオリジナルのエピソードを添えて
⑤はなむけの言葉

はなむけの言葉とは、新しい一歩を踏み出した2人を励まし、また、勇気づける言葉です。主賓の祝辞は、このはなむけの言葉の印象でスピーチの印象が決まるといってもいいでしょう。名言やことわざなどから選ぶのが一般的ですが、多くの結婚式で使い古された言葉ではなく、オリジナルのエピソードを添えて印象的な言葉を贈るのがおすすめです。

例1)「2人の新しい門出を祝して私からアドバイスを贈りたいと思います」(アドバイス等を伝える)

参考までに、前述したAさんとHさんのメッセージの要旨をご紹介します。

例2)部長職Aさんの場合

ご自身の結婚を振り返り、「専業主婦になるのが当然と思い込んでいた自分に、パートナーが働く楽しさを教えてくれて今の自分がある。パートナーは一番の理解者であり応援者。新郎新婦には、一人では実現できないようなことも一緒なら実現できる、お互いを高める存在でいてほしい」という趣旨のメッセージを贈りました。

例3)経営者のHさんの場合

社員の成長と会社の成長と重ね合わせながら感謝と想いを語りました。

「転職が当たり前のIT業界で、新卒から在籍し信頼できる幹部の一人に成長したことへの感謝。自分は社員が結婚、出産などのライフイベントを家族と幸せに迎えるに十分な給料を払えるように会社を大きくしたいというのが原動力だった。だから今こうして社員と共に新郎の結婚を祝えることが最高の喜び。お2人の幸せを願う。そして家族にも誇れる会社に一緒にしていこう」

⑥結びの言葉

結びとして改めて新郎新婦と両家ご親族にお祝いの言葉(ご両家の繁栄を祈る言葉)とお礼の言葉を述べます。

例)「大切に育てられたご家族への感謝の気持ちを胸に、これからは、共に支えあい明るい家庭を築いていってほしいと願っています。末永くお幸せに。これをもちまして私の挨拶とさせていただきます。本日は本当におめでとうございます」

「一家の大黒柱に」は厳禁

「知らないと大恥をかく意外な話」が2つあります。ここは必ず押さえましょう。

・忌み言葉、重ね言葉は避ける

婚礼の席では、夫婦の別離を連想させる言葉、再婚を連想させる同じことを繰り返す重ね言葉、別れる、分かれる、切れるといった縁起の悪い言葉や不幸を連想させる言葉は「忌み言葉(いみことば)」と呼ばれ、使用しないのがマナーです。常識として分かっているつもりでも、思わず使ってしまったという失態がないよう、念のためスピーチを文章化して確認をしましょう。


主な忌み言葉・重ね言葉
・別れを連想させる言葉(例:別れる、切る、切れる、離れる、他)
・不幸・不吉な言葉(例:敗れる、破れる、悲しむ、嫌う、他)
・繰り返す重ね言葉(例:繰り返す・繰り返し・再び、他)
表現の例
× 配属直後は、営業が嫌いだったようです
○ 配属直後は、営業が好きではなかったようです
× 繰り返しとなりますが
○ 先ほど申し上げましたが
× 単身赴任で離れていても
○ 単身赴任という環境であっても

また、暗い話、年齢や身体的特徴について、政治や宗教系の話。品のない話や過去の恋愛話などの暴露話は避けましょう。

・ジェンダーバイアスがかかった表現に気を付ける

最近の傾向として、ジェンダーバイアスがかかった表現には気を付けたいところです。昔ながらの表現には、「奥さんが家庭を守る」「新郎は一家の大黒柱として頑張る」など、男女の社会や家庭での役割について固定的な観念が刷り込まれているものがあります。価値観は人それぞれですが、広く快く受け止めてもらえるように、「お互い支え合って」「お2人手を携えて」等の表現でメッセージを贈りましょう。

緊張を和らげるスピーチの準備と話し方

人前に立ち、皆の注目を一斉に浴びたとたん、暗記したスピーチが飛んで頭が真っ白になってしまう――そんな恐怖体験は避けたいところです。

そのためには、少しでも不安を解消しておくことが一番です。そこで、事前準備と当日の話し方のポイントをご紹介します。結婚式の祝辞だけではなく、ご挨拶を頼まれた時など人前で話す際にも活用できます。

長いスピーチは単なる自己満足。準備をする際には時間を意識することが大切です。スピーチの時間は、一般的な祝辞や挨拶は3分。主賓の場合は5分が目安です。

そして、不安な時にはスピーチ原稿を何回も繰り返し声に出して練習をして、自分のモノにしてしまうと自信がつきます。この時丸暗記をするのではなくスピーチの流れを覚えます。丸暗記だと、頭が真っ白になって言葉が浮かばないとアウトですが、流れさえ覚えていれば多少違う表現になってもスピーチを立て直せます。

それでも不安な時には、手元にメモを持っていても大丈夫です。その場合ノートの切れ端のメモなどでなく、きれいな便箋など見栄えが良い紙を用意しましょう。プリントアウトした紙を台紙に張ってもいいでしょう。ただし原稿の読み上げにならないように、言葉に詰まった時のお守りとして持っておきましょう。

緊張するなら新郎新婦を向いて話してみる

次に、スピーチ当日です。本来は、列席者に視線を向けながら話すと会場を巻き込めるのですが、もしどうしても、緊張するのであれば新郎新婦を向いて話してもいいでしょう。新郎新婦に語り掛けるように話せば、自然な会話調になります。

また、緊張するとつい早口になり言葉を噛みやすく余計に焦ってしまいます。 予防策として、第一声の前に、鼻から大きく呼吸をして一拍おき、それからゆっくりと丁寧に話し始めましょう。 堂々とした印象の話し方は、腹に力を入れて声を出します。また、顏や体の一部をさわりながら、体重移動でフラフラしているとだらしない印象になります。鏡を見ながら練習をすると表情、態度を確認できるので、おすすめです。

結婚式やお祝いの席のスピーチは快く引き受けてもらうと、頼んだ相手はとても嬉しいものです。お願いされるのは信頼の証です。スピーチのコツをつかんで、心に残るメッセージをプレゼントしましょう。

阿隅 和美(あすみ・かずみ)
WACHIKAコミュニケーションズ代表
青山学院大学経営学部卒業。中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして、株式市況、世界のトップニュースを10年担当。20年にわたり、スポーツ、経済、情報番組に関わる。アナウンサー名は瓶子和美。現在は、TV現場で培った技術を活かし、ビジネス現場でコミュニケーション力を発揮し、成果を出す人材を育成する研修、講座、講演を行っている他、経営層・管理職、エグゼクティブリーダー向けプレゼン・スピーチのパーソナルトレーニングやコンサルティングなどを実施している。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仕事ができる人の話し方』(青春出版社)があり台湾でも翻訳されている。ホームページ

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