1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. ELAIZAさん「本当は身近に愛をくれる人がいて、日常の中で変わることができる」

ELAIZAさん「本当は身近に愛をくれる人がいて、日常の中で変わることができる」

  • 2022.2.22
  • 269 views

オーストラリアの歌手Sia(シーア)さんが初めて監督を務めた映画「ライフ・ウィズ・ミュージック」が25日(金)、全国公開されます。主題歌「Together」の日本版カバーソングを、俳優やモデル、歌手として様々な活動をしている池田エライザさんが、アーティストELAIZAとして担当。映画の見どころや音楽への思いなどを聞きました。

“愛のこもったセリフ”がちりばめられていた

――「ライフ・ウィズ・ミュージック」は、アルコール依存症のリハビリに取り組むズーが主人公。祖母の死をきっかけに自閉症の妹ミュージックと一緒に暮らすことになったズーは、アパートの隣人エボと関わる中で、自身と向き合っていきます。

ELAIZAさん: オファーをいただいた時はお話のスケールが大きすぎて、理解するのに時間がかかりました。概要を知るにつれ、Siaが自らメガホンを取って世界中に広めたいメッセージを届ける手助けができると分かって。ぜひやりたいと思いましたね。

映画は、言葉一つ一つが選び抜かれていて本当に美しかった。些細な日常のひとコマにあるような“愛のこもったセリフ”がたくさんありました。
登場人物のミュージックの視点で世界を表現する時に、歌と音楽と一緒にカラフルでポップな映像が流れるんです。その中の言葉が、登場人物たちの本質を表現している気がしました。

通常のミュージカルってセリフの途中で急に歌い始めるから、苦手意識がある人も結構いますよね。この映画は現実世界の映像と、音楽シーンを上手に切り替えていて、「こんな描き方があるんだ」と感心しました。

朝日新聞telling,(テリング)

――ミュージックの空想がたくさん出てきました。ELAIZAさん自身は空想にふけることはありますか?

ELAIZA: 私は映画も撮るので、空想ばかりしていますね。散歩してる時に道の真ん中で立ち止まって「このプロットもいけるな」ってふと思うこともあります。

自分の風景の中にいる人たちって、圧倒的に他者が多い。だけど「この人たちは何時にお家に帰って、何を食べるんだろう」とか「すごく楽しそうに遊んでいる子どもたちも、もしかしたら昨日悲しいことがあって泣いたのかな」と考えて、想像をどんどん広げています。

朝日新聞telling,(テリング)

弱いまま大人になってしまった登場人物たち

――主な映画の登場人物はアルコール依存症で自暴自棄になっていたズー、コミュニケーションが苦手なミュージック、そして2人を気にかけ手助けする心優しいエボです。共感した人物は?

ELAIZA: 3人の表現の背景に、監督のSiaがいると思うんですよ。
みんな、非常に弱いまま時を積み重ねて大人になってしまった。誰かに寄り添う時間も、寄り添ってくれる人も、なかった。その3人の人生がこれからゆっくりと開けていく――。私は最初から最後まで、全員に対して共感しかなかったですね。

朝日新聞telling,(テリング)

――ELAIZAさんは普段から歌手のSiaさんの音楽をよく聴くそうですね。

ELAIZA: Siaの表現は、切り口と言葉の美しさが好きですね。
それに聴いているとき、彼女に曲の中で叫んでもらえると、すごくスカッとするんですよ。東京にいると、叫べるところってないじゃないですか。ウワーって思いっきり歌ってくれてるから、車の中で聞いていても「一回停めて、これ聴こう」ってなるくらい。エネルギーが伝わってくるし、不思議な魅力を持っていると感じます。

朝日新聞telling,(テリング)

愛は、自分がどれだけ受け取るか次第

――ELAIZAさんにとって音楽とは?

ELAIZA: 最近はサブスクのおすすめやプレイリストで音楽を聴く人が増えているから、自分で選んで聴く機会が減ってきていますよね。そういった聴き方は、様々なジャンルに触れられるようになるというプラスの面もあるかもしれないけど、やっぱり私は必要な時に、好きな音楽を聴きたい。私はStevie Wonderの「For Once in my Life」が大好きで、聴きたい時はわざわざレコードで流してます。

音楽って、耳を澄ますほど、たくさん聞こえてくるじゃないですか。求めれば、いつもそばにいて、私を救ってくれるものなんです。人が奏でている音楽は、誰かを傷つけるために作られたものはありません。例えアーティストが亡くなってしまった後も、作品は残り続ける。音楽は、いつまでも私を裏切らない存在ですね。

朝日新聞telling,(テリング)

――「ライフ・ウィズ・ミュージック」への思いを改めて聞かせてください。
ELAIZA: Siaが描いたものって、派手なストーリーでは決してなく、彼女の実体験も織り交ぜられた、私たちの日常にも起こり得る、愛のお話だと思うんです。

私たちって生きていく中で、「自分を変えるような出来事が起きないといけない」って思い込んでいる節がある。けれど、本当は身近に愛をくれる人がいて、日常の中でも変わることができる。

愛って、自分がどれくらい受け取るかが大事。色んな人から十分にもらっている愛を、どれくらい受け取って、感謝して、返すか。感度をちょっと変えるだけで、「こんなにも愛を受けてたんだな」って気づくことができます。そんなメッセージを感じてもらえるんじゃないかな。

■奥 令のプロフィール
1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。

■齋藤大輔のプロフィール
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。

元記事で読む
の記事をもっとみる