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デザイナーが住む三角屋根のアトリエ。新しい北海道の暮らし

  • 2022.2.7
デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 外観

仕事場と暮らしの場を一つにして家族の時間を育む

木製家具のデザインや製作を行う〈モノクラフト〉の清水徹さんは、この春、妻のセキユリヲさんと子供たちと共に、東京からここ、北海道は東川に移住した。

清水さんが東川に初めて来たのは15年以上前。家具製造を依頼していた会社が東川にあり、仕事で定期的に通ううち、東川にアトリエを持ちたいと思うようになったという。
その夢が叶ったのは今から5年ほど前のこと。知人を通じて、築50年、木造2階建ての「三角屋根」の家に巡り合った。

デザイナー・清水 徹 自宅敷地内に増設した工房 外観
敷地内にある建物は3つで、右がこの場所にもともとあった建物を改修した住まい。中央が現在建設中のアトリエ棟で左が自社工房。アトリエ棟は木造2階建て。家具のショールームと住宅のモデルハウスを兼ねる。

その見た目から通称「三角屋根」の名で親しまれてきた家は、1960年代に北海道住宅供給公社が積立分譲住宅として供給した規格型住宅。

「北海道の風景をつくってきた家でもあるし、形がシンプルで改修しやすいと思った」と清水さん。躯体以外すべて更新の全面改修を行い、アトリエとして使っていたこの家を「家族の住まい」にして移住しよう、と最初に決めたのは、ユリヲさんだった。

デザイナー・清水 徹 自宅敷地内に増設した工房 屋内
2019年に敷地内に増築した平屋の自社工房〈東10号工房〉。家具作りのパートナー、遠藤覚さんが使っている。遠藤さんと清水さん夫婦は、11年前に留学したスウェーデンの手工芸の学校〈カペラゴーデン〉で出会った。
デザイナー・清水 徹 自宅敷地内に増設した工房 外観
水色にペイントした縦板張りが目を引く〈東10号工房〉外観。東川町の中心部から車で約10分。東川には「価値観が合う人が多いのが嬉しい」と清水さん。町役場も移住者支援に積極的で旭川空港への近さも利点の一つ。

ユリヲさんは生活雑貨ブランド〈サルビア〉を主宰するグラフィックデザイナーで、子供との生活が始まってからは一時休業、自主保育活動に参加するなど全力で育児に取り組んできた。
そんな彼女にとって移住への大きな決め手になったのは、地域の自然学校が運営する「森のようちえん」との出会いだったという。

「アトリエ滞在中にたまたま自然学校の存在を知って、ここだ!と思ったんです。住む場所で大事なのはやっぱり、人ですね。子育てを一緒にしたいと思える人たちがいるから、住みたいと思えた。
ここで子供たちの成長とともに挑戦してみたいことがいくつもあります」とユリヲさん。仕事も徐々に再開しているが、もともと子育てを機にリモートワークへと移行していたため移住後も働き方はあまり変わらず。不便はないという。

デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 キッチン
つい最近まで手つかずに近かったキッチン。移住に合わせて急ぎ整えたが、コンロを正面に右側の壁はまだ石膏ボードのまま。「家中こんな感じも楽しかったからこのままでもいいくらい」とユリヲさん。
デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 階段下スペース
2階への階段下にコート掛けを設けた玄関。東川は道内でも有数の積雪寒冷地で、家族が冬の寒さに耐えられるか否かも移住前の検証事項だった。薪ストーブ用の薪の確保は清水さんの大事な仕事の一つ。
デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 書斎
写真左奥、1階のダイニングの一角がユリヲさんの書斎。清水さんの書斎は敷地内に建設中の新たなアトリエ棟に設ける予定で、それまではダイニングテーブルがワークデスクも兼ねる。東京との仕事もリモートで続けている。

清水さんは、家具作りの拠点と住まいが東川に集約されたことで、〈モノクラフト〉の活動にもゆとりが持てれば、と期待する。気分転換は趣味のフライフィッシング。敷地から徒歩10分の場所に、清水さんの釣り場、忠別川がある。

デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 外観2
デッキを設けた西側の外観。デッキは子供たちが大好きな場所。アトリエとしてのリノベの完成は2018年。敷地面積は約600坪。周辺は農地に囲まれていて見晴らしが良く、晴れていれば十勝岳連峰のオプタテシケ山も望める。
デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 外観
道内では「三角屋根」の通称で親しまれ、今もあちこちに残る規格型住宅を全面改修。モルタルを剥がし張り直した外壁は道産材のトド松。木製サッシは津別の〈山上木工〉の作。写真正面の扉は倉庫に続く勝手口。
デザイナー・清水 徹・セキユリヲ夫婦 自宅 リビング、ダイニング
1階のリビングダイニング。リノベーションは地元大工の協力を得つつ、壁に断熱材を入れたり床板を張ったりする作業は友人たちと行った。清水さんは早稲田大学の建築学科卒業。改修設計も自ら行った。

profile

デザイナー・清水 徹・セキユリヲ 家族

清水徹/セキユリヲ(デザイナー/グラフィックデザイナー)

しみず・とおる/東京都生まれ。大学で建築とデザインを学び、設計事務所やエディトリアルデザインなどの経験を経て、2001年に〈モノクラフト〉設立。
せき・ゆりを/千葉県生まれ。『edu』のアートディレクターなどを経て、2001年に〈サルビア〉設立。長女は今年小学校に上がったばかり。長男は4歳。「森のようちえん」に通う。

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