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正しい復縁の方法など無い【彼氏の顔が覚えられません 第42話】

  • 2015.8.27
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きょうび、ネットには恋愛に関するさまざまなハウツー記事が毎日上がり続けている。「復縁」なんて言葉も、検索すればすぐ出てくる。わざわざ本屋の恋愛本コーナーで探すなど恥ずかしい思いをする必要もないし、しかも無料だ。

正しい復縁の方法など無い【彼氏の顔が覚えられません 第42話】

画像:(c)Smileus - Fotolia.com

問題は、手軽で金がかからないからつい探しすぎてしまうこと。ある記事に「必勝法」として書いてあることが、ある記事では「絶対にやってはいけない」なんて紹介されていたりする。これじゃ正解がどれかわからない。

最終的に、どの記事にも書かれているようなありきたりな方法を選ぶしかなくなる。それは、「時間を空ける」。なにもせず、時期がくるのをただ待つということだ。時期とは? さあ、わからない。

正直、不安だ。その不安を打ち消すように、俺はひたすら楽器に打ち込もうと考えた。4月、5月。イズミのことを考えないよう、真剣に。が、無理だった。考えまいとすればするほどイズミへの想いが強くなる。

イズミはとっくに俺のことなんて忘れてしまっているかもしれない。俺は絶対無理だ。嫌いにでもならない限り。嫌いになろうとすればするほど、俺に水をぶっかけたイズミの表情が浮かぶ。

あんな顔、初めて見た。言い放ったセリフはクールだったのに、目を真っ赤にして涙をためていた。

なんだ、表情がつくれないわけじゃないんだ。つくるのがヘタだから、ときどき勘違いしてしまう。

イズミには感情が無いんじゃないか。本当は俺のこと、スキとも何とも思ってないんじゃないか。声をかけなければ、俺の存在すら認識してくれないから――。

「もうっ、いつまでウジってんの!!」

部室で一人ぼーっと考えていると、いきなり譜面で頭を思いっきりひっぱたかれた。マナミだ。

結局、軽音部に入部したマナミ。部内恋愛禁止のこの部へ身を置くことで、俺への恋心を完全に絶ったつもりらしい。

少なくとも、以前みたいな色仕掛けは使ってこない。代わりに、俺に対する暴力が後を絶たない。片思いの相手から、ただのサンドバックかよ…。

「6月、ライヴに出るわよ! 私と二人で。そこにイズミも呼ぶの。カズヤのホンキ見せて、もう一度アタックしなさいよ!」

ちょ、なんの前フリもナシかよ。

「なんで一緒に出なきゃなんねぇんだよ。お前と組んだら、またイズミに嫌われんじゃ…」

「逆でしょ。むしろ、ちゃんと組んでやるべきよ。なんたって私たち、ただの"ギター友達"なんだし」

それは俺が言ったセリフ…よく覚えてやがる。

「でもお前、ギター弾き始めたばっかじゃ…」

言い終わるより早く、マナミはフォークギターをかき鳴らす。ゆずの「夏色」のイントロを。そのときのドヤ顔…一瞬、殴ろうかと思いたくなるようなふてぶてしい表情だった。もう、俺より上手いじゃないか…。

「私、元コンバス奏者よ。見くびらないでよね」

同じ弦楽器だし…って、そんな問題か? まぁ、ワンマンは無理だろうが、フォークライヴのいちアーティストとして出場するくらいなら、可能性アリかも。

それに、イズミにもう一度アタックするためのホンキの見せ場なんて、もう音楽しか無いじゃないか。

こうして、俺とマナミによるギターコンビが誕生したのだった。その名は"178(イナバ)ライダー"。名前の由来? そんなもの…あるわけないだろ。

(つづく)

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(平原 学)

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