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【コスメバンク プロジェクト】「女性と地球にスマイルを」をスローガンにひとり親世帯にコスメギフトを!

  • 2022.6.4

日本最大級のコスメ・美容の総合サイト「アットコスメ(@cosme)」の共同創業者である山田メユミさんは昨年、有志の方々と共に『コスメバンク プロジェクト』を立ち上げました。『コスメバンク プロジェクト』とは、シングルマザーなど経済的な困難を抱える女性の世帯に対して、化粧品メーカーが抱える“行き場が決まっていないコスメ”を詰め合わせてギフトにし、支援団体を通じて提供するというプロジェクトです。

昨年12月にはパイロットテストとして全国約2万2000世帯にクリスマスギフトを届け、いよいよ今年から本格始動。3月には『経済的事情などさまざまな困難を抱える女性たちに化粧品で笑顔になれる母の日を届けたい』としてクラウドファンディングを開始。そこで集まった支援金を元に、今回は13種類の花の種が同封されたグリーティングカードをつくり、コスメの詰め合わせギフトと共に支援団体へ送付したそうです。

今回は編集長の三好さやかが、アットコスメの共同創業者である山田メユミさんとコスメバンク プロジェクト事務局長の藤田恭子さんにお話を伺いました。

山田メユミさん

東京理科大学卒。東大EMP修了。化粧品メーカー商品開発部在職中、個人で始めたメルマガへの反響をもとにコスメ情報サイト「アットコスメ」を企画立案。サイト立ち上げを牽引し、1999年にアイスタイルを共同創業。現在も同社取締役を務めるほか、他の上場企業で社外取締役、学校法人理事等を兼任している。女性の多様な活躍の在り方を支援する活動が評価され「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017」において個人部門グランプリを受賞。プライベートでは2児の母。

藤田恭子さん

大学卒業後、フリーのWEB制作ディレクターを経て1999年、検索ポータルのライコスの立ち上げに参画。プロデューサーとして女性向けメディアを始めとするさまざまなサービスを産み出す。2005年にマイクロソフト入社。ポータルサイトMSNにおいても女性向けメディアを立ち上げ、ライフスタイル・エンターテインメント系サービスを統括。10年、アイスタイル入社。「アットコスメ」編集長、メディアサービス本部長などを務め、19 年にグループ会社のISパートナーズ代表に就任。

シングルマザーと行き先が決まっていない化粧品を結ぶプロジェクトがスタート

VOCE三好さやか(以下、三好)

まずはプロジェクト立ち上げの経緯からお伺いしてよろしいですか?


山田メユミさん(以下、山田)

きっかけはシングルマザーの支援団体を通じて「子供のハレの日なのに化粧品が手元にひとつもなく、すっぴんをマスクで隠して参列するしかなかった」というお声を伺ったことです。化粧品は女性を元気にして幸せになっていただけるものだと思って、その仕事に長年従事してきたのに、化粧品がないことによって悲しい思いをされてしまう方がいらっしゃると気付いたときに、すごい衝撃を受けたんです。そして、今までそこに思いを馳せられていなかったことに恥ずかしい気持ちにもなりました。


三好

本当ですね、私も日頃からコスメオタクさんと接することが多くて、その視点が抜け落ちていたこと、すごく反省しました。


山田

一方で化粧品業界では、行き先の決まっていない商品というのが一定数必ず存在します。トレンドや季節によってどんどん商品が変わっていく中で、各社、地球環境を守るための努力をされていますが、それらをゼロにするのは困難です。ならば、本当に必要なのに手に入れられない人たちに、そういった“行き先の決まっていない商品”を集めて支援の輪をつくることができれば……。女性たちにとっても企業にとっても、さらには環境にとってもプラスなのではということで『コスメバンク』の企画を立案したのです。


三好

コロナ禍での自粛でひとり親の家庭が増え、それが深刻化していることなどもプロジェクトのきっかけになったそうですね。


山田

そうです。昨年の春ごろからプロジェクトについて考え始めましたが、最初は支援団体の方々に“どういったものをどういう形でお届けしていったらいいか”をいろいろとヒアリングしました。その結果、コフレのような詰め合わせでお届けするのが一番だと思ったので、そこから各化粧品メーカーさんと相談したところ、皆さんが本当に共感してくださって! そこから一回目のパイロットテストを昨年のクリスマスに設定して、ギフトとして発送することになりました。都合、17社からご協力いただき、2万2000世帯にお届けすることができたんです。


三好

最初の予定では1万世帯の予定だったんですよね。それが、倍以上に!


山田

嬉しかったのは企業のトップの方が、どんどん別の企業のトップの方に「こういう活動があるから一緒に参加しませんか」とお声をかけてくださったこと。それで15万点という商品が集まったんです。ご協力いただいた支援団体も80団体になりました。できることなら、本当に必要な方々に直接手渡しでお届けしたいのですが、そこまではできないので、支援団体という信頼できるパートナーを見つけて、その団体の方々と連携しながら進めています。


クラウドファンディングで、シングルマザーを応援するギフトカードを作成

三好

お話を伺っているとプロジェクトの立ち上げから、すべてがとても順調に進んでいるようですが、大変だったことはありますか?


山田

嬉しい悲鳴なのですが、15万点という商品を一度全部集めて、それを組み合わせていく作業がとにかく大変でした。単純に詰め合わせるのではなく、“ギフト”として考えると、どういうバランスでどんな商品を組み合わせ、どんな形でラッピングするのか……。事務局のスタッフは当事者であるシングルマザーの方にお手伝いいただきました。自分だったらどんな形で受け取ったら嬉しいか、どういうものが欲しいかなど、具体的に話し合いながらひとつの形に落とし込んでいきました。そもそもがゼロベースでお手本がないので、本当に手探りでした。


三好

当事者の方と中身についてお話しされて、どういうものがあったら嬉しいなど、具体的な内容について教えていただけますか?


山田

スキンケアからベースメイク、メイクアップやヘアケアなど、いろんなものが入っていると嬉しいよねという声がまず上がりました。おひとり、おひとりのお好みにぴったり合わせることは難しいので、なるべくバリエーション豊かなギフトセットにしようと、かなり議論を重ねましたね。あとは社内で「どういうものなら貰って嬉しいか」というアンケートを取って下さったメーカーさんもいらっしゃいました。


三好

なるほど! 協力してくださったメーカーさんサイドでも、ただコスメを提供するだけでなくて、このプロジェクトについて深く考えて携わってくださっているんですね。


山田

化粧品はもちろんなんですが、それ以外でも冬場はお子さんも自分も冷えが気になるのでカイロがあると嬉しいんじゃないかというご意見をいただき実際にギフトに入れたところ、とても喜んでいただいたり。あと、入浴剤は自分ではなかなか買えないので嬉しいというお声もいただきました。我々、運営だけでなく、このプロジェクトに関わってくださった皆さんが当事者の方に寄り添ってくださったのがありがたかったです。


三好

12月のパイロットテストが成功に終わり、その次が母の日のギフトセット。3月からクラウドファンディングを実施されましたよね。


山田

今回のクラウドファンディングはギフトと一緒に届けるグリーティングカードをつくるために使用させていただきました。企業さんからのご支援だけでなく、一般の方々にもクラウドファンディングを通じて我々のプロジェクトを知っていただき、賛同していただける機会をつくりたいということで、「母の日ギフトに生花は難しいけれども、花の種なら」というアイデアが持ち上がり、花の咲くカードをつくることにしたのです。


山田

パイロットテストを行ったときに、化粧品が届くのはもちろんだけど、それが“ギフトセット”として届くことが嬉しいというお声がたくさんありました。「自分がプレゼントをもらうのは10年ぶりでした」「子どもへのプレゼントかと思ったら自分宛でとても嬉しかった」と、そういうお声を大切にしなくてはと思ったんです。カードの中に応援メッセージを書き、しかもそのカードからやがて花が咲くという形もギフト感が増して、さらに喜んでいただけるのではと思い、実施を決定しました。


「自分のことを構ってもいいんだ」という気持ちを少しでも思い出してほしい

三好

クラウドファンディングは男性からの支援も多かったとお伺いしました。


藤田恭子さん(以下、藤田)

そうなんです。これで、頑張っているお母さん方の癒やしになればというコメントも多数頂戴しました。4月の中旬くらいから支援団体さんへギフトをお送りして、その団体さんが“母の日”にお母さん方へお渡しいただけるようなスケジュールを組みました。


三好

クリスマスのギフトから母の日のギフトとして実施されたときに、ブラッシュアップされた点などはありましたか?


藤田

ブラッシュアップというか、規模がかなり大きくなりましたね。参画いただいた企業数も最終的に27社まで増えましたし、商品点数が40万点を超えたので、嬉しい悲鳴ではあるのですが、お送りするひとつひとつのパッケージをどう作っていくかという、そのバランスの取り方が難しいなと感じました。


【『コスメバンク プロジェクト』でギフトを詰める過程もご紹介】
藤田

やはり必要としている方に必要なものをお届けしたいというのが根本にある想いです。ですので、ギフトを受け取っていただいた女性たちからの感想などを企業側にお伝えし、提供商品に関しては事前に相談しながら決めさせてもらっています。いきなり大規模で活動を行いたいというよりは、双方にとって意味のある支援の輪を回し続けていきたいと思っていますので、そこはしっかり質と量とのバランスを見ながら、息の長い活動にしたいですね。


三好

サンプルの中身を拝見させていただいて、こんなに多種多様なものが詰め込まれているんだ!と思って驚きました。本当にスキンケアやメイク製品だけでなく、日焼け止めや目元マスクとか、マウスウォッシュ、入浴剤といったものなど多岐にわたっているんですね。


山田

すべてのギフトに同じものが入っているわけではないのですが、マウスウォッシュや入浴剤は普段買わないから、とか、家族みんなで使えてよかったというお声をいただきましたね。


三好

こういったものがあると嬉しいという、リクエストというか、ご要望みたいなものはありますか?


藤田

あります。たとえば、お子さんがアトピーなので敏感肌でも使えるものがあると嬉しいなど、それぞれの方のご事情に合わせたご要望があるのですが、そこをおひとりおひとり個別に対応していくのは難しいというのが現状です。ただ、ご要望があるのは理解しているので、何か工夫をしていきたいとは思っています。


三好

個別対応は難しいですが、できるだけお声は拾いたいですよね。


藤田

また以前、三好さんとお話をした際に「100円ショップでも口紅は売っているから、そういうのを買う手もありますよね」という話題が出たかと思いますが、お子さんの3食を用意するために自分は一食削っているというお母さんもいらっしゃるので、100円ショップで買うこともままならないという可能性もあります。


藤田

もちろん、それぞれのご事情が違うので一括りにするのは難しいのですが、金銭的な問題だけでなく、精神的にもやっぱり“自分のことを構っている場合ではない”という感覚がおありの方も多いんです。お子さんを育てなくてはいけないというプレッシャーから、自分のことを構うことへの罪悪感を持っていらっしゃる方もおられるそう。そういった方は、余計に化粧や美容を遠ざけていらっしゃるんですよね。


三好

自愛、というのは、本当に難しいですよね。


藤田

「10年以上自分のことを構ってなかったけれど、久しぶりにメイクをしてやっぱり化粧っていいなと思いました」というお声を聞くと嬉しいですし、その方が少しでも前に進む一助になればいいなと思います。


三好

本当にそう思います。VOCEとしても参画できることがありそうな気がします。


山田

はい。「今日のママ可愛い」とお子さんに言われて嬉しかったというお声もありますし、お母さんが元気になると、お子さんも元気になりますからね。


自治体と協力体制を取ることで、プロジェクトのさらなる広がりを模索

三好

次のステップにはどんなことを考えていらっしゃいますか?


山田

年2回、『母の日』『クリスマス』にギフトを送ることを継続して行う予定です。加えて、今は地方自治体との連携を進めているところです。まず、第一弾として、プロジェクトを進めているのは千葉県柏市さんです。やはりひとりで子育てされている家庭が中心になりますが、様々な手当てを受け取る対象の方たちに、役所に手続きにいらしたタイミングでギフトをお渡しする仕組みをご相談中です。


三好

自治体と提携するのは素晴らしいですね。


山田

支援を必要としているのに、なかなか役所にアクセスしてくださらない方が来てくださったり、“化粧品”という少しソフトなものがあると会話が弾むきっかけにもなるのではと思うんです。ひとり親の方々と自治体との間にも繋がりが生まれることに対して、自治体側もとてもポジティブに捉えてくださっているんです。柏市ではメーカーさんの協力も得て、就活や就業のためのメイクアップ講座も開催する予定です。モノだけではない、“ソフト”の部分の支援も少しずつお話を進めているところです。


三好

確かに最近は化粧品の進化が著しいので10年ほどまったく化粧品に触ってなかったとしたら、どう使っていいのか分からないというアイテムも多いでしょうし。


山田

自治体さんとのご相談は柏市以外ともいろいろな形で進めているところです。


三好

私はギフトとして贈られる化粧品のクオリティに感動しています。メーカーさんから提供されるアイテムはどれも【今使えるモノ】ばかりですよね。


山田

はい。“行き先の決まっていない商品”と呼んでいますが、きちんと使用期限を確認していて、お手元に届いてから一年以上は安心して使っていただけるものをご提供いただいているんです。私たちは“ギフト”としてお送りしているので、やはり品質管理もしっかり行い、“贈り物”として成り立つものでありたいと思っています。


三好

母の日のギフトとしては3万3000世帯に送られたとのことでしたが、それは全国のひとり親世帯のどのくらいに当たるんでしょうか?


山田

現在、130万世帯のひとり親家庭があると言われています。約半分が貧困家庭と言われているので、本来お届けしたい対象家庭数は単純計算で60万世帯くらいでしょうか。3万3000世帯への送付という数字は満足できるものではありませんが、私たちがおひとりおひとりに直接アプローチできるわけではないのでまずは支援団体さんと繋がっていらっしゃる、特に緊急性の高い方たちを優先せざるを得ないというところです。


三好

これから先、このコスメバンクの事務局で雇用機会などが生まれるといいですね。


山田

雇用となると人件費なども関わってくるので一筋縄ではいきませんが、事務局の設立にはそういう考えも反映されています。ギフトを詰める作業などは、将来的に、このプロジェクトに共感してくださる方々にボランティアなどで参加していただけるプラットフォームにしていきたいと思っています。


三好

では、次回のクリスマスギフトの目標値というか、どのくらいの世帯にお届けしたいというのはあるんですか?


山田

今期は引き続き3万世帯を対象に活動していきます。年末に向けてもう少し増えそうな気はしているのですが、お配りする世帯数が増えるとその分もちろん手間やコストもかかってしまうので、そのあたりのバランスをどうやって取っていくかというのが今後の課題だと思っています。無理をして続かない、というのが一番よくないので、足元を見て、課題を解決しながら、少しずつ進んでいこうかなと思っています。


三好

ぜひVOCEも何かこれからお手伝いができればと思います。今日はありがとうございました!


撮影/楠本隆貴(will creative) 取材・文/前田美保

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