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札幌の誇れる場所がここに。D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KGが15年で築いた店のかたち

  • 2022.4.1
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冷え切った寒さのなか、あたたかい時間に包まれた。

東京に本部があるD&DEPARTMENT(以下、D&D)が札幌で織りなす店には、北海道立近代美術館からの帰り道や仕事終わりに、ほっと一息つけるひとときを過ごす大人たちの姿がある。休日には、愉しげなBGMが響く。店の上階に佇むえほんとおもちゃの専門店<ろばのこ>で、子どもと大人が戯れる様子が店内の雰囲気をぐっと明るくしているのだ。

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D&D HOKKAIDOの店舗運営を担う「3KG」高野知子さん

まさに、子どもも大人も分け隔てなく、様々な人が交差する空間は、札幌のD&Dらしさといっていいだろう。D&D HOKKAIDOの店舗運営を担う高野知子さんにお話しを伺うなかで、そう確信した。高野さんは、札幌のデザイン会社<3KG>の一員として、2007年にD&Dのフランチャイズ一号店をスタートするにあたり、物件選びから店づくりに至るまで携わってきた。

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店は3階建てビル<庭ビル>の1階にある。15年間一貫したスタイルで、D&Dがセレクトした日用品雑貨や家具を販売。それに加えて、北海道の職人が手がけるプロダクトが並び、隣にはカフェやレコード屋<Oven Universe>、札幌で25年続くアジア雑貨と洋服の店<cholon>が併設されている。札幌で紡がれてきた文化とわくわくがぎゅっと詰まった場所だ。

どこも同じではつまらない。地域の特色にあわせた店づくり

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D&Dは直営店も含め国内外に店があり、共通したテーマに「ロングライフデザイン(長く作られ、使われ続けることができるもの)」がある。高野さんによれば、店を始めた当初は、北欧のデザインに憧れをもつ人も多く、地元のものが人々に定着するのは時間がかかったという。

高野:世の中の流れの変わりようは実感しますね。だれも見向きもしなかったものが、ここ5年くらいで地元のものに対して関心を持つ人が増えてきた。

北海道においては、伝統工芸の地図から外れていて。織物や焼物の文化が根付いている地域とは違って、昔から築かれてきた工芸品が少ないんです。一方で、北海道には人々の生活を支えてきた第一次産業の歴史がある。そうして私たちが注目したのは、旭川にある<高橋工芸>の木工クラフト。50年以上にわたり受け継がれる技術が生んだ「kamiグラス」は、開店初期から販売し続けてきました。

ー 食のトレーサビリティー※ はあるけど、木にはない。つくり手の想いや、ものが作られる過程を大切にして、販売に繋げているところがすごいです。

高野:最初は「紙」のように薄い木製グラスがあまりにも新しすぎて、初めて見た人は驚きもしないというか。「なんで木なの?そもそも木?」って反応に困ってました。笑 商品に対して理解を深めてもらおうと、店でイベントを開いて職人さんに作業工程の一部を実演してもらったり、併設しているカフェで木の器を使えるようにしたんです。そうしたら、徐々に良さを認識してもらえるようになりましたね。

(※食のトレーサビリティー:商品の生産から消費までの過程を把握すること)

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「世の中が追いついてきた。」

それは、Kamiグラスの販売を通して、高野さんが感じた変化。生活のなかで取り入れるものの見方や扱い方への理解が深まっていると、高野さんは実感した。ロングライフデザインに根付いた店を続けてきたからこそ、奥深さを感じる言葉だ。

D&D HOKKAIDOの特徴はそれだけではない。店がある庭ビルでは、3KGをはじめ、他の店が一体となって<niiiwaしんぶん>を毎月発行している。niiiwaしんぶんは、子どもたちに向けて作られた新聞で、周りで起きていることや新しい発見を発信している。

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niiiwaしんぶんはD&D Hokkaido店内またはオンラインで購入可能

子ども向けと言いながら、大人の方が楽しく読めてしまうのがこの新聞のおもしろいところ。特に2021年4月号の「トイレ」に纏わる記事は、子どもがとっつきやすいテーマでありながら、語りは奥が深い。排泄物の循環、それにかかるトイレの仕組みと未来について大人たちが真剣に綴っているのだ。

そんな、大人が楽しめる子ども向けのniiiwaしんぶんには、こう書いてある。 「私たちの社会には子どもが必要」

もしかしたら、ここで言う「子ども」は子どもだけでなく、「大人も真っ直ぐな子どもの心に還ろう」ということなのかもしれない。

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庭ビル2階に佇む、ろばのこ。

子どもも大人もみんなで共有できる空間とロングライフデザインを兼ねた店は、どの店にも染まらない、D&D HOKKAIDOだった。ぜひ、足を運んでみてほしい。あなたにとって、札幌で誇れる場所がまたひとつ増えるかもしれません。

writing|Haruka Asari instagram|@nilamekko edit|なべ子(sitakke編集部)

<取材協力> D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KG 〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西17丁目1-7 instagram|@d_hokkaido

D&DEPARTMENT PROJECT(ディアンドデパートメントプロジェクト)は、2000年にデザイナーのナガオカケンメイによって創設された「ロングライフデザイン」をテーマとするストアスタイルの活動体。現在は国内外に12店舗を構える。

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