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アンチョビという安心。平松洋子「小さな料理 大きな味」Vol.44

  • 2022.4.8
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小さな料理 大きな味 44

アンチョビという安心

いざというとき大きな助けになってくれる缶詰なのに、小さなお荷物になってしまうときがある。もちろん自分のせいで。

忙しくて買い物に行けないとき、時間がないとき、手早くすませたいとき、非常時の備えにも絶大な力を発揮してくれる缶詰だから、買い置きは欠かせない。いっぽう、うっかりすると手つかずのまま。そんなときがありませんか。わたしはときどき缶詰の渋滞を引き起こしてしまい、そのたびに(ああまたやってしまった…)と反省しながら、あわててお荷物の解消に走る。

アンチョビの缶詰もそのうちのひとつだ。アンチョビは、カタクチイワシの塩漬けをオイルに浸して缶詰にしたもの。長期保存が利くし、うまみのかたまりのような素材だからこのうえなく使い勝手がいいのに、ふと気づいたら、まとめ買いした数個が棚の片隅でじっと身動きできないままになっている。好きな素材なのにどうしてかなと首を捻りながら、思う。たぶん缶詰という存在に安心しすぎて甘えているんだろう。

そういうとき、急いでつくるのがアンチョビソースである。プルトップのふたに指を掛けながら思うのは、5分もあればすぐできるし、とても便利なソースなのにもったいなかったな、ってこと。

【材料】
アンチョビ(フィレ)一缶分(約40g)
にんにく2片
タカノツメ1/2本
オリーブオイル大さじ4

【作り方】
①缶詰の油を切ったアンチョビ、にんにくを細かく刻む。
②小鍋に全部の材料を入れ、弱火にかけてふつふつ煮ながら、軽く潰す。
③粗熱が取れたら、保存容器に移す。

無敵のソースです。スパゲッティでもショートパスタでも、ゆでたてにかけて和えれば文句なしにおいしいパスタのひと皿ができるのだが、もちろんそれだけではない。

ゆでたじゃがいもに混ぜて、アンチョビ風味のポテトサラダに。
キャベツ炒め、もやし炒め、ピーマン炒めの味つけに。
豚肉のソテーの仕上げに。
蒸したブロッコリ、カリフラワー、にんじんのソースに。
ゆで卵に添えて前菜に。
トーストしたバゲットに塗って、おつまみに。
炒飯の香ばしい味つけに。

…あれこれたくさん。ごぼうや大根、春菊にもよく合うから、冬野菜の盛り立て役にもなる。

ゆうに2週間は保存できる。アンチョビソースの万能ぶりを堪能しながら、いやあやっぱりすごいな、と感心する。だからアンチョビの缶詰は欠かせない。

GINZA2022年1月号掲載

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