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頼りになるマンガ Vol.17:お金のことをしっかり考えたい。

  • 2022.3.8
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プリンセスメゾン マンガ 単行本

お金のことをしっかり考えたい。

『口入屋兇次』岡田屋鉄蔵/著

推薦者:岩下朋世

江戸の町の裏家業に学ぶ、働くことの意義。

「口入屋」とは職探しをしている人に仕事を斡旋する業者を指す。さまざまな事情を抱えながら自分を頼ってきた依頼人の才覚を的確に見抜き仕事を世話する一方で、兇次は仲間たちを動かし依頼人が巻き込まれた事件の謎を探っていく。

「崗田屋愉一」の名でも活躍する作者のストーリーテリングは巧みで、読みだせばページをめくる手が止まらない。兇次一味が真相を暴き悪人どもを成敗する流れも痛快だが、職業ものとしての描写も実に丁寧だ。苦境にあった依頼人たちは、職に就くことを通して自らを立て直していく。

彼らの再生のきっかけとなるのが、単に自らの金を稼ぐことではなく、仕事の中で金銭を扱い、金を動かすことである点に作者の洞察の鋭さがある。

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口入屋兇次 マンガ 単行本

『口入屋兇次』岡田屋鉄蔵/著

〈くちいれやきょうじ/おかだや・てつぞう〉
口入屋を営む主人公の兇次。彼のもとに舞い込むのは、江戸の町で起こる事件の数数。剣の腕に優れた彼は、仲間たちと悪人を裁き、事件を解決していく。ウェルメイドで硬派な時代劇。引き込まれます。全3巻/ヤングジャンプコミックス(集英社)。©崗田屋愉一/集英社 2016年岡田屋鉄蔵から改名

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岩下朋世

岩下朋世

いわした・ほうせい/1978年鹿児島県生まれ。相模女子大学学芸学部メディア情報学科教授。専門はマンガ研究、メディア論。最新著書に『キャラがリアルになるとき 2元、2.5次元、そのさきのキャラクター論』(青土社)。

『プリンセスメゾン』池辺葵/著

推薦者:トミヤマユキコ

庶民は庶民なりのお金の生かし方を考える。

高校卒業後、居酒屋勤務をしている沼越さんは、自分だけのお城=マンションを買うべく、休みの日は物件探しに勤しみます。同僚に、俺らなんかの手の届く夢じゃないっすよと言われても「努力すればできるかもしれないこと、できないって想像だけで決めつけて、やってみもせずに勝手に卑屈になっちゃだめ」ときっぱり。カッコいいですね。

本作はもともと不動産会社のウェブサイトで連載されていたもの。沼ちゃんのような女性でも条件とやりくり次第で家が買える!ということがめちゃくちゃリアルに描かれているんです。私の周りでは、このマンガを読んで実際にマンションを買った人も。諦める前にやれることがあるよと背中を押してくれる物語だと思います。

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プリンセスメゾン マンガ 単行本

『プリンセスメゾン』池辺葵/著

〈プリンセスメゾン/いけべ・あおい〉
女一人で家を探すのは無謀なのか現実なのか。年収260万ちょっとの独身女性が、東京で理想の家を購入しようと探し回り、さまざまな価値観の女性と出会う。SNSで人気となり、ドラマ化もされた話題作。全6巻/ビッグ コミックス(小学館)。

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トミヤマユキ_頼りになるマンガ

トミヤマユキコ

1979年生まれ。少女マンガ研究者、ライター。東北芸術工科大学講師。専門分野は日本近現代文学と少女マンガ。著書に『少女マンガのブサイク女子考』(左右社)、『40歳までにオシャレになりたい!』(扶桑社)などがある。

『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』吉本浩二/著

推薦者:近西良昌

制限内で買い物する楽しみを。

月額2万千円という限られたおこづかいのなかで、主人公はどうやって好きなものや必要なものを買うのか。それを細かに描写しています。彼にとっては、お菓子を食べることが一番の楽しみ。

いろんな誘惑を振り払いながら、厳しい妻に必死に懇願しながら、お菓子を買うために必死にやりくりしています。月末になるとどんどん残金が減ってきて、生活が苦しくなる姿に共感せざるを得ません。おこづかい仲間が楽しみながら節約する様子や、ポンタカードを駆使するやりくりの方法も出てきて、参考になること間違いなし。

インターネットショッピングでつい浪費してしまうという人は、お金の使い方を見直すきっかけになりそう。節約って意外と楽しいのかもしれません。

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定額制夫のこづかい万歳 マンガ 単行本

『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』吉本浩二/著

〈ていがくせいおっとのこづかいばんざい げつがくにまんせんえんのきんけつらいふ/よしもと・こうじ〉
妻と子供2人と暮らす40代マンガ家の主人公。月の少ないおこづかいで、毎月どうやってやりくりしているのか、驚きの節約術やお得情報も満載。ほぼ実話というドキュメンタリーマンガ。既刊2巻/モーニングKC(講談社)。

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近西良昌

近西良昌

ちかにし・よしまさ/1979年生まれ。〈三省堂書店海老名店〉(住所:神奈川県海老名市中央1-1-1 4F/TEL:046-234-7161)で20年以上コミックを担当。マンガ大賞選考委員。生涯のベストは森山大輔の『クロノクルセイド』(少年画報社)。

『新・おぼっちゃまくん』小林よしのり/著

推薦者:ブルボン小林

やはり金持ちは金持ちのままだった。

景気がいい時代は漫画の人物たちも金持ちになった。『ドラゴンボール』のブルマの父親は社長。金も暇もある少女がそれに飽き足らず、気ままに「冒険」を追い求めた。かたや『チェンソーマン』のデンジの両親は借金まみれで他界。デンジの望みは食パンにジャム塗って食べること(本当に同じ媒体の連載か?)。

同一の漫画人物はどうだろう。バブル時代に金満家の不遜さをギャグにしてヒットした本作が現代にアップデートされると、やはり金持ちは金持ちのままだった。

ただ「格差社会」が表面化し、脇役の「びんぼっちゃま」の存在感が新シリーズでは特に増している。宇宙服さえ背中側は裸の彼の、だが凜々しさを崩さぬその顔に矜持に、今こそ学びたい。

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新・おぼっちゃまくん マンガ 単行本

『新・おぼっちゃまくん』小林よしのり/著

〈しん・おぼっちゃまくん/こばやし・よしのり〉
バブル前夜に作者が大ブレイクしたオリジナルの『おぼっちゃまくん』から四半世紀後、お子ちゃま向けから大人向けに生まれ変わった新シリーズでは、忖度やセクハラ、分断など令和の世相を反映。それでも茶魔はやっぱり茶魔。既刊2巻/幻冬舎。

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ブルボン小林

ブルボン小林

ぶるぼん・こばやし/1972年生まれ。コラムニスト、小学館漫画賞選考委員。『東京新聞』で毎月第3月曜日にマンガ評を連載、TBSラジオ『たまむすび』 に月1出演。著書に『ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論』など。

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