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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.49 デビュー10周年

  • 2022.3.4
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クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。26歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.48 車椅子のおじいさん

vol.49 デビュー10周年

2月15日でデビュー10周年を迎えた。皆さん、本当にいつもありがとうございます。あっという間だったような気もするし、とても長かったような気もしてしまう、不思議な時間軸。泣いたり笑ったりたくさんの事があったなぁ!どーしてあんなことに本気で悩めたりしたんだろうって目を細めながら過去の自分を見つめるのも良いもんだなと思います。社会に出たのが16才の時。現場では常に自分が1番年下だった数年間を過ごし、その内ちらほらと同級生の方を見かけるようになって。最近では年下の方とご一緒する機会もぐっと増え、時の流れを感じる日々です。上手く言えないけどこの10周年というタイミングは、振り返れば自分がはじまったあの日あの場所を目視できる最後の地点な気がしています。

私の実家は高台の上にあって。中学生の頃、うだるような夏の日や凍てつく冬の日に、その急勾配な坂を登りながら、どうして祖父はこんな場所に家を建てたんだろう、と心の中でひとりごち自分のローファーの先だけを見つめながら、のろのろと頂にある家を目指したのを覚えています。そしてもっと覚えているのが幼少期に祖父が私を遊びに送り出してくれていた時の風景。手を後ろに組んで坂の下まで私が降りられるか心配そうに見守ってくれていた。途中で私が何度も祖父の方を振り向くもんだから、早く行きなさい、と。でも嬉しそうに笑ってた。その急勾配な坂のある地点に来ると、私は力強く後ろを振り返り、これが最後とでも言うように祖父の顔をしっかり見つめてから前を向き、一歩を踏み出していた。たった一歩なのにその地点から前に進むと私の方からは振り返ってももう祖父が坂に隠れて見えなくなるのだ。

10周年は私の中に在るそんな記憶を呼び覚ます。後一歩進むと、もう2012年2月15日が見えなくなってしまうような。どんどん積み上げて、どんどん進んでいく。寂しさと目の前にある新しい出会い。両手を広げて、抱きしめて行こう。

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