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映画監督・川和田恵真さん たくさんの出会いで「自分を開けた」

  • 2022.5.4

日本とイギリスにルーツを持つ川和田恵真さんが監督を務めた、クルドと日本という2つのアイデンティティに葛藤する少女を描いた映画『マイスモールランド』が5月6日から全国公開されます。川和田さんはカンヌ国際映画祭で最高賞となるパルムドールを受賞(2018)した是枝裕和監督のもとで監督助手を務めたことも。これまでの自身の体験やルーツについて、川和田さんにお話を聞きました。

監督助手時代に学んだこと

――2014年から、是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」に所属。日本アカデミー賞で6部門を受賞した『三度目の殺人』(2017)では、川和田さんは監督助手を務めています。ご自身にとって是枝監督はどんな存在ですか。

川和田恵真さん(以下、川和田): 是枝監督はイメージ通り穏やかな方ですが、すごくエネルギッシュ。作品をつくり続ける背中をずっと見てきました。一度、内容が固まった脚本でも撮影中もずっと直し続けますし、作品づくりにおいて考える事をやめない人です。
私は大学を出て、「分福」に参加しました。現場経験は無かったのに、「どう思う?」と常に意見を聞かれ、作品に取り入れてもくれました。何でも吸収しようという是枝監督の姿勢に影響を受けましたね。

だから『マイスモールランド』でもスタッフやキャストに意見を聞いて、作品をよくするための話し合いを心がけました。

作品と向き合ってからの変化

朝日新聞telling,(テリング)

――昨年、30歳になりました。節目は意識されましたか。

川和田: 気づいたら30代になっていました(笑)。
年齢の節目は意識しませんでしたが、最近、変わったことがあります。以前は周りと違って見えるのが嫌で、縮毛矯正をかけて髪の毛をまっすぐにしていました。
でも、試しにストレートヘアをやめてみたんです。たくさんの出会いをしたからか、今は気にならなくなりました。でも、またストレートにしたくなればすればいい。周りを気にせずに、その時々で自分が好きなようにしたいと思います。

クルドの方との出会いで感じたこと

――『マイスモールランド』の企画を立ち上げてから完成まで5年と聞きました。環境や意識の変化はありましたか。

川和田: 映画をつくる時間が延びたり、人と物理的な距離を取るようになったり。
コロナ禍で多くの人が、ボーダーを感じたと思います。緊急事態宣言が出ているときは、撮影でも県境をまたぐ移動は控えるように、と言われたこともありました。

映画の製作過程で、私自身に変化もありました。クルドの方と出会って交流を深めていくうちに「あなたはクルド人だ」と言われて。この言葉は、私の心を開いてくれました。クルド人や、日本人のスタッフと話すなかで、映画づくりは「自分を開いて伝えることが大切だ」と痛感しました。

朝日新聞telling,(テリング)

――「開いて伝える」とは?

対話し続けることでしょうか。まだ自分でも答えは見つかっていないです。映像や音楽など、言葉じゃないもののイメージを言葉で伝えるのは難しい。『マイスモールランド』は国際共同制作で、仕上げはフランスで行いました。現地のスタッフは意見をストレートに伝えてくれる一方、私は自分の言葉が足りていなかったかもしれないと感じました。

――川和田さんと同世代の女性には、コロナ下で孤独や閉塞感を感じている人もいます。

川和田: 外に出られなかったのは、きつかったですよね。どうしても自分と向き合わざるを得なくなりますし。そんな時は、映画や本など身近にあるものの中で世界を広げられるものから、心だけでも外に出てみるとよいのかもしれせん。

朝日新聞telling,(テリング)

――今後の目標は。

川和田: まずは『マイスモールランド』という映画を届けて、日本にいるクルド人の方々の厳しい状況をしってもらい、すぐそばで起きていることを自分事として感じてもらいたいですね。今後も、自分が疑問に思ったことを、作品を通して伝えていきたいです。

■斉藤明美のプロフィール
2014年朝日新聞社入社、22年春からtelling,編集部員。 野菜、果物の曲線や色みに関心があります。憧れは桑田佳祐・原由子さん夫妻。

■岡田晃奈のプロフィール
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。

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