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若者が中森明菜を聴くのはなぜ? 「BRUTUS」の歌謡曲特集が面白い!

  • 2022.3.9
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いま、若者の間で「歌謡曲」人気が高まっている。日本の古いポップスが人気だというと、2010年代に流行した「シティポップ」を思い出してしまうが、「歌謡曲」の盛り上がりはそれとは別物。「シティポップ」ブームのきっかけが欧米で日本の音楽が再発見されたことだったのに対して、いまのブームは日本や中国といった東アジアの若者が中心になっている。しかも、そこで語られているのは、マニア好みの「隠れた名作」ではなく、当時の流行のど真ん中だった松田聖子さんや沢田研二さんのシングル曲なのだ。

そんな「歌謡曲」熱が高まる中、3月1日に発売されたカルチャー誌「BRUTUS(ブルータス)」(マガジンハウス)では、「#全世代に捧げる歌謡曲特集」と題し、山口百恵さんやテレサ・テンさんのような懐かしの昭和歌謡から、米津玄師さん・藤井風さんのような「令和歌謡」にいたる日本の「歌謡曲」の系譜を取り上げている。

特集にはアニソン、ジャニーズ、西城秀樹さんと、「歌謡曲」の系譜に連なるさまざまなアーティストたちが登場するが、中でも注目したいのは、熱烈な明菜ファンとして知られるサカナクションの山口一郎さんが、中森明菜さんの楽曲の魅力について語る「#中森明菜を探して」だ。

今年でデビュー40周年を迎える中森明菜さんは、現在の「歌謡曲」ブームの中でもっとも熱く語られているアーティストの一人。その歌唱力とセルフプロデュース力の高さに、近年のメディア露出の少なさも手伝って、グループアイドルの時代が続く現代では存在しえない「伝説の歌姫」として若者から強い支持を受けているという。

記事では、山口一郎さんが「スローモーション」「北ウイング」といった数々の名曲を分析。たとえば、「少女A」については次のように論じている。

「めちゃくちゃカッコいい! サビが立った曲じゃないんですが、その代わり、印象的な曲のタイトル「少女A」がサビの最後に来ていて効果的ですね。イントロのギターリフから、歌がぽっと入ってきて、ブレスがない。どこで切れるかわからない裏切りがあるから今聴いても新しい。とてもよくできた曲。」

山口さんは、デビュー当時の中森さんの魅力を「乙女チック路線」と「ツッパリ歌謡路線」という「少女の二面性」を表現してきたことにある、と分析する。当時、リアルタイムで聴いていた世代にとっては「アイドル」のイメージが強かったが、いま改めて、その歌唱力や表現力が見直されていることは、とても興味深い。

なつかしの「前口上」ベストも。

同特集号では他にも、石原裕次郎さんや水谷豊さんら「歌う俳優」に注目した「#男の色気」や、当時の製作現場を支えた編曲家、コーラス、プロデューサーにインタビューした「#昭和歌謡の作り手たち」、さらには、歌謡曲ファンお馴染みの音楽評論家・スージー鈴木さん、近田春夫さんのコラムまで収録されている。

80年代を知る世代にとって懐かしいのが「#前口上ベスト!」のコーナーだ。1980年の紅白歌合戦で司会を務めた黒柳徹子さんが、松田聖子さんの「青い珊瑚礁」で送った前口上はこちら。

「暴れ盛りの男の子たちに、優しい気持ちを芽生えさせました。松田聖子さん「青い珊瑚礁」です。」

同年、白組司会を担当した山川静夫さんが、沢田研二さんの「TOKIO」を紹介した時の前口上にも歌謡曲全盛時代の勢いを感じる。

「季節が変わればジュリーも変わる。
研ぎ澄まされた男の美学が爪の先まで
びっしりの魅力をふりまいて80年を彩りました。
それ行け「TOKIO」沢田研二さんです。」

ほかにも、古舘伊知郎さんや久米宏さん、鈴木健二さんらのリズムの良い名口上が「あの頃」を思い出させてくれる。

最近サブスクやYouTubeで昭和歌謡に触れた若者から、懐かしのあの曲を振り返りたい壮年、一家言持っているマニアまで、老若男女が楽しめる一冊。これを機に「歌謡曲」の世界に入門してみては?

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