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「古石場文化センター」で出会う、映画監督・小津安二郎の門前仲町

  • 2022.4.14
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小津橋

映画人・小津安二郎生誕の地、深川エリア

『東京物語』や『浮草』など、生涯を通して54本の作品を監督し(現存は37本と言われている)、ヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュをはじめ、世界的な映画監督にも影響を与えた映画監督・小津安二郎。

ゆかりの地は、三重県松阪、神奈川県鎌倉、長野県蓼科などが挙げられるが、江東区深川一丁目、清澄公園の近くの道端には「誕生の地」の看板が立つ。小津作品の下町情緒が垣間見られる深川地区。ここで生まれ育ち、映画人としてのキャリアを育んだのだ。

小津安二郎生誕の地 看板
小津安二郎誕生の地。江東区深川1-8-8。清澄通り沿いの歩道橋下にひっそりと看板が立つ。通りの向こう側にある明治小学校に通っていた。

門前仲町の駅から歩くこと10分ほど、賑やかな商店街を南に抜け、大横川を渡り住宅街に入ってしばらく歩くと、古石場川親水公園の遊歩道が東西に延びる古石場(ふるいしば)地区に入る。隣は木場や越中島に接するエリアだ。

小津橋
「小津橋」は肥料問屋を営んでいた本家が、荷物を運ぶために架けた橋。橋の両岸が本家の土地であったという。現在、周辺は古石場川親水公園として整備されている。

小津の貴重な資料が今も見られる

公園を東に歩いていると「小津橋」に差し掛かる。その目の前にあるひときわ高い都民住宅の下に、「古石場文化センター」はある。ここに常設展示されているのは、深川で生まれ育った映画監督・小津安二郎の貴重な資料の数々だ。

古石場文化センター外観
古石場文化センターのエントランス。図書館もある。建物の5階から上は都民住宅。
小津安二郎紹介展示コーナー入口
入館して左手すぐに、小津安二郎紹介展示コーナーがある。入場は無料。ここでしか見られない、施設所蔵の貴重な資料も多い。撮影禁止のパートも多いので注意。

まず、展示室に入って目に入るのは小津安二郎の生涯が分かる、詳細な年表。その下のガラスケースには、幼少の頃から上手だったという、本人が描いた絵や習字、作文が複数展示されている幼い頃の作品からも、モチーフの観察力や色遣いに、映画と共通する何かを感じる。これらも、他ではなかなか見られない貴重な資料だ。

小津が小学校の頃に描いた鳩の絵
鳩の絵。尋常小学校4年時の作品と思われる。細かく描き込まれている上に、表情もよく捉えている。
「菜の花と蝶の模様」の絵
同時期の「菜の花と蝶の模様」と題された絵。小津映画に出てくる着物の柄のよう。赤は当時からキーカラーだったのかもしれない。
戦時中にシンガポールで描いた水彩画
これは昭和18年、シンガポールに従軍した当時に、戦友に描いてプレゼントしたと言われる水彩画。

本人が実際に使用していた私物の数々が気になる

世界的に有名になった小津安二郎が、実際にどんなものを使っていたのか。どんなものを着ていたのか。実物や写真資料から知ることができる。本人が使っていた鉛筆や財布を見れば、物へのこだわりが見て取れるし、急に身近な存在に感じられるから不思議だ。

「ついたてが歩いているような人」と揶揄されたというだけあって、展示されている洋服を見ると、その大きさに驚く。さらに大きな志賀直哉と並んで歩く写真なども貼ってあり、いろんな発見が楽しい。

小津が着ていた洋服
小津安二郎が実際に着ていたというコートやジャケット。実際の身長は169.68cmという記録もある。

映画に関する資料もたっぷり

映画的な資料も多数所蔵している。たとえば、『秋日和』(1960年公開)をはじめとした映画の脚本や、シナリオに赤入れするための赤鉛筆。当時使われていた機材と同型のムービーカメラ、公開当時の映画ポスターや、映画内で使われた湯呑みなどが展示されている。

もちろん、深川エリアで撮影された作品の解説や、「小津安二郎と深川」という8分間の映像など、この地域を知ることができる、ならではのコンテンツも充実している。

当時使われていたものと同型のカメラ
当時使われていたものと同じ型のカメラ。ローアングルの映像が生み出された。

この施設では定期的に小津作品の上映会を開催。小津安二郎にまつわる書籍や、ここでしか買えないオリジナルグッズも販売している。オリジナルのイラスト地図「古石場文化センター周辺マップ」の無料配布などもあるので、そぞろ歩きしながら街を散策するのもおすすめだ。

オリジナルグッズ
左から、かわいい記念スタンプ(無料)。クリアファイル¥150。『東京物語』絵ハガキ¥100。

Information

古石場文化センター

コウトウクフルイシバブンカセンター
住所:東京都江東区古石場2-13-2
TEL:03-5620-0224
営業:9時〜22時
休:第1・3月曜日/年末年始

公式サイト:https://www.kcf.or.jp/furuishiba/

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