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いい人間関係を築くために今、必要なこと。あなたは「リスペクトできる人柄」か

  • 2022.3.2

女同士が罵倒し合う時代は終わった。でもその分、傷つく人が増えている

誰と誰は共演NG、誰と誰はライバル意識丸出しで犬猿の仲……世間はそんな噂話が好きである。とくに女優同士の不仲説は。ただ、それに真っ向から反論する女優たちが現れた。そうした訴えを耳にすると、いわゆる不仲説が2人を同時に貶め、同時に傷つけるとても罪深い噂なのだということがよくわかる。

大体が今どき、人と人、とくに女性と女性がぶつかり合うなどそうそうは起きない時代。それこそ韓流ドラマで、女同士がお互い激しく罵声を浴びせ合う的なシーンは、少なくとも今の日本ではほとんど見られないはずなのだ。

確かに昔は、オフィスやさまざまなコミュニティーで、辺りをはばからずに罵り合う女同士の喧嘩が目撃されていた。ちょうど女性の社会進出が顕著になってきた1980年代は、おそらくそういう場面がもっとも多く見られた時期。

言い換えればそれは、女性たちが社会人としてまだ未熟だったことの表れだろう。社会において、何をしたら人とぶつかってしまうのかをまだよく知らず、また何を言ったら修復不可能かも知らなかったのだから。女同士の喧嘩が減ったなら、それは紛れもなく女性たちの進化。

でもそれだけではない。人々の心の強度が今とは違った。この時代のほうが、強気の女性も、自信たっぷりの女性も、はるかに多かった気がするのだ。わかりやすく言えば、1980年代後半にバブルが来て、ボディコンのミニワンピで我も我もと伝説のお立ち台に上がり、踊りまくった時代、女性たちの自信も自己評価もピークに達し、しかしバブル崩壊とともに急速に自負心を弱めていった。

もちろん人の心の向きはさまざまで、時代という括りでまとめてはいけないけれど、当時に比べれば、女同士激しくぶつかれるほど、今みんな心が強くはない。

ただ、比率は高くなくてもやっぱり当たりの強い人はいて、弱い人を無意識にでも傷つける関係であるのは、昔と何ら変わっていない。いや、平均的に心の耐性が低下している今、ごく当たり前の対人関係の中でさえ、傷つく人の数は増えている気がするのだ。

それどころか、たとえば今の時代の上下関係では、不用意に言葉をあげればすぐパワハラになってしまうように、誰もが人の心を傷つける可能性を秘めている。そういう時代だからこそ、一人一人が対人関係に新しい意識を持って臨むべきなのではないだろうか。

ましてや、コロナ禍は直接人と会わない分、気持ちが安定していても、出社率が上がれば、以前より人の心の消耗度が増すかもしれないのだ。

そんな中で出合ったのが「人薬」という言葉。広辞苑には載っていない。著名な精神科医が心を癒やす一つの方法として用い、にわかに注目を浴びている概念だ。

同様に「時薬」という言葉もあって、これは「どんな苦悩も時が解決する」という意味で、実際の薬には頼らない心の癒やし方。これもまだ辞書にはない言葉。ギリギリ「日にち薬」という言い方は昔からあって、これも「日数を重ねてじっと養生していれば、病気や怪我が自然によくなってくる」の意。まさに自然治癒。時薬は心の自然治癒を意味するのだ。

「人薬」の条件とは何か? そしてリスペクトされる条件は?

一方の「人薬」とは、結果として人と関わることが心の温度を高め、心の傷が癒やされていく、孤独のままではいけないし何も解決しないという考え方。その字面を見ただけでハッとして、何だか心が少し温かくなった。そして、これこそが“心の強度が減り、何かと平静を保つのがちょっと難しい時代”、人々を救うカギになるのは確かなのだ。でも、言ってみれば人間は諸刃の剣。薬ともなるけれど毒も持っている。すべての人が「人薬」になれるわけではないはずで、だから思ったのだ。当たり前の人間関係の中でも、一人一人が自ら「人薬」になるような意識を持たないと、対人関係がもっと難しくなっていくのではないかと。

もちろん具体的に誰かの心の問題を解決できるはずもなく、そういうことではないのだ。小さなことでさえ人を傷つけてしまう時代、いつも人を包み込むような意識を持ち、自分の体温を意識して、相手が少しでも温まれるようにしてあげる。おそらくはそれが人薬の条件。

逆に言えば、元気のない人を励まそうとしたり、落ち込んでいる人を引っ張り上げようとしたり、そこまでするのは危険。辛い人に「頑張って」と言ってはいけないとされるように、ここはもっと単純に、相手に人肌の温もりを伝えてあげるような気持ちになること。それだけで何かが伝わり、自然と相手が望むような存在になれているはずだから。

でも何で相手のためにそこまでしてあげなければいけないの? それは、風の時代、とくに今年は対人関係を整理すべきタイミングにあると言われ、その時、重要な基準になるのが「リスペクトできる相手」かどうか、であると言われるから。女同士の対人関係で言えば、リスペクトできる人って、やっぱり「人薬」になれる人。ただのいい人じゃない。人を包み込む温もりを持てることなのではないかと思うから。

人を「温度」で考えたことがあるだろうか。一人一人が相手に与える温もりの温度。たとえば、石田ゆり子さんや井川遥さんは、そばに行って温まりたくなるような、ほどよい温度を宿している。でも、温度ある人=“癒やし系”という意味ではない。

長澤まさみさんや広瀬アリスさんは、もっと快活で華やかなイメージだけれど、同時に温度を持っている。包容力も。若手では、浜辺美波さん、今田美桜さん。一方で、役柄からは意外に思えるかもしれないけれど、吉田羊さん、小池栄子さんにもその温度を感じる。

この人たちに共通するのは、演技力。そして、ほぼ出ずっぱりの活躍。言い換えればそれは、知性と人柄を意味する。どんな役をやってもハマる柔軟な演技力は、頭のよさとともに、人間と世の中がよく見えている証。浜辺美波や今田美桜など、その若さからは信じられないほど人間味のある演技ができるし、実際大人に見える。それは人間をよく知っている証。そして、吉田羊や小池栄子は人柄のよさで有名。人格者の呼び声も高いほど。知性×人間性、それは人間の厚みを測る重要な要素であり、まさにリスペクトされる人の条件なのである。

人間が薄っぺらいか、奥行きがあるか、その違いがまさにそこに現れるわけで、おそらく人間の温度というのは、単なる優しさや癒やしの空気だけではない、一段高い人が持っている熱なのではないかと思うのだ。

つまりそういう人だからこそ、必要とあれば必要な言葉を発することができる。ただ黙ってそばにいることもできる。人としてのセンスが、頼りがいだったり、包容力だったり、大きなものに包まれている安心感だったり、そういうものを生むのだ。まさに「人薬」。ただそばにいてくれるだけでホッとして、嬉しくなり、そして幸せな気持ちになれる。そういう存在になれたら素敵だが、それこそ単なる“いい人”じゃない。ちゃんとした「人薬」になれる知性とセンスが必要ということなのだ。

今この時代、一人一人がそういう温度を持って相手に接すれば、誰も傷つかない穏やかな世の中になるはず。大げさに考えなくていいと思う。いざという時、「人薬」の意味を思い出し、自らが「人薬」になるような意識を持つだけ。それだけでも自分が今、相手にとってリスペクトできる人間に見えるはず。ただ逆に言えば、今そのくらい高いレベルの人間性を目指さなければ、いい人間関係は持てないということ。そんな厳しい時代に入っているということ、肝に銘じるべきなのである。

対人関係を整理すべきタイミング、カギになるのは「リスペクトできる相手」かどうか。今やそれくらい高い人間性を持たなければ、いい人間関係など持てない時代なのだと、肝に銘じるべき。

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳

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