1. トップ
  2. 100円や50円では駄目なのか なぜ「ワンコイン」は500円?

100円や50円では駄目なのか なぜ「ワンコイン」は500円?

  • 2022.3.7
  • 566 views
なぜ「ワンコイン」は500円?
なぜ「ワンコイン」は500円?

昼食時の飲食店が「ワンコインランチ」を提供するなど、「ワンコイン」という言葉が、世の中に浸透していると思います。とはいえ、不思議なのは、「ワンコイン」の意味がほとんどの場合、「500円」を指していることです。100円でも50円でも、「ワンコイン」と呼ぶことは可能だと思います。なぜ、「ワンコイン」が500円の意味となったのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

海外でも「ワンコイン」で販売

Q.企業が商品やサービスを販売するとき、「ワンコイン」という言葉を用いるメリットは何ですか。

大庭さん「企業が自社の商品やサービスに対して、『ワンコイン』というキーワードを前面に押し出すことで、『硬貨1枚で購入や利用ができ、安くてお得である』『お手軽感がある(釣り銭も生じない)』というイメージを消費者に与えることができます。このことにより、消費を促す効果を生み出し、集客や売り場での売り上げの向上、店の認知度の向上といったメリットがあります」

Q.世の中では、「ワンコインは500円」という認識が定着しているように思います。なぜ、「ワンコイン」が500円の意味となったのでしょうか。

大庭さん「他の硬貨1枚の額面である100円や50円ではなく、現在の日本の通常硬貨としては最高額である500円を販売価格にすることで、対象にできる商品やサービスの選択肢が広がり、企業も『ワンコイン』商法を考えやすくなるからです。

そのため、1982年に500円玉の流通が開始されて以降、世の中に『ワンコイン』商法が普及し、『ワンコインは500円』という認識が世の中で定着したものと考えられます」

Q.運賃が100円のバスを「ワンコインバス」と呼ぶこともありますが、100円を「ワンコイン」の意味で捉えるのは少数です。なぜ、100円が「ワンコイン」の意味にならなかったのでしょうか。

大庭さん「世の中で『ワンコインは500円』という認識が定着していなかった時代にも、消費税が導入される前の『100円ショップ』(1985年より同業態が出現)や、自動販売機での飲料販売などで、『ワンコイン』で商売するという概念はありました。

しかし、収益性を考えても、販売価格を100円の対象にできる商品やサービスの数は多くなかったため、当時の世の中に『ワンコインは100円』という認識が定着することはなく、『ワンコイン』商法が広がらなかったのだと考えられます」

Q.「ワンコイン」をセールスポイントとして使うのは、日本独自なのでしょうか。海外でも、同じことが行われていますか。

大庭さん「海外にも、『ワンコイン』で商品を販売する店はあります。例えば、アメリカでは、『DOLLAR TREE』という小売りチェーン店では、1ドル均一で食料品や便利グッズ、雑貨、サプリメントなどを販売しています。オーストラリアには『DOLLAR KING』という生活雑貨を扱う店があり、1ドルや2ドルで購入できる雑貨がたくさん売られています。

また、イギリスには『Pound land』という小売店があり、1ポンドちょうどで購入できる商品がたくさん売られています。アメリカでは1ドル硬貨が、オーストラリアでは1ドルと2ドル硬貨、イギリスでは1ポンド硬貨が広く流通しているため、『ワンコイン』をセールスポイントにしやすい環境といえます」

Q.「ワンコイン」の商品やサービスは、短期的に消費者にはメリットでも、今後もさらに「ワンコイン」の商品やサービスが増えると、長期的にはデフレなど何らかの悪影響はないのでしょうか。

大庭さん「『ワンコイン』が価格競争の要因となり、消費者の中で『この商品やサービスの価格は500円であることが妥当だ』という意識が定着してしまうと、該当する商品やサービスの値上げが難しくなり、結果としてデフレが生じることは考えられます。

しかし、企業が『ワンコイン』商法を行う理由は、集客や認知度の向上であり、その効果が得られた場合、『ワンコイン』ではない適正な価格で商品やサービスを販売する企業努力を行います。

その努力が、『ワンコイン』商法を行ったことで生み出された集客や認知度の向上との間で相乗効果を生み出した場合、価格の適正化が実現され、デフレという悪影響を生じさせるリスクを回避できるのではないでしょうか」

オトナンサー編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる