1. トップ
  2. 2時間でわかる! 上野千鶴子が教える、日本のフェミニズムが歩んできた道のり

2時間でわかる! 上野千鶴子が教える、日本のフェミニズムが歩んできた道のり

  • 2022.5.4
  • 291 views

『フェミニズムがひらいた道』(NHK出版学びのきほんシリーズ)が発売された。著者は、社会学者の上野千鶴子さん。2時間で読み終えられる入門書だが、そのタイトルに日本のフェミニズムをひらいてきた女性たちへのリスペクトを感じる。フェミニズムが生まれた時の日本の女性たちの状況は?その道のり、エポックとなる出来事・人物について、エピソードをまじえて知ることができる一冊だ。

若い世代が「フェミニズムは韓国の情報から知った」と話すのを聞き、上野さんは日本には日本のフェミニズムの歴史があることを知ってほしいと、読みやすくコンパクトな入門書としてまとめたという。

日本のフェミニズムは何を変え、何を変えられなかったのか

本書では、日本のフェミニズムを切り開いてきた著者が、そのうねりを4つの波に分けて解説する。女性参政権、性別役割の解放、#MeToo......日本でフェミニズムはなぜ生まれ、何を変え、何を変えられなかったのか、フェミニズムの歩んできた道のりを知ることができる。

フェミニズムというと、受け取り方が人によっていろいろあるのかもしれない。たとえば、上野千鶴子さんが2019年4月の東京大学の入学式に来賓として祝辞を述べた際、フェミニズムについて次のように語っている。

「フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。」

また、本書の中でこう述べている。

人はいつ、どんなときに弱者になるかわかりません。しかも、どんな人であってもいつかは弱者になっていく存在です。フェミニズムは、女性の差別との闘いの歴史です。そして同時にフェミニズムは、私たちに「ほんとうの平等とは何か」という問いを投げかけてきます。いまこそ、そんな思想の一端に触れてみてください。

「人は弱者として生まれ、弱者として死んでいきます。強者である期間は、人生のあいだで一時のことにすぎません」と説く上野さんの言葉に、本当にそうだなと改めて気づかされる。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍兵士によるウクライナ人女性への性暴力に関する証言が相次いでいる。いつの時代でも戦時には女性への性暴力があり、それが「性暴力」として認識されるようになったのは、わずか30年前のことだ。

そして、女性の性差別に関することはたくさんあった。日本では女性が国際結婚をした際は日本国籍を失った。日本企業では「女性にお茶くみをさせる」「女子社員が持参するお弁当をチェックする」といった行為は当たり前だった、などなど。セクハラ防止が企業の責任になったのは21世紀になる直前だった。もっと歴史を遡れば、日本で女性に参政権が認められたのは戦後になってから。女性たちは、こうした性差別の一つひとつと闘ってきたのだ。

フェミニズムの歴史の中には、とても魅力的なたくましい女性たちが登場する。上野さんも彼女たちも、私たちのほんの先を生きて、女性たちが生きやすい社会を切り開いてくれた。私たちは、後輩の女性たちのために何ができるだろうかと、思わされる一冊でもある。

目次は次のとおり。

はじめに 区別が差別に昇格した
第1章 ウーマン・リブの産声
第2章 第一波フェミニズムのころ
第3章 第二波フェミニズムの到来
第4章 女性学の登場
第5章 第三波フェミニズムと揺り戻し
第6章 第四波フェミニズム、そしてどこへ?
フェミニズム 人物小事典

■上野千鶴子さんプロフィール
1948年、富山県生まれ。社会学者、東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で、40年間教育と研究に従事。主な著書に『近代家族の成立と終焉』『家父長制と資本主義』(岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『ひとりの午後に』(NHK出版/文春文庫)、『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)、『おひとりさまの最期』『女ぎらい』(朝日文庫)、『ケアの社会学』(太田出版)など多数。

元記事で読む
の記事をもっとみる