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「実績あるから独立したら?」最終面接で役員の心の裏を読む質問にひるまず内定ゲットした"殺し文句"

  • 2022.4.24
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内定への最終関門である役員面接では、意図的に意地悪な質問を浴びせられることもある。どう返すのがいいのか。言葉のプロである、電通コピーライターの勝浦雅彦さんが転職時に「悔いなく言いたいことすべてを話し終えることができた実感がある」という渾身のセリフとは――。

※本稿は、勝浦雅彦『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)の一部を再編集したものです。

面接官たちの顔が逆光で見えない
※写真はイメージです
転職はマッチング「学歴優遇で選ばれる可能性は低下」

忘れるところでした。まかり間違ってこの章のタイトル(当初は「就活のための言葉」だった)だけを読んだ社会人に「え? 就活? これ大学生向けの本? 読みたくないや」と本を棚に戻すような拙速な行動をされないために、あとから「転職」の二文字を追加したのでした(かなり正直に書いています)。

これは、人生において3度転職した私の経験則ですが、転職は、就活よりも間口の狭いマッチングの場です。間口が狭い、とは選考にあたってかなり具体的な能力・スキルの突き合わせが行われるので、就活のように学歴優遇や勢いや雰囲気で選ばれる可能性は低下します。その分、中途採用を行う会社の求める人材像が明確なので、自分が当てはまらなければエントリー権すらありません。諦めもつきやすい。かなりイーブンな世界だといっていいでしょう。

時々、逆転劇も起こります。例えば、インターネット革命が起こる前、私の会社の新卒採用を受けたITに精通したある方は、面接官に「こんな箱(PC)で稼げるわけがないでしょ?」と言われたそうです。産業の黎明期にはありがちなことですが、その人は、IT系の会社に進み、やがてITブームの到来によって必要とされる価値あるスキルを得て、逆に弊社に請われ転職してきました。世の中の潮目はしょっちゅう変わるのです。

このように、学生時の就活で希望が叶わなくとも、自分という人材の価値がいつ最大化されるのか? それを設計しつつ時を待つ、というやり方があります。

大事なのは、就活の時に掘り起こした「自分がやっていて楽しいこと、少なくとも魅力を感じること」を仕事にすることです。その上で目指す組織がその延長線上にあるなら、機を窺ってスキルを伸ばしていくのがいいでしょう。やがてその業界で一目置かれる存在になった時、あなたが目指す会社にチャレンジするのも良し、そこまでの存在になったら独立してしまった方が何倍も報酬を得られることもあります。決して人生を点のみで捉えないでくださいね。

最終面接での質問にひるまず内定ゲットした“殺し文句”

私は今の会社が4社目です。といっても前職2社はグループ会社であり、最初に入った会社も同じ広告業界でしたから、決して突拍子もない転職をしたわけではありません。ただ最終的には学生時代から憧れていた今の会社でどうしても仕事をしてみたい、という気持ちを捨て切れませんでした。それは何度も寄せては返す波のように私を捉え続けました。

その目的のために転職を繰り返し、30代のほとんどを非正規雇用の不安定な立場で過ごすことになりました。東京の会社を辞め、九州に飛び込んで実績を積み、親の病気もあって再び東京に舞い戻り、目的地に向かって試行錯誤を重ねながら、リスクを承知で賭けに出ました(この話はいつかどこかで)。

何度も諦めかけたし、途中で「手段が目的化しているのではないか?」=「会社で何をやるのか、ではなく入社すること自体が目的になっていないか?」と悩むこともありましたが、「それが自分にとって大事なことなら、目的化しても構わない」と腹をくくって目的を完遂させました。

最終役員面接で、「これだけの実績があるなら、独立された方がいいのではないですか?」と聞かれた時、「その評価は大変嬉しいですが、御社を知らずして一生を終えたくないのです」と素直に言ってしまいました。それで合格が決まったわけではないでしょうけども、最後に悔いなく言いたいことすべてを話し終えることができた実感がありました。

勝浦雅彦『「伝わらない」は当たり前 つながるための言葉』(光文社新書)
『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)

面接官も人間です。就活・転職、どちらも最後は、人と人の会話ができたかどうかで決まるものだと信じています。

「あなたは最終面接に合格されました。ぜひとも入社していただけますか?」

ある冷え切った冬の夜、最終面接の結果が来ないことにやきもきしながら劇団四季の『ライオンキング』を観ていました。幕間まくあいに廊下に出ると私のケータイに不在着信が残されていました。心臓が高鳴る中かけ直した電話口でこう言われた時が、私の長い長い願いが叶った瞬間でした。遅かれ早かれ、いつかは私もこの会社から去っていきますが、この言葉を忘れることはないでしょう。

みなさんにもそんな瞬間が訪れることを願っています。しーんぱーいないさー!

勝浦 雅彦(かつうら・まさひこ)
電通 コピーライター・クリエーティブディレクター
法政大在学中に、シンボル校舎「ボアソナード・タワー」の命名者になり、学長表彰を受ける。新入社員時代に役員に直訴して、営業からクリエーティブに転局。まったく芽が出ず部署をクビになるが、東京を飛び出し不屈の精神でコピーを書き続ける。ある時「なぜ、人はつながりたいのか」に気づき、運命が好転。約10年間の非正規雇用期間を「言葉」で乗り越え電通入社。15年以上、大学や教育講座の講師を務 め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を行い多くの同志とふれあい、TV、雑誌、新聞等にも出演。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM最高賞、Cannes Lionsなど国内外の受賞多数。TCC会員。宣伝会議講師。法政大学特別講師。「つくる人の会(仮)」主催。初著書『 「伝わらない」は当たり前 つながるための言葉』(光文社新書)発売中。

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