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家事せぬ在宅勤務夫、泣いて怒鳴る妻…40代共働き夫婦の「家事分担」

  • 2022.6.5
共働き夫婦の家事分担に変化?
共働き夫婦の家事分担に変化?

夫婦の家事分担はいまだ根強い問題ですが、時代はどんどん移り変わり、数年前に流行した「イクメン」という言葉も今や聞くことが少なくなりました。育児も家事も、夫婦が自然と共に行う時代になったのではないでしょうか。

共働き夫婦の現場では、どのように家事分担をしているのでしょうか。民間の調査結果も交えながら見ていきましょう。

6年間で「夫の家事負担率」は5ポイントもアップ

ホワイトプラス(東京都品川区)が提供するサービス「自宅にいたままクリーニング『リネット』」が2021年、会員587人を対象に、共働き世帯の生活実態調査を実施しました。同社では2015年にも同様の調査を行っていますが、6年間で顕著な変化があったといいます。

調査結果によると、「食器洗い」「お風呂掃除」「トイレ掃除」といった11項目の基本的な家事について、「夫婦のどちらが担当しているか」という問いに対し、夫の家事負担率が平均で5ポイント増加していました。特に、20~30代は夫が積極的に家事に参加していて、「ゴミ出し」と「朝ご飯の支度」では、他の年代より負担割合が多い結果となっています。

2015年からの6年間には、コロナ禍が始まった時期が含まれます。社会的背景も、夫婦や家族のあり方を大きく変化させます。以前であれば、「年収が低く、家にいる時間が長い、パートタイムや時短で働いている妻が家事を負担する」といった考えを持つ人たちが多かったかもしれません。しかしコロナ禍において、その考え方が変化したのではないでしょうか。

年収が高く、これまでは家にいる時間が短かった夫の方が、「リモートワークで長時間、家にいる」という家庭も多くなったのです。パートタイムでスーパーに勤めていたり、介護職をしていたりするような妻たちは、コロナ禍でも外で働かなくてはならず、家にいる時間はそのままで、心身ともに負担が多くなりました。

そんな妻たちを見て、立ち上がった夫も多くいます。そんな一例をご紹介します。

家にいたけれど、何も見えていなかった夫

弘之さん(45歳、仮名)と結花さん(40歳、同)ご夫婦は、弘之さんが商社のサラリーマン、結花さんがNPOの人事職です。海外出張も多く、多忙な弘之さんがする家事といえば、できるときに行うゴミ捨てや食器洗い程度。一人娘は、結花さんが勤めるNPOのビルにある保育園に預けていて、結花さんと一緒に行き帰りしていたので、送り迎えもしていません。

結花さんの方が長く家にいて、仕事以外の時間が多いからと、2人はお互いの家事負担について考えることもしなかったそうです。そんな状況がコロナで一変。弘之さんは完全リモートになり、かたや結花さんは人事という職業柄、基本的にはそのまま出社を継続。それに伴い、娘さんも一緒に保育園へ通うという生活を当たり前に続けたといいます。

日中、仕事をしているとはいえ、弘之さんは家にいるのに、洗濯も掃除も食事作りも一切しませんでした。当初、結花さんは自分の家事ルーティンが決まっていたので、特に何も感じず、そのまま全て役割を担っていたそうです。ところが、コロナ禍が長引き、世の中が不安に包まれ、買い物をするのにも制限がかかった頃、結花さんの堪忍袋の緒が切れます。

「『どうしてずっと家にいるのに、昼間に自分が食べたものも片付けずに、夕飯の準備をするわけでもなく、洗濯物も取り込まないの?』って、いろんなストレスもあって、泣きながら怒鳴っちゃったんです。夫はあぜんとしていました。自分が何をしていなかったのか、理解していなかったんです。家にいるんだから、気付いてやってくれるだろうって思っていた私が間違っていました。

夫は、家にいるといっても一日中Zoomで打ち合わせだ何だって忙しい。デスクワークは以前よりも増えている。『夫が多く稼いで、妻は家事をサポートするのが当然』という認識が漂っていました」

結花さんの訴えに驚いた弘之さんは、毎日結花さんが何をしているのか、どんな家事があるのか教えてほしいと伝えます。そして、結花さんが書き出した項目を見てびっくりしたそうです。

「考えてみれば当たり前なんですけど、僕が持っていっていたゴミは、結花が集めて玄関にまとめてくれていたんですよね。保育園に連れていくのだって、その前に持ち物を準備したり、子どもの着替えをしたり。食器を洗うのだって、いきなり食洗器に入れるわけじゃなくて、先に大きな汚れを洗い流したり、生ゴミを捨てたり…。項目を数えたら100近くあって、これが毎日の業務タスクって考えたらすさまじいなって。自分がやれること、やれないこと、僕がやることで彼女の負担が逆に重くならないかどうかなど、時間を割いて話し合って分担を決めました。

できるとき、できないときがあるし、最近は出社も増えてきたので、この先はまた変化していくと思いますが、生活を共にするパートナーとして、気持ちよく暮らすために家事は大切なので、向き合っていきたいと思います」

弘之さんは、理解を示してくれた最良のパートナーでした。結花さんはもっと早く話をすればよかったと反省したそうです。一方で、「コロナがなければ、『やってほしい』と思っても話せなかったかもしれない。稼ぐ力が平等ではなかったから」「コロナ問題は、話し合えるきっかけをくれました」とも。

お互いがお互いを思う気持ち、そして、家事に対する理解度は違います。まずは率直に話し合って、擦り合わせること。弘之さんが言うように、家事は、人が快適に生きていくために絶対欠かせない、膨大な量のある必須タスクなのです。そこに気付く人か、気付かない人か。自分のパートナーはどちらなのかを見極めて、擦り合わせ会議をしてください。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

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