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ひとつまみで魔法をかける!いつもの料理が激変するスパイスの活用法

  • 2022.4.11
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個性あふれるスパイスをプラスすればおいしさの扉が開く

ペッパー、シナモン、コリアンダー、クミン、カルダモン、ターメリック……。料理に風味をプラスしたり、素材のくさみを消したりする“縁の下の力持ち”として愛されてきたスパイスが今、新しい「おいしさ」の扉を開くキーアイテムとして、表舞台でスポットを浴びつつあります。

「スパイシーなエスニック料理に使うもの」というイメージがまだまだあるかもしれないけれど、固定観念を捨てていろんなものにプラスしてみれば、マンネリになりがちな日々の食卓がワクワクするような驚きと感動に満ちたものになるはず。
そこで今回はフードデザイナーの中本千尋さんに、スパイスを日常的に活用するためのヒントと初心者向けレシピを教えてもらいました。

個性あふれるスパイスで、料理をよりクリエイティブに

最近はスパイスカレーを筆頭に、スパイスの持ち味を前面に押し出したメニューが、若い女性を中心に大人気。焼き菓子やジェラートなどのスイーツにもマニアックなスパイスが効果的に使われていて、「独特の風味やクセがおしゃれで新しい!」と魅了される人が続出しています。

オリジナルのスパイスを開発するなど、スパイスマスターとしても知られるフードデザイナーの中本千尋さんも、その魔法に魅せられたひとり。きっかけはフードデザイナーとして独立した直後、間借りカレーの店を始めたことでした。

「最初はひとりで店をするなら、事前に仕込んでワンディッシュで提供できるカレーがいいな、ぐらいの気持ちで始めたんです。でも、実際にカレー屋さんをやってみて、スパイスって想像以上におもしろいと気づきました。単独でもそれぞれにユニークな個性があるのですが、組み合わせることでさらに新しい個性が生まれて……。同じ材料を使ったカレーでも、つくる人のさじ加減でまったく違うものになる。使う人のセンスや個性がダイレクトに出るのがおもしろくて、スパイスってこんなにクリエイティブなものなんだ!って感動しました」

中本さんとスパイス
「スパイスは使い方によっては主役以上のインパクトを放つんです!」と中本さん。料理学校の講師経験もあり、料理はオールジャンル、なんでもござれ。だからエスニックや中華、フレンチやイタリアンだけでなく、和食にもスパイスをよく使っているそう

中本さんにとってスパイスのいちばんの魅力は、自分だけの個性やセンスを手軽に発揮できること。そして、その日の気分や体調によってアレンジを楽しめること。

「たとえば市販のバニラアイスでも、思いつきでブラックペッパーをひとふりするだけで特別感のあるシャレたデザートになるし、『この人センスあるな』と思わせることができます(笑)。また、料理をおいしくするだけでなく、効用が期待できるのも魅力。今日は冷えるからジンジャーを多めに入れて体を温めようとか、ちょっとリフレッシュしたいから清涼感のあるカルダモンを加えようとか、同じメニューでもスパイスの配合を微妙に調整しながら、体や気持ちの変化を感じられるのも実験みたいでおもしろいんです」

つくる人が感性のひらめくままにアレンジして、心身とのつながりを体感できる。そんな自由さと奥深さが、スパイスの魅力のようです。

中本さんが開発したオリジナルブレンドスパイス
スパイス愛が高じて、中本さんが開発したオリジナルブレンドスパイス。「その日の気分で使い分けてほしいから、曜日の名前をつけました」。(左から)マイルドな風味の「SUNDAY」、ベーシックな「MONDAY」、中国山椒の香りと辛味が効いた刺激的な「WEDNESDAY」。いずれもカレーなどに使うのはもちろん、肉や野菜のソテーにかけたりとさまざまに活用できる。 dishes-spice.com で購入可

固定観念を捨てて、まずは好きなメニューにちょい足し!

ブームに乗ってスパイスをそろえてみたものの、うまく使いこなせずキッチンに眠っている……という人も多いはず。どうすればスパイスを日常的に使うことができるのでしょう?

「シナモンは甘い料理に合う、ナツメグはひき肉料理に使う……といった固定観念を捨てて、凝った料理ではなく、まずはふだん自分がよくつくる料理に少しだけ加えてみる。そうするとスパイスって実は、どんな料理にも気軽に使えるということに気づくと思います」

例えばトマトソースを煮込むときに塩と一緒にクミンを加えたり、焼き菓子の生地に香りづけとしてクローブを足したり、野菜のバターソテーの仕上げにナツメグをふってみるなど、ちょい足しから始めてみるとスパイスの個性や相性がつかみやすいそうです。

スパイスの瓶
スパイスの保存は高温多湿を避けるのが基本。「容器は湿気を通しにくく香りが移りにくいガラスの密封瓶が最適。アクリル瓶やビニール袋に入れると湿気やすく品質が変わる可能性があるので、長期保管には向きません」。保存場所は冷暗所がおすすめ。意外と湿気の多い冷蔵庫内や、熱で変質する恐れのあるガスコンロの近くは避けた方がいいそう

「新しいスパイスを買わなくても、家に眠っているスパイスがあれば、まだまだ使えるので捨てずに活用してほしい」と中本さんはいいます。「スパイスって実は厳密な消費期限がないといわれています。ただ長期間放置していると、香りが消えていたり湿気たりしていることが多い。そんなときはフライパンに油を引かずにスパイスを入れて、弱火で数分間空いりしてあげると余計な水分が飛んで香りもよみがえりますよ」

購入する場合は、スパイス専門店を利用すると新鮮なものが安く手に入るそう。中本さんはいつも「神戸スパイス」や「香辛堂」といった専門店の通販を利用しています。「特に『香辛堂』はひきたてのものが少量から買えるので、いきなり大袋を買うのは不安というビギナーにぴったりです」

スパイス入門におすすめ、アレンジ無限大の「スパイスナッツ」

とはいっても、ふだんから料理をあまりしない人には、気軽に使うこと自体ハードルが高いもの。もっと簡単にトライしたい人に中本さんがおすすめするのが、市販のミックスナッツを使った「スパイスナッツ」です。

「あらかじめローストしてあるミックスナッツを使えば、フライパンひとつで数分あれば完成します。どんなスパイスでもできますが、今日は台湾料理でおなじみの五香粉(ウーシャンフェン:花椒、クローブ、シナモンに、スターアニスやフェンネルなどを加えたミックススパイス)でつくってみましょう」

スパイスナッツ作り方
鍋かフライパンに砂糖20gと水小さじ1を入れて火にかけます。砂糖が溶けてグラグラと沸いてきたら、市販のミックスナッツ100g(有塩、無塩どちらでも。無塩の場合は塩を1g足す)と、五香粉などのスパイス小さじ1を入れて混ぜます。水分がなくなり砂糖が全体に絡まったらバットなどに移し、冷めれば完成!

ルーロー飯か台湾風唐揚げぐらいしか使い道が思い浮かばなかった「五香粉」が、まさかミックスナッツに合うとは! 「甘じょっぱい味に異国情緒漂う独特の風味が絶妙にマッチして、おやつにもお酒のおつまみにもぴったり。後引くおいしさで、ひとつ、またひとつ……と食べているうちに、いつの間にかお皿が空になっている危険なヤツです(笑)」

スパイスナッツ
スパイスナッツは材料もつくり方もシンプルなだけに、スパイスの風味がダイレクトに楽しめます。五香粉のほか、七味唐辛子やカレーミックス、シナモン、ブラックペッパーなど、スパイスを変えればアレンジは無限大。自分だけのオリジナルフレーバーを開拓してみて

ひとさじのスパイスで、スペシャルなティータイムも!

調理や味変だけでなく、実はドリンクにもスパイスは大活躍します。飲みものに使う場合は、飲んだときの粉っぽさを避けるため、粉に加工されていない原形の「ホールスパイス」を使うのがおすすめとか。

「コーヒー豆と同じで、あらかじめひいて粉になったスパイスは便利だけれど、そのぶん風味も飛びやすいんです。チャイの場合は特にパンチの効いたスパイス感を楽しみたいので、使う直前にホールスパイスをすりつぶすのがいいです。すり鉢などでつぶすだけなので意外と簡単だし、何より香りのフレッシュさに感動しますよ」

使う直前にすりつぶす
使う直前にすりつぶすというひと手間で、香りもおいしさも格段にアップするホールスパイス。「スパイスをすりつぶす作業も無心になれて楽しいし、手元から香りが立ち上がってきて癒やされます」

では、中本さんのイチオシ、スパイスの鮮烈な風味がたまらない「スパイスチャイ」のつくり方を教えていただきましょう。用意するスパイスは、カルダモン、クローブ、シナモン、あればブラックペッパー、フェンネル、そして生の生姜かジンジャーパウダーを加えれば、より複雑で重厚なハーモニーが楽しめます。

スパイスチャイ作り方
(2人分想定)カルダモン5粒、クローブ3粒、シナモン1本、ブラックペッパー5粒、フェンネル10粒をあらかじめすりつぶしておきます。鍋に水200ccを沸かして、その中にすりつぶしたスパイスと、スライス生姜1切れ(なければジンジャーパウダー少々)を入れて、中火で2〜3分煮出します。水が茶色く色づいて香りが抽出されたら、アッサムの茶葉大さじ2、砂糖大さじ1、牛乳400mlを入れます。そのまま煮込んで、沸騰したら火を止めて完成。茶こしでこしながらティーポットかカップに注いで召し上がれ

カルダモンの清涼感、クローブの芳香と舌がしびれるような刺激、シナモン&フェンネルのエキゾチックな甘味、ブラックペッパーのピリッと個性的な香りが濃厚なミルクティーと複雑なハーモニーを奏でて、クセになるおいしさ! 「しっかり煮出して、水にスパイスの香りを移すのがポイント。使う茶葉はミルクの風味に負けないアッサムがおすすめ。アッサムティーの半量をほうじ茶にすると、また風味が変わって楽しいですよ」

ホットはもちろん、春夏はアイスでも
ホットはもちろん、春夏はアイスでも。「アイスで飲む場合は、スパイスを入れたままにして冷ませば、氷を入れても風味が薄まりません。またおうちにコーヒー豆があれば、ひとつまみプラスするアレンジもおすすめ。スパイスと一緒につぶして、チャイのつくり方と同じようにスパイスと共に水で煮出し、茶葉と牛乳を加えるだけ。牛乳くささが抜け、コクが出ておいしいですよ」

スパイスチャイのほか、ティータイムに気軽にスパイスを楽しみたいなら、煎茶や紅茶に好きなスパイスを加えてお湯で抽出するだけでも、いつもとは違う新感覚の味わいが楽しめるそう。「スパイスの香りがよく立ってほっと癒やされます。合わせるお茶菓子も、市販のチーズケーキにカルダモンパウダーをかけたり、ガトーショコラにシナモンやブラックペッパーをふったり、スパイスをちょい足しして冒険してみると、日常のおやつタイムにぐっと刺激や彩りが生まれますよ」と中本さん。

いつもの味にひとふりするだけで未知の感動をもたらしてくれる「スパイスの魔法」、今日からあなたも試してみませんか?

スパイスティー
最後に、花粉に悩む季節にぴったりなスパイスティーもご紹介。「春先に私がよく飲むのはカルダモン煎茶。ポットで煎茶を入れる際に、つぶしたカルダモン3〜4粒を加えるだけ。独特の清涼感で、鼻詰まりの改善が期待できそうです。さらにミントやレモングラスなどのフレッシュハーブをプラスすると、優雅な気分も味わえますよ」
PROFILE
中本千尋

フードデザイナー

大阪出身。フレンチレストランや料理教室、短大の調理師学科のアシスタント講師などを経て独立。間借りのスパイスカレー店を営んだ後、現在は食から日々の暮らしを提案する「Dish(es)」主宰として、ケータリング、ワークショップ、フードコンサルティング、レシピ・商品開発や動画配信などを積極的におこなう。スパイス料理を得意とし、スパイスの魅力を伝える「Dish(es)Curry」としても活動。

Instagram:https://www.instagram.com/chihiro_nakamoto/

CREDIT

取材・文/井口啓子 編集/乾 純子(Roaster) 撮影/藤井由依

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