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頼りになるマンガ Vol.12:疲れがたまっているので、 号泣してデトックスしたい。

  • 2022.2.24
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ジョゼと虎と魚たち マンガ 単行本

疲れがたまっているので、
号泣してデトックスしたい。

『orange』高野苺/著

推薦者:近西良昌

青春の尊さ、友人の大切さ、ひたむきな若者の姿に涙。

今までの人生で読んだたくさんのコミックの中でも、大好きな作品の一つ。物語は、未来で好きな人を失ってしまうという悲しい展開から始まります。

遠くない将来に死が待っている友人を必ず救うと、仲間たちが決意。辛い運命を変えようと必死に努力する高校生たちの姿を見ていると、涙が止まりませんでした。この作品の登場人物は、みんな友達思いのいい人ばかり。これを読んで胸が熱くならない人はいないんじゃないでしょうか。

読み進めていると自分の青春時代を思い出し、当時の友達に会いたくなります。疲れがたまっている時こそ、若い頃の自分のピュアな気持ちを振り返って号泣してみたら、リフレッシュできるのではないでしょうか。

Information

orange マンガ 単行本

『orange』高野苺/著

〈オレンジ/たかの・いちご〉
10年後の自分から手紙が届いたことから始まるSF青春ストーリー。友人を死から救うため、奮闘する高校生たち。ひたむきに努力する真っすぐな彼らの姿が多くの読者の心を打った。土屋太鳳主演で映画化も。全6巻/アクションコミックス(双葉社)。

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近西良昌

近西良昌

ちかにし・よしまさ/1979年生まれ。〈三省堂書店海老名店〉(住所:神奈川県海老名市中央1-1-1 4F/TEL:046-234-7161)で20年以上コミックを担当。マンガ大賞選考委員。生涯のベストは森山大輔の『クロノクルセイド』(少年画報社)。

『雲出づるところ』土田世紀/著

推薦者:岩下朋世

生きることの切実さ、尊さが胸に迫る。

精いっぱいに生きる人々の悲哀を誠実に描くことにかけて、土田世紀に勝るマンガ家はそういない。数ある土田世紀の「泣けるマンガ」の中でも、報われない人生がとりわけ哀切に描かれるのが本作だ。

不幸な生い立ちで孤独に生きてきた男。哀しい過去を抱え、人を愛することに臆病になった女。そんな2人が出会い、周囲の反対をよそに愛し合う。しかし、幸福な日々はほんの束の間……次々と不幸が畳み掛けるストーリーだけを聞けば、いかにもな「難病もの」と思うかもしれない。

しかし、一読すればお涙頂戴とはほど遠い熱量に満ちているのがわかるはず。なんでこんなに胸に迫るのか、これは一体何なのかと問われたら、これが土田世紀なんだよ!と答えるしかない。

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雲出づるところ マンガ 単行本

『雲出づるところ』土田世紀/著

〈くもいづるところ/つちだ・せいき〉
困難な人生を歩んできた2人が出会い、結婚。駅で拾った黒人の子供を育てることに。2人の間に子供ができたことを喜ぶが、幸せも束の間。妻が子宮頸癌に侵されていることが発覚する。作者後期の代表作である。上下巻/モーニングKC(講談社)。

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岩下朋世

岩下朋世

いわした・ほうせい/1978年鹿児島県生まれ。相模女子大学学芸学部メディア情報学科教授。専門はマンガ研究、メディア論。最新著書に『キャラがリアルになるとき 2次元、2.5次元、そのさきのキャラクター論』(青土社)。

『河童の三平』水木しげる/著

推薦者:青柳いづみ

それでも私はこの世界に生まれてきたでしょうか?

芥川龍之介という人間が書いた『河童』は我々の世界とよく似ているとカッパ博士は言う。その世界では、この国へ生まれて来るかどうかを母親の胎内から生まれ落ちる前に自分で選ぶことができるらしい。

そんなことがもし人間の国でもできたら、それでも私はこの世界に生まれてきたでしょうか?そんなことをずっと考えさせられる。おじいさんが死んで、さらには再会したばかりのおとうさんまで死んでしまう。

泣く三平をなぐさめる死神(自分が連れてったのに)、ひとりぼっちになってしまった三平の隣で一緒にグーグー寝ているいたずらタヌキ、三平の代わりに勉強を頑張る河童、屁で泳ぐ泳ぎ方を教える河童、みんな生きてた。大好き。水木先生フォーエバー!

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河童の三平 マンガ 単行本

『河童の三平』水木しげる/著

〈かっぱのさんぺい/みずき・しげる〉
互いに瓜二つの河原三平少年と河童のかん平が連れ立って、死神や河童の王様、屁の神様と渡り合い、やがて妖怪たちとの戦いを繰り広げる。『ゲゲゲの鬼太郎』と並ぶ作者の代表作。テレビドラマ化、劇場版アニメ化がなされている。全1巻/ちくま文庫。

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青柳いづみ

青柳いづみ

あおやぎ・いづみ/1986年生まれ。俳優。〈マームとジプシー〉〈チェルフィッチュ〉などの舞台出演をメインに、今日マチ子との共著エッセイマンガ『いづみさん』、音楽家・青葉市子とのユニットなど多方面で活躍中。

『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子/原作 絵本奈央/著

推薦者:トミヤマユキコ

短時間で感情が揺さぶられ、読後はすっきり。

田辺聖子先生によるあの恋愛短編のコミカライズです。ジョゼと恒夫という男女を描いている点は原作と同じですが、舞台設定などに大胆なアレンジが加えられているので、原作を知らなくても全く困りません。

足が不自由なジョゼが絵を描く仕事を目指していたり、大学生の恒夫が留学に向けて頑張っているなど、2人の未来にポイントを置きつつ、この先もずっと一緒にいられるのかどうかが描かれていきます。最初は恒夫がジョゼをサポートする管理人としてこき使われているんですが、後半は立場が逆転。ジョゼが恒夫に寄り添い“全力で”励まします。

いざという時に発揮されるジョゼの瞬発力には思わず涙。感動と希望に包まれる読後感をぜひ体験してほしいです。

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ジョゼと虎と魚たち マンガ 単行本

『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子/原作 絵本奈央/著

〈ジョゼととらとさかなたち/えもと・なお〉
足が不自由なためほとんど外出したことのないジョゼと大学生・恒夫の純愛を描いた田辺聖子の短編小説をコミカライズしたもの。偶然出会った2人は、お互いの未来のために次の一歩を踏み出す。上下巻/KADOKAWA。

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トミヤマユキ_頼りになるマンガ

トミヤマユキコ

1979年生まれ。少女マンガ研究者、ライター。東北芸術工科大学講師。専門分野は日本近現代文学と少女マンガ。著書に『少女マンガのブサイク女子考』(左右社)、『40歳までにオシャレになりたい!』(扶桑社)などがある。

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