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広がる恋の形を8つの作品から紐解く〜セクシュアリティ編〜

  • 2022.2.14
ミランダ・ジュライ 著『最初の悪い男』

人対人の交わりに、恋の初期衝動が詰まっていた

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今年話題になった韓国ドラマ『梨泰院クラス』って観た?

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観た観た!ハマったな〜。

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主人公の仲間に心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人がいたけど、最近は映画やドラマで異性間以外の恋愛が普通に描かれるようになったよね。

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漫画や文芸でも多いよ。例えば、漫画『あちらこちらぼくら』。この前取材をした作家の大前粟生さんに薦められて読んだんだけど、タイプは真逆の男子高校生2人が、お互い自分にはない素養に惹かれて距離を縮める。恋の始まりが爽やかに描かれていて、キュンとしたな〜。

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恋愛の指向を問わず、多くの人が共感できそうだね!

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普遍性で言えば、歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』もそう。男性同士の恋がテーマの短歌だけど、歌っているのは些細な恋の風景なので、ありふれた恋愛の話にも置き換えて読める。

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普遍性で言えば、歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』もそう。男性同士の恋がテーマの短歌だけど、歌っているのは些細な恋の風景なので、ありふれた恋愛の話にも置き換えて読める。

たなと 著『あちらこちらぼくら』
明るくクラスの中心的存在・真嶋と、内省的で地味な園木。一見嚙み合わないはずの2人が少しずつ心を通わすさまを描いた青春漫画。朝に目を覚ました時に相手のことを思い出したり、突然出くわして顔を赤らめたりする2人の純粋さは、爽やかな恋の始まりを想起させる。上下巻。ホーム社/各¥920
雪舟えま 著.『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』
“恋びとのやせて優しい二枚の頰つつめばこの部屋は生きている”など、恋愛のワンシーンを切り取った作品を収録した短歌集。序文の記述や「♥♥♥♥♥愛しあう王子たち」という章題によって男性同士の恋愛をテーマにしていることがわかるものの、読み手に解釈の余地を与える普遍性が持ち味。書肆侃侃房/¥2,000
ティリー・ウォルデン 書『スピン』
スケートの練習に明け暮れる思春期の少女の成長を描いたアメリカのグラフィックノベル。仲間からのイジメや親とのすれ違い、そして挫折を味わいながらも、レズビアンである自分を受け入れていくさまをみずみずしく表す。国は違えど、10代ならではの恋への葛藤と生きづらさは万国共通。河出書房新社/¥1,600
ミヤギフトシ 著.『ディスタント』
現代美術家・ミヤギフトシによる青春小説。沖縄、大阪、ニューヨーク、東京を経てのちに写真家となる男が主人公。ゲイセクシュアルを自認する彼の、向かい合う相手のまつ毛や髪の毛に対して極めてかすかに泳がす視線の描写によって、淡い恋のようなものを読み取ることができる。河出書房新社/¥1,800

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いいね!ほかにも、小説『ディスタント』が描く恋をした時のかすかな視線の動きや、小説『最初の悪い男』や漫画『やがて君になる』が描く恋をする過程に触れると、セクシュアリティは多様化しても、相手の気持ちを推し量ったり、些細な仕草や表情を愛おしんだりする恋の本質は変わらないと感じるね。

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それと、今の恋の広がりって単純な同性愛に限らないよね。例えば、ドラマ版で志尊淳の女装が話題だった『女子的生活』の主人公は、見た目は女性で体は男性、恋愛対象は女性のトランスジェンダーだった。

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私も原作を読んで、初めてそんな人がいるって知った。主人公が超ポジティブなのがいいよね。

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ネイルをキラキラに仕上げてミニスカートで出社。合コンでは女子をお持ち帰りしちゃうもんね(笑)。

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外野の攻撃に屈せず、ありのままの自分を楽しむ姿勢は潔い!

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映像なら『性別が、ない!インターセックス漫画家のクィアな日々』も良かった。インターセックスは、男性と女性の中間の性のことだけど、映画評論家の森直人さんも「性への認識を柔らかく広げてくれる一本」と太鼓判を押している。

ミランダ・ジュライ 著『最初の悪い男』
小説の主人公は、孤独ながらも妄想に浸ることで快適な生活を謳歌する43歳独身のシェリル。ある日、衛生観念ゼロ、美人で巨乳、足の臭い上司の娘、クリーが転がり込んできたことで生活は一変。すさまじい嫌悪から始まった2人の関係は、やがて恋とも、家族とも言える強固なものになっていく。新潮社/¥2,200
仲谷鳰 著『やがて君になる
人に恋する気持ちがわからず悩む女子高生と、彼女に好意を抱く生徒会の先輩、その2人の交流を描いた青春漫画。自分らしさを見つけることで、恋を理解していく少女たちの思考の歩みには、まさに人を好きになる過程が表れている。テレビアニメ化や舞台化もされた。全8巻。KADOKAWA/¥570〜¥680
坂木司 著『女子的生活』
外見は女性だが身体的な性は男性で、恋愛対象も女性という複雑な性的指向を持つトランスジェンダーを描いた痛快ガールズストーリー。「お涙頂戴」的な展開に寄ることはなく、様々な障壁も女子力と明るさで乗り越えていく。2018年にはNHKで、俳優・志尊淳主演でドラマ化されたことでも話題に。新潮社/¥1,500
ドキュメンタリー『性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々』
身体的には女性として生を受け、30歳にして、男でも女でもない中間の性・インターセックスであることが判明した漫画家・新井祥に迫ったドキュメンタリー作品。離婚を経て、新たな恋へ自分らしく踏み出すさまには、個々の性や恋をカテゴリー分けによって規定する無意味さを感じる。マクザム/¥4,000(DVD)
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