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Kan Sanoはいかにして、音楽をディグしているのか?音楽家としてのリスナー論

  • 2022.4.13
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Kan Sanoはいかにして、音楽をディグ しているのか?音楽家としてのリスナー論

毎週リリースする謎のアーティストを見つけられるサブスクの面白さ

発表されたばかりの新作『Tokyo State Of Mine』では、BTSのメンバーRMが注目する韓国の男女2人組ユニット“Dosii”など、豪華なゲスト陣を招聘。ジャズやソウルミュージックをベースにしたバックトラックに、日本語詞で歌われる甘美なメロディには、世界中のリスナーからの反応も熱く、2020年代の新しいスタンダードと考えるべき作品になっている。

そんなKan Sanoにここ最近の音楽の探し方、サブスクリプションとレコードの使い分けなどを聞いてみた。

「自宅でゆっくり音楽を聴くときはアナログレコード、車で移動するときはSpotifyなどのサブスクリプションで、新しい曲を聴いていることが多いですね。

30歳になった頃かな、古いジャズやソウルミュージックばかり繰り返し聴いて、新譜をチェックすることを忘れていたんです。そんなルーティンにも飽き、Spotifyで新しい曲やミュージシャンを探し、プレイリストを作ってシェアすることにしました。自分の中でルール化すれば、怠らないと思ったんですよね(笑)。

最初は義務的でしたが、どんどん掘っていくうち、次第に新しい音楽を聴くことが楽しくなっていきました。お気に入りの中には、例えば、オーティス・マクドナルドというミュージシャンのように、ほぼ毎週新曲をリリースしている人もいて。発表する曲が、また全部よくてびっくりするんですよね。

彼の楽曲や活動のエナジーから刺激を受けるし、子供の頃、月曜日に「週刊少年ジャンプ」が出るのを待ちわびる感覚を思い出したりして(笑)。サブスクの登場で、近年は音楽との距離がまた変わったと思います」

Kan Sanoとレコード

最近では、インターネットを通じて出合った音楽を、改めてアナログレコードで購入する機会が増えたという。

「サブスクが便利なことは間違いないけど、その一方で新しい曲がどんどんリリースされるため、いい音楽を見つけてもすぐに流れていってしまう。だから、なかなかアーティスト名が覚えられないでいますね。お気に入りの曲があっても、一度で名前を認識することができず、同じ人が何回か好みの曲を発表してくれて、ようやく名前を覚える感じです。

そんな曲を、移動中にプレイリストで繰り返し聴くうち、段々と曲やミュージシャンへ愛着を感じてきて、どうしてもレコードでも欲しくなってくる。フィジカルでのリリースをネット検索し、盤が出ているとわかると、やっぱり買っちゃうんですよね。サブスクで気に入った作品を、レコードでも買うという循環が、日常化しています」

Kan Sano
「新しい音楽をチェックするため児玉奈央さんや、音楽評論家の柳樂光隆さんのプレイリストをチェックしています」
Technics製のターンテーブル
ターンテーブルはTechnics製。
YAMAHAのスピーカー
スピーカーはYAMAHAのものを使用。デスクの下にはキーボードも。
マイカラーの赤で統一された楽器や家具、レコード
楽器や家具、レコードまでマイカラーの赤で統一。

ネットは狙い撃ち、レコード店は出合い

レコードの買い方にも、2年間のコロナ禍で変化があったという。

「レコードは、絶対にお店で買うことにしていました。しかし、ここ2年の間、なかなか外出することもできなかったため、仕方なくオンラインショップを使うことにしたんです。しかし、サブスクで出合った作品は、インディーズレーベルやミュージシャン個人で音源を管理していることが多く、レコードは予算の都合で数量限定発売されることが多く、すぐに売り切れる。カナダのバンド、メン・アイ・トラストのアルバムなんか、めちゃくちゃネット検索して、やっと買えました」

Kan Sanoとレコード
自宅に1000枚、アトリエには300枚のレコードがある。
Kan Sanoが最近購入した木製の箱
最近購入したという木製の箱で管理。

「店頭で購入する自分内ルールを守っていたら、手に入らなかった作品もあったと思うので、タイミングって不思議だなと思います(笑)。逆に、中古のジャズやソウルミュージックなどは、オンラインストアやオークションなどでは、少し高い気がするんです。最近は少し前に比べて外出できるようになってきたので、レコード屋さんへ行ってみると、オンラインに比べてすごく安い気がするんですよね」

Kan SanoのSpotifyのお気に入り
最近Spotifyの「お気に入り」に追加した楽曲。
Kan SanoとSpotify
「お店で流れていて気になった曲を、音楽検索アプリの“Shazam”で調べ、Spotifyの“マイ Shazam トラック”へ繋げて、すぐ聴けるようにしています」

実際にレコードを買う店を聞いてみたところ、音楽好きらしい答えが返ってくる。

「都内の場合は、ディスクユニオンが多い。渋谷や下北沢など、用事があるところに必ずユニオンがあるので、必ず立ち寄っちゃいますね。最近は遠方へ行くこともあります。中古レコードのタチバナ(横浜)、タイムマシーン(調布)のような老舗は、バークリー音楽大学へ留学していたときに通っていた、小さいけど、マイペースなレコード屋さんを思い出しますね。

それから、ライブで地方に行ったときに、ブッキング担当の方が気を使ってくれて、レコード屋へ連れて行ってくれるケースもあります。それと同時にレコードを扱っているリサイクルショップを回る機会も増えましたね。車で街道沿いを走っているとき、「すいません! あのハードオフに寄ってもらっていいですか?」ということもあります(笑)。サブスク経由レコ屋行きという流れができて、新旧問わず、まだ聴いたことのない音楽との出合いを楽しんでいます」

サブスクでは聴けない愛聴版

アーマッド・ジャマル『Rapsody』
バークリー留学時に手に入れたアーマッド・ジャマル『Rhapsody』(1965年)。
山下達郎『Ride On Time』
長年愛聴する山下達郎『Ride On Time』(1980年)は、10年以上前にハードオフで購入。
ネオソウル名盤である「adriana evans」
ネオソウル名盤である『adriana evans』(1996年)。

サブスク経由で手に入れたレコード

メン・アイ・トラスト『Men I Trust』
Spotifyで出合って買ったレコード。メン・アイ・トラスト『Men I Trust』(2014年)。
NYのミシェル『Heatwave』
NYのミシェル『Heatwave』(2018年)。
クルアンビン『Con Todo El Mundo』
クルアンビン『Con Todo El Mundo』(2018年)は児玉奈央さんのプレイリストで知ったお気に入り。

profile

Kan Sano

カン・サノ/日本語で歌われた珠玉のポップス&チルアルバム『Tokyo State Of Mine』を、4月27日にリリース。CD限定盤は、全曲のインストを収録した2枚組。レコ発ライブなど、詳しいスケジュールは公式HPへ。

Twitter:@kansano
Instagram:@k.an.s.an.o

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