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ドキュメンタリー好き・武田一義(漫画家)、忘れられないあのシーン。『Future is MINE −アイヌ、私の声−』

  • 2022.4.25
『Future is MINE‒アイヌ、私の声‒』イメージイラスト

歌い手・萱野りえがアイヌの伝統的な歌唱法で自らの想いを唄うとき

北海道で生まれ育った僕にとって「アイヌ」という言葉は身近です。でも、「アイヌの人々」は決して身近ではないんです。今思えば、周囲にいなかったのではなく、ただ名乗っていなかっただけなのかもしれない。アイヌに生まれた萱野りえさんの葛藤を聞いていると、そう思わされます。

『Future is MINE‒アイヌ、私の声‒』
©3Minute inc.

文化を未来に継ぐ術を模索するりえさんは、この作品でアメリカの先住民族と交流し気づきを得るのですが、そこで感じた決意をアイヌ語で歌に乗せるのがこのシーン。

美しくどこか壮大なイメージをもたらす、声帯を絞る伝統的な歌唱法に心を掴まれるだけでなく、素直な心情をただそのまま綴った詞を、その時、思ったままのメロディに即興的に乗せていく。その素直さが、心に真っすぐ刺さります。

アイヌの人は、生まれたときからある意味で生き方を定義づけられていると思います。少数民族であるがゆえの苦労も絶えないでしょうが、自らのルーツを知るよしもない自分にとっては、何か先祖からの道しるべをもらっているようで羨ましくもあるんです。

ドキュメンタリーの醍醐味は、自分と違う人生に触れられること。漫画家としての自分の人間観に、少なからず影響を与えてくれていると思います。

『Future is MINE‒アイヌ、私の声‒』イメージイラスト

Information

『Future is MINE −アイヌ、私の声−』

北海道の先住民族アイヌとして生まれ、アイヌの歌や踊りに囲まれ育った萱野りえさん。アイヌ語で歌うボーカルグループ〈MAREWREW〉の一員として文化とともに歩むが、いつしか活動に限界を感じるように。結婚・出産を経験し、自分のルーツへの思いを再認識した彼女は、アメリカで独自の文化を築く先住民族のセミノールとの交流を通し、自らのすべきことを見出していく。監督:富田大智。

profile

武田一義(漫画家

たけだ・かずよし/代表作に『さよならタマちゃん』(講談社)、『ペリリュー 楽園のゲルニカ』(白泉社)などがある。

公式サイト:http://144takeda.blog.fc2.com/

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