【『七日の王妃』の暴君】燕山君の母はなぜ廃妃になったのか

時代劇『七日の王妃』では、イケメン俳優のイ・ドンゴンが燕山君(ヨンサングン)を演じていて、強烈な個性を見せている。なにしろ、燕山君といえば朝鮮王朝の中で最悪な暴君。酒池肉林を繰り返して官僚を虐殺した恐ろしい男だった。

彼はなぜそんなに残忍だったのか。理由の一つになっているのが、母親の影響だ。その彼女は９代王・成宗（ソンジョン）の二番目の正室だった尹氏（ユンシ）である。

しかし、彼女もトラブルばかり起こして悪評にまみれていた。

一体、何を仕出かしたのだろうか。

尹氏は美貌を買われて側室から昇格して王妃になったのだが、とても嫉妬深い性格だった。そのために、王妃になってからも成宗の側室たちに嫌がらせを繰り返した。そのあげくに、彼女は成宗が特に気に入っている側室を呪い殺そうとして、部屋に毒薬を持ちこんだ。

たまたま尹氏の部屋を訪ねた成宗は、その毒薬を見つけてしまった。

驚愕した成宗。彼は尹氏を恐れるようになった。

こうして評判が悪くなった尹氏だが、さらに大事件を起こしている。なんと、精神が錯乱して成宗の顔を激しく引っかいてしまったのだ。もちろん、不敬の罪で尹氏は厳しく処罰された。

結局、尹氏は朝鮮王朝で最初の廃妃になり、王宮から追放されてしまった。

さらに、１４８２年に死罪となり、毒を飲んで息絶えた。

このとき、成宗は「今後100年間は尹氏のことを語ってはならない」と王命を出した。燕山君はまだ6歳だったので、母が亡くなったいきさつを知らなかった。

しかし、燕山君が1494年に即位したあと、出世に目がくらんだ官僚が成宗の命令に背いて、尹氏が死んだ経緯を燕山君にばらしてしまった。

衝撃を受けた燕山君は、それから異常な性格を示すようになった。とにかく、母の死罪に反対しなかった官僚たちを探し出して、ことごとく殺した。

それは、最悪の官僚虐殺事件になってしまい、燕山君の非道さが王朝を震撼させた。

常軌を逸していた母親と息子。朝鮮王朝はこの親子によって歴史を汚されてしまった。

文＝康熙奉（カン・ヒボン）