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仕事が続かない男と恋が続かない女。キャラの魅力に引き込まれる「ゴールデンラズベリー」

  • 2022.3.19

アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバル・「文化庁メディア芸術祭」。世界95の国と地域から応募された3,537作品の中から、部門ごとに大賞、優秀賞、ソーシャル・インパクト賞、新人賞、U-18賞を選出される。

その第25回マンガ部門の大賞に選ばれたのが、持田あき『ゴールデンラズベリー』だ。

高学歴・高収入・高身長なのに恋愛経験がほとんどなく、仕事も長続きしない......。そしてなんやかんやで転職を24回繰り返した32歳の男・北方啓介。芸能プロダクションに入社し「今度こそ」と意気込むが、期待していた新人にすらデビュー当日に逃げられ自暴自棄に。そんなとき出会ったのが、美人なのに恋が長続きしない21歳の女・吉川塁。彼氏との同棲解消の場面ですら何事にも動じない、その姿勢と瞳の強さに魅入られた啓介は彼女をスカウトすることに――。

本当は「死ぬほどおもしろい仕事がしてみたい」と望む啓介と、一度でいいから誰かに本気で選ばれたかった塁。似た者同士のふたりが交わす会話は、まるでお互いに自分に言い聞かせているようなところがある。

「毎回最初は頑張ろうとするんですけど 途中でいっつも疲れちゃって 人からもよく最低だって言われます。」
「君も何か違ったんだろ 俺もいっつもそう 何か違うのに進めないよな しぶとくしつこく探し続けてたら いつかきっと見つかるさ」

芸能人とそのマネージャーとして、初めて何かに真剣に取り組めるチャンスに出会った2人は、デビューという目標を共有し進んでいく。

恋愛関係になりそうでならない2人のギリギリの関係性。自分でキャリアを築かなければならない就職事情のなか陥る迷いや不安。人間関係が希薄になり真に自分だけを必要としてくれる人を求めずにいられない孤独感など、現代の若者が抱える不安を見事に描き出す。

文化庁メディア芸術祭のウェブサイトには、おざわゆきさんによる贈賞理由が掲載されている。

「本作はキャラクターの魅力がずば抜けていた。強いメンタリティと常識にとらわれない感覚を持つヒロイン吉川塁の、達観したようなそれでいて真摯な瞳は読む者の心を射抜く。恵まれた容貌から発せられるセリフは自虐でも自惚れでもなく、新鮮で清々しい。彼女に魅了される器用貧乏のマネージャーとのやりとりは、従来のジェンダーの役割を超えたところでの恋愛の新しい形を提示してくれる。大賞に推した理由としては、こうしたキャラによる作品の圧倒的な勢いだ。テンポの良さと隙のないハッタリ、それに付随する高い画力。乗り心地の良いジェットコースターに、審査をしながらワクワクが止まらなかった。芸能界という華やかな業界ものにキラキラした美麗な男女、そこに「今時の女性マンガ」という判を押そうとする我々の価値観は一読で押し流されるだろう。本作が新しい女性マンガの先駆となることによる、女性マンガジャンル全体の再認識と幕開けの期待も込めて大賞の授与とする。」
出典:文化庁メディア芸術祭

人生の道に迷っている人、迷った経験のある人におすすめの一冊。

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