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原材料高騰とは関係なく、あえて「値上げ」する店があるって本当?

  • 2022.4.4
原材料の価格高騰に関係なく、あえて値上げ?
原材料の価格高騰に関係なく、あえて値上げ?

さまざまな食品や生活用品の値上げラッシュが続いています。そのほとんどは、「原材料の価格高騰を企業努力では吸収できなくなった」という理由です。しかし、原材料などコストの価格高騰に関係なく、あえて値上げを行うケースもあるそうです。これは本当なのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

客層の再構築が目的

Q.コスト増ではないのに、あえて値上げを行うケースがあるというのは、本当のことでしょうか。

大庭さん「本当のことです。例えば、大行列のできる繁盛店が挙げられます。こうした店では、同業他店との差異化を行わなければ、既存客に飽きられてしまい、淘汰(とうた)される可能性もあります。そのようなリスクを避けるため、商品やサービスの価値向上とセットにした値上げを行う繁盛店があります。

さらに、もともとの品質を維持することを前提に、価格面で同業他店との優位性を保てる範囲内で値上げを行い、収益向上を実現する繁盛店も存在します」

Q.日本でかなり行われていることなのでしょうか。

大庭さん「飲食店を中心とした小売り・サービス業で、コスト増が理由ではない戦略的な値上げが行われています。

例えば、カレーチェーンの『カレーハウスCoCo壱番屋』では、カレーのトッピングを充実させることをセットにした値上げの実施で、営業利益を増加させた実績があります。

さらに、低価格ヘアカット専門店チェーンの『QBハウス』では、店舗の好立地や高いレベルのカットスキルという付加価値を保った状態で、一般的な理美容店のカット料金より安い価格帯の範囲内で値上げを行い、売り上げを増加させた実績があります」

Q.一般的に値上げをすると、客は離れることが多いです。それにもかかわらず、なぜ、あえて値上げを行うのですか。

大庭さん「企業は、顧客満足度を高めながら自社の売り上げや利益を最大化させることを追及しています。その目的のために、あえて特定の客離れが生じることを承知で、値上げを行う場合があります。

例えば、客単価の高い常連客がいる店が有名になり、新たに来店するようになった客層に、低い客単価で長居をする客が増えることがあります。その場合、値上げを行い、低い客単価で長居をする客が来店しづらくすることで、元々いた客単価の高い常連客の満足度を向上させ、業績の向上や経営の安定化を実現させることがあります。

このように、客層の再構築を行う目的で、客離れが起きることを前提とした値上げを行うケースは少なくありません」

Q.とはいえ、客を絞り込むために「値上げ」をするということは、特定の客を締め出すことでもあります。仕方がないことなのでしょうか。

大庭さん「客によって、モノやサービスの消費に対して重要視する価値観は異なり、価格を重要視する客もいれば、品質や雰囲気などを重要視する客もいます。そのような価値観の相反する客層が入り交じる状態が発生してしまうと、双方の客層の満足度が低下し、その結果、双方の客層から客離れが起こるという店側にとって最悪の結果が生じてしまうことがあります。

客層が安定化することは、施設や店の経営の安定化につながることなので、客を絞り込む、すなわち、施設や店にとって歓迎したい客層を囲い込むために値上げを行うのは、経営の視点からすると当然の対応ではないでしょうか」

Q.値上げに不満を感じた客の中には、もう二度と訪れない人もいると思います。そうしたデメリットも仕方がないのでしょうか。

大庭さん「先述したように、世の中にはモノやサービスの消費に対する価値観の相反する客層が存在します。そして、全ての客層を等しく集客しようとすることは、施設や店の経営の不安定化を招きます。

それに対して、施設や店は、安定化、固定化させたい客層を明確にした上で、そのような客層の満足度を高めていく必要があるのです。そのために行う値上げで、一定数の客が訪れなくなるデメリットも生じますが、経営の安定化や永続化という大きなメリットにつながるので、施設や店にとって有意義な対応です。

もっとも、安定化、固定化させるべき客層を逃がすような値上げであってはならないことは、言うまでもありません」

オトナンサー編集部

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