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第51回 中国「ゆとり教育」導入の効果は?

  • 2022.2.16
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2018年より中国・広州に駐在した、6歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続(2021年本帰国)。
子ども達の長時間の勉強や教育費負担を軽減すべく、2021年7月、中国政府が「宿題軽減」と「学習塾閉鎖」政策を導入しました。その結果はいかに?

前回記事:第50回 中国『ゆとり教育』導入の衝撃

広州の街を眺める幼稚園児と小学生
子ども達の自由時間は増えたが……

教育費負担を減らし、保護者と子ども達の負担を軽減することで、少子化に歯止めをかける目的で実施された政策ですが、実際に効果はあったのでしょうか?

週末、祝日、夏・冬の長期休みの塾通いが禁止となり、自由時間は増えたそうです。そもそも、通っていた学習塾が即時閉鎖となりました。

今回の政策は、オンライン学習塾も対象です。私の友人はオンライン塾の授業料を先払いしましたが、閉鎖により授業費は一切戻らなかった、と嘆いています。

学校の宿題も減りました。一方で教師が放課後も子ども達の自習や学習サポートに付き合う機会が増え、教師側の負担は増えているようです。

英語・国語・算数の3科目の塾は非営利化によりほとんどが閉鎖されましたが、芸術、ピアノ、音楽、スポーツなどは制限がありません。というわけで、学習以外の習い事に通う子どもが増えているそうです。

バレエスクール
子どもの習い事施設(音楽、アート、囲碁、書画、ダンス、英語等のトレーニングと表示されている)
水面下で営業を続ける学習塾も?

中国でも人気の「公文式」。日本語・算数などの授業を日本語で行う教室と、中国語で行う教室があります。公文式の日本語で授業を行う教室は閉鎖されていません。外国人対象とみなされているからでしょうか?

学習塾側も頭を使います。
「国語」では営業できないので、「スピーチ技術」という科目にくら替えして続行中。
また、カフェに看板を替え「飲み物1杯を数千円で購入し、授業費として支払う」という形式で闇営業するタイプも。

今回の教育改革は、政府肝いりのためかなり厳しい措置がとられていますが、庶民はしたたかに頑張っているのかもしれません。

ますます教育格差が広がるのでは?

教育費の負担減を目的とした政策ではありますが、実際はこれまでの経済格差をますます拡大させるのでは、と懸念する人達もいます。

以前から、学校の人気教師を家庭教師として高額で雇う家庭はありました。学習塾からの引き抜きもあり、実力次第で稼げる職種です。

これまでのオンライン学習は、数人~数十人のグループでの授業を行う学習塾が多かったのですが、閉鎖。そこで、秘密裏に個人授業をお願いする家庭もあるとか。当然、マンツーマンのほうが授業料は高くなります。

政府が学校の宿題や、塾を制限しても、お金があればその分を埋められるのです。グループでの授業を受けられなくなり、秘密の個人指導を受けるとなると、当然教育費は増加します。

このように経済格差が教育格差に結びつくケースでは、有名学区にある不動産(学区房)の価格高騰も問題視されています。学区内の不動産を購入すれば、その学校に入る資格を得られるため、人気地区の不動産は通常の数十%増の価格で取引されています。
さらに、学校近くに、子どもが昼休みに昼寝や勉強するための部屋を借りる家庭もあります。

「お金持ちとそうでない家庭の差がますます広がる」と、中国人ママ友は言います。
「子どもの自由時間が増えてよかったという保護者もいることはいるけど、本当はどうなのかしら。私の感覚では、7割くらいの親は不満を持っていると思う」

そもそも、科挙の歴史から続く、猛勉強の先にある成功物語や、大学入試(高考)の仕組みや評価システムのまま宿題や塾を制限しても、学生や保護者の不安をあおるのではないでしょうか?

中国政府は政策実施から3年程度、時間をかけて結果を出すとしています。今後も、動向を見守りたいです。

(文・写真:岡本聡子)

(今回の記事は、2021年12月末時点の情報をもとにしています)

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