1. トップ
  2. ダイエット
  3. 汗の量はカロリーの消費量と比例するの?

汗の量はカロリーの消費量と比例するの?

  • 2022.6.5
  • 4805 views

汗だくなのは、ワークアウトを頑張ったから。そう言い切るのは少し早い。医学専門誌『Temperature Medical Physiology and Beyond』に掲載された最近の論文によると、発汗量は人によって大きく異なり、汗の主な役割は体を冷やすことにある。

残念ながら、汗をかいた分だけカロリーや脂肪が燃えるわけではない。ワークアウトの強度が高いということにもならない。聞いてガッカリ?

でも、ストレスフルな1日や夜ふかしのあとは、やっぱり汗を流したい。大事なのは、あの晴れやかな気分。ついでに汗もかいたなら、体のなかで多様な変化が起きている。

汗とはなにか、いったいなにを意味しているのか。ワークアウトの強度は、どのように測ればいいのかをアメリカ版ウィメンズヘルスから見ていこう。

人が汗をかく理由

Women's Health

発汗の主な目的は体温を調節すること。ワキの下を流れる汗は、体が熱くなりすぎるのを防いでくれる。汗の量が多いときは、たいてい体温が高いとき。

体が熱くなりすぎると汗腺から汗が分泌される。その汗が蒸発すると体が冷える。これは呼吸と同じくらい普通のことで、運動中はもちろん、緊張しているとき、不安なとき、気分が悪いとき、プレッシャーを感じているとき、辛いものを食べたときにも汗は出る。

汗腺は足の裏、手のひら、ワキの下に密集している。でも、アメリカのアリゾナ大学アンドリュー・ワイル統合医療センター准研究教授のJ・レイ・ラニヨン博士いわく汗腺は全身にあり、汗腺の種類が違えば分泌される汗の種類も違う。

そう、汗は1種類じゃない。しかも、汗は多種多様の分子からできている。「汗には大量の水、塩、ホルモン代謝産物、ステロイド代謝産物、ストレス反応分子が含まれています」とラニヨン博士。微量の食べもの、カフェイン、スキンケア・ヘアケア商品も汗の一部。

だから汗には貴重な情報が大量に詰まっていて、ホルモン反応やストレス反応、免疫系や神経系の状態も反映される。「汗から人の健康状態や疾患が分かることもありますよ」と話すのは、アンドリュー・ワイル統合医療センターの内科学教授で主任研究員のエスター・M・シュテルンベルク医学博士。「血液検査よりも直接的な健康状態と疾患の測定の方法です」

では、人によって発汗量が違うのはなぜだろう? 発汗量は、環境要因、遺伝、年齢、フィットネスレベル、健康状態、水分の摂取量によって変わる。自分は汗をかかないと思っている人も実際はかいている。汗腺は全身にあるので、汗をかかない人はいない。

アメリカのノースカロライナ大学チャペルヒル校の運動生理学助教授、アビー・スミス=ライアン博士によると、フィットネスレベルが高い人は汗をかき始めるのが早い傾向にある。発汗は体幹温度を維持する体の機能。発汗によって体温が下がり、運動を続けられるということは、フィットな人ほど体を冷やすのが上手いといえる。応用生理学誌『The Journal of Applied Physiology』掲載の論文も、これを裏づけている。

カロリーは汗をかいた分だけ燃える?

「発汗量で、カロリーや脂肪の燃焼量が分かるわけではありません」とスミス=ライアン博士。「それで運動の強度が分かるわけでもありません」

ランニング、サイクリング、ローイングなどの有酸素運動では汗が出る分、カロリーが多く消費されると思うかもしれないけれど、汗をかくのは体幹温度を維持するため。足元に溜まる汗の量で、カロリーの消費量や脂肪の燃焼量を測ることはできない。

これは暑い場所で行われるワークアウトにもいえること。例えば、ビクラムヨガ、ホットピラティス、サウナ、サウナブランケット。メリットはそれぞれにあるものの、汗をかいた分カロリーが余分に燃えるわけではない。スミス=ライアン博士いわくホットワークアウトの最大の利点は、筋肉が早く温まること。体が温まれば可動域が広がり、柔軟性が高くなり、肺活量が向上し、ストレスが軽減する。

「汗をかく運動はオススメです」とスミス=ライアン博士。「気分がよくなりますからね」。ワークアウト後に元気が湧くのは、汗をかいたからではなく、エンドルフィンが分泌されて、血行がよくなったから。

汗をかきすぎるとどうなる?

Women's Health

発汗は重要な身体機能。でも、どんなによいものも多すぎれば逆効果。過剰な発汗は体に悪いので、無理をせず、熱中症や脱水症に注意が必要。汗をかきすぎると、立ちくらみや吐き気がすることもある。

スミス=ライアン博士によれば、過剰な発汗で体の水分が失われるとパフォーマンス、認知機能、睡眠の質が低下するので、1日に体重(ポンド計算)の半分の水(オンス計算)を飲むことが大切(体重120ポンド=54キロなら、60オンス=1.8リットル)。

とはいえ、いうは行うより易し。「私たちの大半は水分不足の状態で生活しています」とスミス=ライアン博士。「水分は失った分だけ補給しなければなりません。ワークアウトで体重が0.5kg減ったら、約500mlの水分補給が必要です」。汗をたくさんかいた直後に体重が減ったなら、減った分だけ水を飲む必要がある。

ワークアウトの強度を測るには?

ワークアウトの強度を汗で測ることはできない。でも、自分の努力を正確に測る方法はたくさんある。

まず、スマートウォッチやランニングマシンのモニターといったフィットネストラッカーの体重データは常にアップデートしておこう。正確な体重を入力しておけば、消費カロリー量の予測もある程度正確になる。

スミス=ライアン博士によると、ワークアウトの強度は心拍数からも測定できる。この点、心拍モニターつきのスマートウォッチは非常に便利。睡眠やストレスも心拍数に影響するので、日によってワークアウトが妙に辛く感じるのは至ってノーマル。

デジタルデバイスに頼りたくないときは、測定に自覚的運動強度(RPE)を用いてみよう。RPEは0~10のスケールで測定される(0は力を使っていない安静時で、10は全力を出しているとき)。

主観的な方法ではあるけれど、ワークアウト時の感覚に意識を向ければ、消費カロリーと運動強度の見当をつけやすい。シンプルとはいえ、心拍モニターやトラッカーがないときはとくに頼りになる測定方法。

汗の量で消費カロリーや運動強度は測れない。ワークアウトの強度は、自覚的運動強度と心拍数をもとに推測しよう。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Andi Breitowich Translation: Ai Igamoto

元記事で読む
の記事をもっとみる