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ドキュメンタリー好き・竹田ダニエル、忘れられないあのシーン。『メイキング・オブ・モータウン』

  • 2022.3.6
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『メイキング・オブ・モータウン』イメージイラスト

反戦メッセージを込めた楽曲「What’s Going on」をマーヴィン・ゲイが歌うとき

ミュージシャンは政治的な発信をすべきか。今年のアカデミー賞で23歳のR&BシンガーH.E.R.が、BLM運動を想起させる楽曲「Fight For You」で歌曲賞を受賞したことも記憶に新しいですが、コロナ禍の不安定な社会に葛藤する日本のアーティストにも重くのしかかるテーマだと思います。

そんな状況に示唆をくれるのが、R&Bの礎を築いた音楽レーベル・モータウンの歩みを記録した本作の中の、マーヴィン・ゲイによる1971年のアルバム『What’s Going on』を取り巻く動きです。

『メイキング・オブ・モータウン』
©2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved

ベトナム戦争に際し、各少数コミュニティが反戦を訴えていた当時のアメリカで、ゲイは表題曲で「戦争は答えではない、愛だけが憎しみを克服できる」と社会に語りかけました。

作中、曲の発表にあたり“白人に好かれる黒人の音楽”を形にしてきたモータウンのイメージを損なうのではと苦悩した周囲の心情も回顧されますが、ゲイがそうした懸念を振り払い、この曲を力強く歌い上げるシーンはとにかく圧巻です。

R&Bが再評価され、当時を経験していないH.E.R.のような世代にも、彼の精神が受け継がれていることこそが、音楽の、人々の心に訴えかける力の大きさを物語っているんじゃないでしょうか。

『メイキング・オブ・モータウン』イメージイラスト

Information

『メイキング・オブ・モータウン』

人種差別の根強い1959年のデトロイトで生まれ、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイらを輩出し世界的に飛躍した音楽レーベル・モータウンの功績を記録。創設者のベリー・ゴーディが、かつて働いていた自動車工場の生産ラインをヒントに培った発掘・契約・養成というプロデュースの極意を、ゴーディ本人や関係者の証言から紐解いている。インターフィルム/¥5,280(BD)

profile

竹田ダニエル(ライター)

たけだ・だにえる/カリフォルニア在住。ライターのほか、フリー音楽エージェントとしてアーティストPRやマネジメントを担当。

twitter:@daniel_takedaa

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