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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.55 映画館での音楽体験

  • 2022.5.27
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クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.54 見つけてほしいかくれんぼ

vol.55映画館での音楽体験

福岡行きの飛行機に搭乗する前に寄った売店でアイスコーヒーを片手に出てくると、ベンチに座って私を待っているマネージャーさんの姿が目に入った。現場で必要な物とパソコンが入っているであろう大きなリュックサックを背負う体はそれとは対照的に細く小さい。真っ直ぐ伸びた綺麗な黒髪がシャツの後ろ襟に乗っかり、丸いシルエットになっている。その姿に不思議に心が和み、写真を撮ろうとしたところで気づかれてしまった。

福岡に新しくできた商業施設に併設された映画館。最高の鑑賞環境と音響環境を目指して作られたシアター。そのオープンを記念して行われたトーク&ミニライブのラジオ公開収録。映画館で歌ったのは初めての体験。ライブハウスやコンサートホールでは、自分の声が足を運んでくれている“みんな”に広く大きく無限に!掛け算になって届いていく様な感覚があるのだけど、映画館はみんなでいても、1人と1人の空間で。あなたと私がただここに居るという事実だけがはっきり胸に迫ってくるロマンがあった。宇宙に浮かぶ人工衛星はこんな心地で地球を見つめているのかなって。その静けさがとても好ましく、いつか美術館や水族館で歌ってみたいな、と思ったり。デビュー10周年のタイミングでデビュー曲「サブリナ」をギタリストの設楽さんと私のツインギターでお届けすることができて本当に嬉しかった。

実は福岡キャンペーンの移動中。車の窓から見た街の景色は随分と様変わりしていて。学生時代に遊んだり通っていたビルが建っていた一帯が都市開発の為に更地になっていた。もうここに暮らしていない癖に少し身勝手な感慨かもしれないけれど、こうして時代は移り変わっていくんだ、とやっぱり寂しい気持ちを拭い切れず。福岡を離れて12年が経ち、私自身も16歳の頃とは色んなことが変わったと思う。だけどこうして今年デビュー10周年を迎えることができ、そのタイミングで故郷に仕事で帰って来られたこと、そして福岡の街が新しく生まれ変わる瞬間に立ち合え、歌が歌えたことが幸せだと思った。まだまだ、まだここから。そして頑張りたいと思った。

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