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緩和方法は?原因は?「天気痛」について医師に聞きました!

  • 2022.4.11

「天気痛」というフレーズを聞いたことがありますか? 天気や気圧の変化で、体に不調を起こすことを言います。今回は「天気痛」について、医療法人社団藤和会「あんどう内科クリニック」院長の安藤大樹先生に伺いました。

天気痛とは何ですか?

天気や気圧の変化で頭痛やめまいを起こす「天気痛」、最近メディアでも取り上げられることが増えてきました。この病名自体は最近付けられたのですが、もともと「気象病」という名前で、1940年前後から知られている、意外に歴史のある概念なんです。もっとも、「天気が悪くなると古傷が痛む」なんてことは恐らく有史以前からあったはずですし、雨乞いで国をまとめていた卑弥呼や、雨の中の奇襲戦で桶狭間の闘いを勝利した織田信長なども、実は今で言う天気痛だったなんて説もあります。天気〝痛〟という名前なので、当然痛みの症状がメインになります。台風が近づくと頭痛が酷くなる、雨が降ると節々が痛い、梅雨時には肩こりや腰痛が酷くなる、寒暖差があると神経痛が強くなるといった痛みが出るのが多いのですが、痛み以外にもめまい、眠気、耳鳴り、気持ちの落ち込みなど、その症状が多岐に渡ることが、この病気の特徴です。つまり、「天気の変化や寒暖差で起こるさまざまな症状の総称」と考えると分かりやすいでしょう。

天気痛の原因を教えてください

その正体はズバリ「耳」です。正確に言うと耳の中の「内耳」という器官です。耳は大きく分けて「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分けられ、一番奥にあるのが内耳です。内耳は伝わってきた音を神経の信号に変える「蝸牛」とバランスを司る「前庭」や「半規管」からなり、これらの中は「リンパ液」という液体が入っています。天気痛で特に大切な部分は「前庭」と、そこから脳に繋がる「前庭神経」です。少し難しい話になりますが、気圧の変化が起こると前述したリンパ液が揺れて、前庭神経が興奮します。そうすると、すぐそばの三叉神経が興奮して神経伝達物質を放出、それに反応して脳の血管が拡張して炎症物質が放出され、頭痛が引き起こされます。

また、天気によって引き起こされる頭痛以外の症状(だるさ、肩こり、腰痛など)も、内耳が原因であることが分かってきました。前庭神経は前庭や半規管から送られてきたバランスの情報を脳に送るのですが、気圧の変化に伴う情報は実際のバランス情報と〝ズレ〟がありますので、脳が混乱してしまいます。この混乱で自律神経が乱れ、興奮した交感神経が全身の血管を収縮させて、血液の流れが悪くなります。その結果、全身の色々な場所に痛みやコリが出たり、もともと痛い場所がさらに痛くなったり、だるさやめまいなどが起きたりするのです。

天気痛の対策として、まず初めに何をすればいいでしょうか?

一口で「天気痛」と言っても、人によって起こるタイミングが違います。というのも、内耳は「大きな気圧の変化」よりも「小さな気圧の変化」に敏感で、その個人差が症状の出てくる時期の違いになります。対策の第一歩として、まずは自分がどういったタイミングで天気痛を起こすのかを知る必要があります。

例えば遠い熱帯地方の上空で台風が発生したとします。もちろん、まだ日本列島の天気には何も影響がありませんが、発生した段階から非常に微細な気圧の変化を日本列島にもたらします。天気の用語で「微気圧変動」と言うそうですが、従来から気象の分野では、特に重要視されていませんでした。ただ、敏感な内耳は、この変化すら拾い上げてしまいます。そのため、「頭痛やめまいが酷くなったら、案の定台風が発生していた」なんてことが起こる訳です。もちろん、台風が近づいてきての「直接的な大きな気圧変化」も問題になります。

また、一日の中にも気圧の微妙な変化が出ることがあります。太陽や月の影響で、昼間に大気が温められて日没後に冷やされることによって起こる規則的な気圧の変化を「大気潮汐」と言い、特に気圧低下が大きくなるのが3時と15時なんだそうです。実際、明け方に調子が悪くて救急外来を受診する方は多くみえますし、夕方近くなって体調が悪くなり、仕事を早退する人も大勢いらっしゃいます。

つまり、天気痛は内耳の過敏性によって「大きな気圧の変化」「微気圧変動」「大気潮汐」の3つのパターンで引き起こされる可能性がある訳です。自分がどのパターンに当てはまるかが分かっていれば、後述する対策も早めに始められます。

最近は気圧の変化から頭痛の起きやすい時期を予測してくれるアプリなんかもありますので、利用してみてもいいでしょう。

天気痛がきた時の緩和方法はありますか?

ポイントになるのは「内耳の血流を良くすること」です。そのためには、耳の周りの血流を良くする必要があります。というのも、耳のまわりの血行が悪くなると、内耳がむくんで過敏になり、天気痛を起こしやすくなるからです。内耳の血行をよくするには、耳の後ろにあるツボ(完骨)のあたりに、ホットタオルやカイロなどを当てたり、寒い季節にはニット帽やマフラーなどで、日頃からなるべく耳を冷やさないようにしたりといった、防寒対策も有効です。

さらに効果的なのは「耳マッサージ」です。耳と耳のまわりをもみほぐすことで血行がよくなり、内耳の状態改善に効果があります。簡単なのでぜひやってみて下さい。

(1)耳たぶを軽くつまみ、上・横・下にそれぞれ5秒ずつ引っ張る
(2)耳を軽く横に引っ張りながら、前と後ろそれぞれ5回ゆっくり回す
(3)耳を縦に折り曲げて、5秒間キープする
(4)耳全体を手のひらで覆い、周りの筋肉をもみほぐすように後ろに5回ゆっくり回す

ツボ押しも併用するとさらに効果アップ! 片頭痛に効く「関衝」(かんしょう:薬指の爪の付け根で小指側のくぼんだところ)、めまいやふらつきに効く「内関」(ないかん:手首のしわから肘の方へ指3本程度下がった中心部分)、幸せホルモン(セロトニン)の分泌を安定させ自律神経を整える「完骨」(かんこつ:耳の後ろの出っぱった骨の下側のくぼみ)などが有名です。押すときは「イタ気持ちいい」ぐらいの強さで5~10秒、3~5セット程度を目安にして下さい。

天気痛を引き起こさないために普段から取り入れたほうがいいことはありますか?

大切なのは「自律神経を整えること」です。自律神経は循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整するために、24時間働き続けている神経です。身体を活発に働かせるアクセルの役目をしている「交感神経」と、安静時や夜に活発になるブレーキの役割をしている「副交感神経」に分かれますが、この2つのバランスが崩れることが「自律神経の乱れ」です。天気痛で起こっていることは、主に「交感神経の暴走(アクセルの踏みすぎ)」ですので、対策のポイントは「副交感神経を働かせる(うまくブレーキを踏む)」ことになります。さまざまな方法がありますが、大切なのは「太陽が昇っている時はアクティブに、太陽が沈んだ後はリラックスして過ごす」ことです。

具体的には
• 毎日同じ時間に起きて、太陽の光を浴びる
• 毎日しっかり朝食を食べる
• 日中にウォーキングなどの有酸素運動をする
• ヨーグルトや納豆などの発酵食品で、腸内環境を整える
• ぬるめのお風呂にゆっくり入る
• 就寝時間を一定にし、質の良い睡眠を心がける

自律神経を整えるためには食事も重要です。ビタミンB1を多く含む豚肉、ウナギ、 ピーナッツ、枝豆などを積極的にとりましょう。また、貧血があると気圧の影響を受けやすくなるので、鉄分の多いレバー、 ひじきなどを、そして、鉄分の吸収を高めるビタミンCが豊富な小松菜、果物などと一緒にとりましょう。

天気痛には、漢方薬も有効です。内耳の血流を改善させる五苓散(ごれいさん)、柴苓湯(さいぼくとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、動悸やめまいが主体の時は柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、不安や憂うつ感が強い時は加味帰脾湯(かみきひとう)、イライラやのぼせを感じる時は黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などの漢方薬が有効です。最近は薬局の漢方薬も充実していますので、試してみる価値はあります。ただし、これはあくまでも補助的な対処法になります。いまいち効果の実感が持てない場合は、ぜひ医療機関で相談してみて下さい。

教えてくれたのは

出典: 美人百花.com

内科医 安藤大樹(あんどうだいき)先生

医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック院長。藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)卒業後、同大学病院研修を経て、同大学病院総合診療内科所属。2011〜2015年にかけて同院最優秀指導医賞受賞。岐阜市民病院総合内科を経て現職。岐阜大学総合病態内科学非常勤講師、藤田医科大学救急総合内科客員講師。「医療よろず相談所」をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリ・ケア医。「プライマリ・ケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニックはこちらから。

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