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ミカン8個で20万円!「初競り」の超高値、採算取れるの?高額落札の意味は?

  • 2022.3.13
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最高値8個20万円となった佐賀県産ミカン「にじゅうまる」(2022年3月、時事)
最高値8個20万円となった佐賀県産ミカン「にじゅうまる」(2022年3月、時事)

佐賀県産のミカン「にじゅうまる」が3月3日、今年の「初競り」にかけられ、8個(約3キロ)入り1箱が最高20万円で競り落とされたとの報道がありました。佐賀県がおよそ20年かけて開発した新品種で、貯蔵施設で約2カ月間保管するなど、手のかかったミカンではありますが、それでも1個当たり2万5000円は、ミカンとは思えない高値です。初競りといえば、東京・豊洲市場でも毎年1月上旬、マグロの初競りでの高値が話題となります。こうした初競りでの高値は、採算が取れるのでしょうか。また、どんな意味があるのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

差額は宣言広告費、市場・地域の活性化にも

Q.主に魚市場の初競りで、高級魚の高値が話題になる印象があります。時に採算度外視の競り落とし価格のようにも思えるのですが、採算は合っているのでしょうか。また、こういった現象は、どういった魚市場、あるいは魚種で見られますか。

大庭さん「『初競り』というのは一般的に、卸売市場においてその年の最初に行われる競りのことをいい、通常とは異なる高値がつけられることが多くあります。また、特定の産品ごとにシーズン最初の競りを『初競り』と呼ぶこともあります。

それに関しては、初物であるがゆえに品質が良い、あるいは価値があるという理由から、小売り段階で高額販売を行うことができることにより採算の合うケースもありますが、採算が合わないことを承知の上で、高値で競り落とすケースも存在します。

このような高値での初競りは水産物市場で多く見られ、中でも、マグロやブリ、カニといった、水揚げ地域によるブランドが存在する水産物に関しては、高額な取引が行われることが多いです」

Q.魚以外でも、初競りの高値が話題になることは多いのでしょうか。

大庭さん「青果に関しても、高値での初競りが見られます。これに関しても、水産物と同様に、ブランドが存在するものが高値の対象となることが多いです。

夕張メロンや高級スイカ『でんすけすいか』などが代表的な例であり、佐賀県産のミカン『にじゅうまる』が1箱8個入りで最高20万円という高値で競り落とされたというのも、同様の理由によるものでしょう」。

Q.採算が合っていない場合、どういった狙いで競り落としているのでしょうか。

大庭さん「特定の事業者が市場を盛り上げるための『ご祝儀相場』として採算度外視の高値で競り落としているケースもありますが、基本的には、宣伝広告の目的で高値での競り落としを行っています。

初競りは日本の風物詩であり、特定の事業者が高値で競り落としたことがニュースや報道番組で報じられることが多いです。そうなることで、その事業者が世間からの注目を浴び、当該事業者が営む店などを利用する客が増えます。

すしチェーン店が初競りでマグロを高値で競り落とす、スーパーマーケットが初競りで青果類を高値で競り落とすというようなケースが該当します。すなわち、通常価格との差額部分を『宣伝広告費』と考えているのです」

Q.高値の競りがあることは、市場や地域(地元の漁業、農業)にとって、どのような影響があるのでしょうか。

大庭さん「高値での初競りが行われることによる市場や地域へのメリットとして、次のことが考えられます。

市場に関しては、高値での初競りが風物詩のような存在になることで、当該市場と取引を行う生産者や卸売業者の数を増やし、あるいは定着化させる効果が生まれ、今後の活性化につながっていきます。

地域に関しては、高値での初競りが世の中に報じられることで、地域やブランドの存在が広く知れ渡り、今後の地域産業の活性化につながっていきます」

Q.ちなみに、豊洲市場のマグロ初競りは、高値とはいえ、ピーク時に比べると、価格は下がっているようです。コロナ禍の影響があるのでしょうか。

大庭さん「2019年の初競りでは最高値が3億3360万円、2020年は1億9320万円という金額で取引されたマグロですが、コロナ禍の2021年は最高値が2084万円と大幅に落ち込みました。

これに関しては、新型コロナウイルスによる外食産業の低迷や自粛ムードの広がりによりマグロの消費が落ち込み、それによって卸売価格自体が下落したことが最大の原因であると考えられます」

Q.こうした価格競争は下火になっていくのでしょうか。それとも再び盛んになるのでしょうか。

大庭さん「高値での初競りの対象となっている水産物や青果に関しては、インターネットなどを活用した生産者と消費者が直接取引を行う形態も見られますが、生産者に関する販売の効率化やプロによる目利きなどの重要な要素をカバーするため、今後も卸売市場を通じた取引は続いていくものと思われます。

そういった中、高値での初競りは、生産者地域や市場、小売業者の知名度や集客向上を生み出す効果もあるため、このまま下火になることはないと思われます。新型コロナが収束し、インバウンドや外食への需要が回復すれば、再び盛んになるのではないかと、個人的には考えています」

オトナンサー編集部

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