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互いに人生設計が違うカップル、それでも幸せになれる?

  • 2022.5.4
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子どもを持つ、田舎に移住する、お金を稼ぐ…。こうした主題で意見が一致しない場合は疑いを持つべき?

それぞれが別の道を進むことを望んでいるカップルに解決策はあるのか?photo : Getty Images

サン=テグジュペリの言葉を信じるならば、「愛する、(…)それは一緒に同じ方向を見ること」。紙の上では確かにその通り。ただし実際はそうもいかないときがある。片方は子どもが欲しいのに、もう片方は欲しくない。一方は野心満々で、緻密なプランを立ててキャリアを築き、富を目指す。他方はミニマルなライフスタイルで満足している。片方は田舎暮らしに憧れ、もう片方は都会から離れるなんて考えられない……。お互いの間に愛情はある。しかしそれぞれ人生に求めるものがあまりに違うと、関係が危うくなったり、疑いが生まれることもある。自分たちは本当に互いに「向いて」いるのだろうか?望む道が違う時、カップルにとって解決策はあるのだろうか?もしあるとしても、最終的に幸せを見つけられるのだろうか?

親になりたい、ある特定の環境で暮らしたい、仕事に関する特別なビジョンを実現したいなど、ふたりが「それぞれに違う欲望を持つことと、円満なカップルであることは相反するものではありません」と臨床心理士のリュシー・ロジェは即答する。パートナーのシナリオと別のシナリオを望むのはよくあること。カップルとはいえ、それぞれ違う宇宙からやって来た者同士だ。ではいったいこの状況をどう切り抜けたらいいのだろうか?

「私たちは双子の片割れと付き合うわけではありません」とカップルセラピストのヴィオレーヌ・パトリシア・ガルベールは笑う。たとえふたりが同じ理想のカップル像を描いていたとしても、ふたりいっしょに満ち足りているだけでなく、それぞれが個人としても充足感を得たいと望むのはあたりまえのこと。「私」は「私たち」と同じように重要なのだ。だからこそ、出会いは豊かなものだが、ときにはそれが諍いの原因になることもある。

欲すること、それは、動き続ける力。

「始めの頃は愛があらゆる凸凹を消し去ります。しかし最終的には私たちは自分たちの差異に直面します」とガルベールは強調する。要するに、ひとたび蜜月が過ぎると、システムにヒビが入り始めるというわけだ。私たちは一般に、「上手く行く」カップルにおいては、相手への愛によって多くの妥協と犠牲を受け入れていると考えがち。だが、「完全に犠牲的な関係は破綻します」と臨床心理士のロジェは断言する。確かに、交渉、妥協、諦めはカップルの生活の一部。カップルとはロマンティック・コメディではないのだから。けれどカップルの関係の中にあるのはそれだけではないはず。さもなければ不幸な話だ。

もし相手が自分と同じ望みを共有してくれなければ、ふたりの関係は行き詰まると考えがちだ。あるいは最悪の場合、そうした犠牲と共存することを余儀なくされ、自分は幸せになれないのではと心配になる。しかし、ロジェはこう言う。「望みとは将来への投影でしかない」、つまり命令ではない。別の言い方をすれば、パートナーが子どもが欲しいと言いはじめても心配する必要はない。相手に強要しているわけでも、すぐに子どもを押しつけようというわけでもない。臨床心理士はこう続ける。

「欲することは動き続ける力です。固定しているものではない」。彼女によれば、断固として拒絶するのではなく、相手の欲することに耳を傾けることができなければならない。

また、欲することは、「したい」「したくない」に要約されるものでもない。そこにはためらい、疑問、不安なども混じっている。「たとえば、子どもを授かることはディズニー映画のようにロマンチックなもの、誰でも子どもはとてもとても欲しいはずだと想像しがちです。しかし子どもが欲しいという完全かつ絶対的な欲望から子どもが生まれる、というものではない」とロジェは指摘する。憧れの生活環境についても事情は同じだ。田舎暮らしをしたいと思ってはいても、都会生活の便利さも捨て難く、実行に移す心の準備ができているとは限らない。ゆえに、臨床心理士は、カップルそれぞれの欲することが明確になり、互いに歩み寄る可能性を探るためにも、じっくり時間をかけるようにとアドバイスする。

新しいモデル

全てにおいて意見が一致するというステレオタイプの理想のカップル像から外れて、より個人的な新しいゲームの規則を作り上げ、ふたりの関係を維持し、その上でそれぞれにとって得になる方法を考案したカップルもいる。ライフスタイルに関しては、新しいモデルがすでに現れはじめている。子どもがいるいないに関わらず、別々に暮らすという贅沢を手に入れたカップルもいる。人間関係コンサルタントのヴァレリア・サロメはこうした生活様式を「出会い関係」という言葉に要約する。楽しいときだけ一緒にいる。つまりマンネリ化した日常を共有するのではなく、デートを重ねながら生活を送るというわけだ。

もちろん、共同生活を平穏に送るには、相手の選択を尊重することが欠かせない。カップルセラピストのガルベールは「私たちの生活の原動力」であるお金を例に取る。お金を稼いでいない、あるいは収入が少ない方は、お金を稼ぎ、自分の好きなようにお金を使うパートナーの選択に口を挟むべきではない。また、収入の多い方も、同じようにお金を稼がないとか、場合によっては、お金のかかる活動をするときに自分に依存しているなどとパートナーを批判するべきではない。生計を支えている方にとって、パートナーが同程度に家計に貢献しないことを受け入れるのが難しい場合もあるとガルベールは認める。だが、「彼は活動家だから、アーティストだから……。政治参加とか、ほかの分野で秀でている」と相手を賞賛する気持ちがあれば、それが可能になることもある、とガルベールは話す。

鍵はコミュニケーション

諍いの主題が何であろうと、相手を説き伏せようとしてはいけない。互いに相手に選択の自由を与えることは何よりも大切だと専門家たちは口を揃える。ただし「私たち」は議論の場。そこではそれぞれが自分の欲することを提示する権利を持ち、互いに相手の言うことに耳を傾けなければならない。

感情をコントロールするのは難しいが、カップルの関係の質は当人たちの意志次第だとサロメは言う。しかし円滑な関係を築くためには、「降参することなく、一緒に生活し続ける手段を互いに与え合う」必要があると彼女は指摘する。カップルの幸福の鍵は問題のあるまさにその場所で見つかるものだ。肝心なのは、対処しようのない状況になる前に、自分が心に抱いている望みを伝えあうことにほかならない。

そもそも、交際の初期からのコミュニケーションの欠如が、数ヶ月あるいは数年後にカップルの関係に影響を及ぼすことになる、とカップルセラピストのガルベールは言う。現代のカップルは急いでことを進めがちで、相手が何を望んでいるかを知る機会となる議論の重要な段階を端折ってしまっている。「以前は、婚約期間があり、それから結婚を迎えました。将来の計画を練る時間があったわけです。いまのカップルはこれからのことについてあまりよく考えません。一種のユートピアを生きている」と臨床心理士のロジェは指摘する。

「厄介なテーマ」でも、落としどころを見つけ、カップルの将来について「交渉」することは可能だ。互いの望みをすり合わせるのもよし、欲望に関して双方の意見が一致しない場合があることを受け入れるのもよし。ただし限界はある。一方だけが欲望にアクセスし、他方は漠然とした期待を抱えたまま過ごすという事態に陥いることは避けるべき。そのときは、双方を自由にするために、別れることも選択肢のひとつだ。

 

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