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気分を良くしてくれるアンチポジティブメソッドとは?

  • 2022.6.2
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幸せになるためにすべてがそろっていると自分に信じ込ませるためにその日の小さな喜びを列挙する代わりに、そうでないものをすべて挙げてみるのはどうだろう?

自分のネガティブな感情を受け入れることで、より良い対処ができるようになる。Photo : Getty Images

ポジティブ心理学について、耳にしたことがあるかもしれない。毎朝起きて、陽の光を浴びながら、健康であること、そして家族に囲まれていることに“感謝の意”を述べる。そして、1日の終わりにはその日の小さな喜びを書き出して、感謝のリストを作る。この目的は? 末っ子が2カ月で3回気管支炎にかかったり、マンホールの隙間に携帯電話を落としたりといったネガティブなことに意識を向けるより、道端で見知らぬ人と目が合った時に微笑み合うことの方が重要だ、と気付くためだ。

ところがそんなことをしても、何の変化も起こらない。幸せの絶頂に達することはなく、むしろ定期的に愚痴をこぼしたくなる衝動に駆られる。アメリカのセラピスト、ジョディ・カリスは1月6日に雑誌ヴォーグのウェブサイトに掲載された記事の中で次のように述べている。「常に感謝し、親切に振る舞い、私利私欲で物事を考えないことが良しとされていますが、これでは怒りやストレス、嫉妬など、自然な感情が入り込む余地がありません。私たちはこの複雑な感情もまた受け止めなければならないのです」。

罪悪感をなくす

罪悪感をなくすため、アメリカ人ジャーナリストのリズ・ブラウンは、「感謝しないリスト」を作ることを選んだと、2017年に月刊誌『Good Housekeeping(グッドハウスキーピング)』に語っている。

3年前からうつ病を患っていた彼女は、心理学者のすすめでこの実験に挑戦した。「死別、病気、失意、税金、痔など、自分に降りかかったすべての不幸を表現できる腹立たしい悪口でリストを埋め尽くしました。こんなことを書いたところで消えるわけではないけれど。けれど、このリストのおかげで、恥ずかしさを受け入れ、そして行動へと導かれたのです。まだ心は痛みますが、少なくとも、悲しんでいるからだとか、ワガママだからとか自分を追い詰めることはありません」

これこそが、このリストの要点だと『うつ病礼賛-幸福の独裁にノー』(1)の著者である精神科医のジェラール・ティシエは言う。自分の感情を前提とした選択をすることで、私たちを罪悪感から解放してくれるというのだ。「自分に向き合う時、私たちは被害者になると同時に、判事となり、死刑執行人にもなり得るのです。私たちは自分の欠点や間違いを非難し、時には自滅するほど自分を罰してしまいます」

セラピストのアンヌ=ロール・ビュフェは、日常生活における心配事、それも些細なものをリストアップすることは、悲観主義ではなく、むしろ自己認識のために良いと言う。『助けて、私は大丈夫』(2)の著者でもあるアンヌ=ロールは、次のように指摘する。「人生をバラ色に見ようとすると、感情の複雑さを無視することになります。それを把握することで、感情を抑圧することなく、将来起こり得るひどく暴力的なブーメラン効果から自分を守ることができるのです」

また、ノートに書くことで、ある感情との関連性をより明確にイメージすることができるという。「脳が解きほぐせなかったものが、より鮮明に見えるようになるのです」とセラピストは続ける。感謝のリストは、問題の原因と自分との間に距離を作ってしまう。「ある事象に全神経を集中させることで、その事象に対する視界が歪み、時に過剰なまでに重要視してしまうのです」

アンヌ=ロール・ビュフェは、「問題を言葉で表現することで、事実とそれに対する判断を切り離すことができる」と説明する。

不平不満の先に存在するもの

では、実際にはどのようにすればいいのだろう?ペンと紙を持って、自分の苦しみや愚痴を書き出す。アンヌ=ロール・ビュフェによれば、ノートにまず自分の考えをすべて書き出し、それを2つの列に分類する。1つは自分が抱えた感情、もう1つは自分がしてしまったことで腹が立ったこと。

目的は、先に進むこと。「不平不満はこの取り組みの始まりに過ぎない」と精神科医のジェラール・ティシエ医師は指摘する。探求を充実させるために、ノートに3つ目の欄を設けて、そこに自分のメモから生まれた疑問、質問を記入することを医師はすすめる。

「“良い”質問とは、自分自身の行動や感情を問うもの。対立や別れなど、自分ではなく相手から答えを出さないといけないものは、解決することはほぼ不可能で、エネルギーを浪費してしまいます」とティシエは説明する。

ネガティヴに陥らない

自分を苦しめるものに集中することで、気分が暗くなるリスクはないのか?セラピストのアンヌ=ロール・ビュフェによると、自分がコントロールしている限り、リスクはないと言う。「自発的に始めた瞬間から、苦しみはそもそも自分自身のものなので(負の感情に)襲われることはありません」。

ネガティブスパイラルに陥らないために、自分にポジティブな感情をもたらすものを書き留めることも忘れないで、とジェラール・ティシエ医師は付け加える。

(1) Gérard Tixier著、『Éloge de la déprime : non à la dictature du bonheur』(Milan社刊)(2) Anne-Laure Buffet著、『Au secours, je vais bien』(Ideo社刊)

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