1. トップ
  2. 頼りになるマンガ Vol.15:圧倒的な画力のマンガに唸りたい。

頼りになるマンガ Vol.15:圧倒的な画力のマンガに唸りたい。

  • 2022.2.27
  • 1932 views
ベルセルク マンガ 単行本

圧倒的な画力のマンガに唸りたい。

『フジモトマサル傑作集』フジモトマサル/著 名久井直子/装幀・監修 福永信/企画・選・構成

推薦者:ブルボン小林

2015年に急逝した著者の、イラストレーションではない、漫画の魅力を集めた一冊。イラストレーターの手掛ける漫画作品は、売れてもなぜか漫画扱いされない。書籍としても一般書扱いのことが多いし、漫画評で取り上げたり、賞の候補になったりということもほぼない。

だが漫画は本来「戯画」だ。フジモトマサルの描く絵は日本のいわゆる「アニメ的な」漫画の系列にはない。アメコミ風でもない独自の絵柄で、だがコマやフキダシを駆使し、誇張と分かりやすさを備えた、すこぶる正しい「漫画」だ。

キャラクターのかわいさや、とぼけた筋と同時に、二色カラーで巧みに立ち上げる陰影の妙をぜひ、味わってください。

Information

フジモトマサル傑作集 マンガ 単行本

『フジモトマサル傑作集』フジモトマサル/著 名久井直子/装幀・監修 福永信/企画・選・構成

〈フジモトマサルちょさくしゅう/ふじもとまさる〉
ブルボン小林『ゲームホニャララ』の装画も描いた作者のベスト集。単行本未収録「おおかみが来るぞ」「回想の再読」ほかを全編収録。早世した画才と文才が惜しまれるばかりだ。全1巻/青幻舎。

profile

ブルボン小林

ブルボン小林

ぶるぼん・こばやし/1972年生まれ。コラムニスト、小学館漫画賞選考委員。『東京新聞』で毎月第3月曜日にマンガ評を連載、TBSラジオ『たまむすび』 に月1出演。著書に『ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論』など。

『化物語』西尾維新/原作 大暮維人/著

推薦者:兎来栄寿

芸術的ともいえる一コマに触れる。

「物語」シリーズ最初の作品である『化物語』が刊行されたのはもう15年前。大ヒットしたアニメも12年前。そんな作品のコミカライズを大暮維人さんが行うと3年前に発表された時は正直「今さら?」とも思いました。

しかし、いざ始まってみればこれほどまでに幸せなコミカライズもないのではないかと思わせる異常なほどのハイクオリティ。もともと高い画力で有名な大暮維人さんですが、ここに来て完全にキャリアハイを迎えています。

一コマ一コマがあまりにも芸術的で蠱惑的。原作の魅力は令和でも古びていないものの非常に癖が強いです。それをマンガという媒体で120%引き出す表現が見事に突き詰められています。この作画を週刊でやっているのはあまりにも偉大。

Information

化物語 マンガ 単行本

『化物語』西尾維新/原作 大暮維人/著

〈ばけものがたり/おおぐれ・いと〉
日本の田舎町を舞台に高校生の阿良々木暦が「怪異」に関わった少女たちと出会い、事件を解決していく物語。西尾維新の代表作『化物語』を『エア・ギア』の大暮維人がマンガ化。既刊12巻/KCデラックス(講談社)。

profile

兎来栄寿

兎来栄寿

とらい・えいす/マンガソムリエ。10歳頃から神保町やまんだらけに通い、ジャンプ作品からトキワ荘・大泉サロン作家まで読み漁った生粋の愛好家。少年青年少女マンガからBL・百合まであらゆるジャンルを愛し布教する。

『ベルセルク』三浦建太郎/著

推薦者:川村豪

悪夢を見るほど圧倒的な絵柄と世界観。

もはや絵画といっても差し支えなし。青年マンガの常識を打ち破った緻密な描き込みには、何度読んでも驚愕します。過激で目を背けたくなるシーンも多々ある作品ですが、そのような場面でさえ、目が否応なく惹きつけられてしまうほどの画力。

ガッツをはじめとするキャラクターたちはもちろんのこと、背景のこれでもかという描き込みにも注目です。作り込まれた世界観と、それを描く圧倒的な画力は唯一無二。読後、悪夢を見るくらい迫力があるダークファンタジーです。

実際に、就寝前に読んで作品に入り込んだような悪夢を見てしまい、飛び起きた記憶がありますが、物語が完結する最後の最後まで、この濃密な画とストーリーを追いかけ続けます!

Information

ベルセルク マンガ 単行本

『ベルセルク』三浦建太郎/著

〈ベルセルク/みうら ・けんたろう〉
連載開始から30年を超え、2度のTVアニメ化と劇場アニメ3本を生むも「死ぬまでに頭の中をすべて出せるのか」とは作者の弁。深化はどこまでも止まらない。第6回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞受賞。既刊40巻/ヤングアニマルコミックス(白泉社)。

profile

川村 豪

川村 豪

かわむら・つよし/1973年東京都生まれ。秋葉原のアニメ・マンガの聖地〈書泉ブックタワー〉(住所:東京都千代田区神田佐久間町1-11-1/TEL:03-5296-0051)コミック担当バイヤー。97年入社、ラノベ担当を経て現職。

『僕のヒーローアカデミア』堀越耕平/著

推薦者:SYO

ハイクオリティな画面をジャンプ作家陣も絶賛!

僕がこの世で最も好きなマンガ(連載開始時のジャンプを今も大切に飾っています)。ヒーローが職業化した世界で、夢に向かってひた走る少年の成長譚。物語・キャラ・熱量、どれをとっても神がかっていますが、堀越先生は画力がずば抜けて高い(『NARUTO』の岸本斉史先生や『BLEACH』の久保帯人先生も絶賛!)。

画面の構成力に描き込みの緻密さ、デザイン性にデッサン力、そして表情の豊かさと絵の崩れなさ。毎話ため息が出ます。週刊連載で何年もこのクオリティを維持している彼は、一体どんな強“個性”の持ち主なのか……。

原作は最終章に突入し、今年は原画展にアニメに映画とお祭りイヤーなので、未読の有精卵どもはぜひこの機会にプルスウルトラしよう!

Information

僕のヒーローアカデミア マンガ 単行本

『僕のヒーローアカデミア』堀越耕平/著

〈ぼくのヒーローアカデミア/ほりこし・こうへい〉
人類のほとんどが超常能力を持つようになった世界で、力を持たない主人公がヒーローを目指す。ヒーロー養成学校の仲間との切磋琢磨や敵とのバトルを通して、ヒーローへと成長していく。メディアミックス多数。既刊29巻/ジャンプコミックス(集英社)。©堀越耕平/集英社

profile

SYO_頼りになるマンガ

SYO

しょう/1987年福井県生まれ。映画・マンガライター。アニメ、ドラマなどエンターテインメント全般のインタビューやライティングを手がける。月平均20冊のマンガを読むことが日課。特に好きなジャンルはもの作りマンガ。

元記事で読む
の記事をもっとみる