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コレクター・宮津大輔に聞く、アート収集のはじめ方。アートは、より豊かな視点で世界を知る“窓”になる

  • 2022.3.12
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磯村暖、海野林太朗《Sculpture 1 for Agitators' Dreams or Floating Signages》

同時代を生きるアジアの若手作家に注目。

「なぜ収集するか、ですか?アートは、より豊かな視点で世界を知る“窓”になるからです」
現代アートの世界的なコレクター、宮津大輔さんはそう語る。

「これからはじめるなら、今後の国際的活躍が楽しみな若手現代アーティストの作品を買ってはどうでしょう。注目は日本を含めたアジアの作家。
最初は飾りやすい平面作品がいいと思いますが、比較的廉価な映像作品もおすすめです。例えば台湾のロー・イーチュン。ファニーだけどアイロニカルなアニメーションは、僕も気に入ってます」

アジアの若手に注目する理由は2つ。欧米の作家に比べて買いやすい価格と、世相を見る“窓”としての面白さだ。

「そもそも現代アートとは何か。僕は同時代性を帯びた作品が真の現代アートだと思う。そこには、背景にある国の文化や政治の“今”が、スマホのニュースとは違う形で表れます。
日本と似た点/異なる点が混在するアジア諸国、そして日本の今を、翻訳不要のビジュアルで感じられるのは現代アートならでは」

アートコレクター・宮津大輔
《無限の網》草間彌生 1965年 ©YAYOI KUSAMA

ではそんな“窓”を、初心者はどこで選べばいい?

「初めての人にこそ、世界最高峰の作品が集まる国際アートフェアを強く薦めます。今はライブ配信やウォークスルー形式での閲覧などウェブも充実していて、作品もオンライン購入できる。コロナ禍の間にネットで予習しておけば、いざ現地に行った時の助けにもなりますよね」

例えば台湾の〈台北當代〉や〈アートバーゼル香港〉には、世界中から厳選された、今後評価が高まるであろうお墨付きが既に揃っている。その中で好きな作品を選べば間違いはないし、若手の作品なら20万円ぐらいから買えるはずだ。

「僕は30代の頃、勤務先に内緒で土日と夜勤のバイトを5年間続け、長年憧れていた草間彌生さんの作品を手に入れました。惚れ抜いて一緒に暮らした作品が、人生やものの見方をどれだけ豊かにしたことか。若いうちだからこそ、おすすめです」

注目しておきたい若手アーティストたち。

Ayako Someya《NH₃》
Ayako Someya《NH》2018年、紙に墨、46×61cm/アジア最大規模のアートフェア『WEST BUND』(上海)でも紹介されたSomeyaの書は、文字ならぬ記号が有する意味性に可能性を見い出し、にじみという恣意的に制御不能な現象を美へと昇華する。東京画廊+BTAP/TEL:03-3571-1808
ロー・イーチュン《Body Movement from Farming to Workout》
ロー・イーチュン《Body Movement from Farming to Workout》2021年、アニメーション、0’34″/台湾のローによる新作アニメーションは、人的労働集約型農業が機械化されたことで、逆に人々が農作業と同じ運動をフィットネスクラブで行っていることを揶揄。nca ¦ nichido contemporary art/TEL:03-3555-2140
磯村暖、海野林太朗《Sculpture 1 for Agitators' Dreams or Floating Signages》
磯村暖+海野林太郎《Sculpture 1 for Agitators’ Dreams or Floating Signages》 Asian Art Biennial展示風景、2021年/気鋭の作家による合作。すべての物や現象が影響し合うネットワークの中で、一要素として人間が存在する状態を表した。台湾の『第8回アジア・アート・ビエンナーレ』で22年3月6日まで展示中。EUKARYOTE/TEL:03-6432-9131
アート収集のはじめ方
(左)ロー・イーチュン《Body Movement from Farming to Workout》2021年、アニメーション、0’34″/動画全編。(右)磯村暖+海野林太郎《Sculpture 1 for Agitators’ Dreams or Floating Signages》 Asian Art Biennial展示風景、2021年/展示の様子。

アジアの若い才能を知る・観る・買うなら。

アートフェア 台北當代
台北當代2020 ncaブース©Image courtesy of Taipei Dangdai 2020
アートフェア 台北當代
台北當代2020 全景©Image courtesy of Taipei Dangdai 2020

Information

台北當代

たいぺいとうだい
世界トップクラスの現代アートが集まる、台北の新興アートフェア。オンラインのプラットフォーム〈Taipei Connections〉も設立。2022年は5月20日~22日〈台北世界貿易センター〉で予定。

公式サイト:https://taipeidangdai.com/

profile

宮津大輔(アートコレクター)

みやつ・だいすけ/1963年東京都生まれ。横浜美術大学学長、森美術館理事。30代でアート収集をはじめ、現在は平面、映像、ニューメディアなど約400点のコレクションを所有する。

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