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大根仁監督に、直撃談!電気グルーヴのドキュメンタリー第2弾『DENKI GROOVE THE MOVIE 2 ?』

  • 2022.2.6
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獣神ライガーのマスクを被った、電気グルーヴ石野卓球

もともと『DENKI GROOVE THE MOVIE?』を2015年に作ったところから始まっていて。「電気グルーヴの結成25周年記念でドキュメンタリー映画を作ってほしい」と、当時の電気のマネージャーから連絡があったのが最初です。

卓球さんが家で古い段ボールを整理してたらデビュー当時のライブ映像がたくさん出てきて、これをまとめて映画化したら面白いんじゃないか、「だったら監督は大根さんで」と2人が言ったと。それは光栄だと思いつつ、「ああ、気が重いなあ」って(笑)。

電気グルーヴは大好きなんです。でも、石野卓球とピエール瀧という2人は、僕にとって、いちばん面白くて、いちばんカッコよくて、いちばん怖い先輩。生半可な気持ちでは関われない。200%で返さないと対峙できないんですよ。だから、2人に指名されたときは「恐怖新聞」が届いたような感じで、絶対死ぬなって(笑)。

さてどうしたものかと。バンドのドキュメンタリーって、過去にピークがあるとわかりやすいんです。いざこざがあって再結成とか、メンバーが脱退したけど復活とか、アップダウンや紆余曲折の物語があると作りやすい。

でも、あの人たちは、高いレベルを維持しながら進化し続けている稀有な存在で、わかりやすいピークがないんです。ヒストリーを追いつつ、現状も伝えるけれど、ヤマ場をどこに持ってくるのか、その構成が難しい。

電気グルーヴ 石野卓球とピエール瀧
電気グルーヴ 石野卓球とピエール瀧

なので、関係者にインタビューしつつ、電気のツアーに張り付き、バックステージも含めいろいろ撮って。結局、出来上がるまで1年、いや、1年半かかったかな。基本的に本人たちは何も言わないんです。「全部任せたから」と。
そう言われるとハードルがさらに上がるんだけど、卓球さんに出来上がりを観せると、「面白い!最高!」って連絡があって。やった、と。

電気を知る人にも知らない人にも、全方位に向けたドキュメンタリーに仕上がったし、映画における興収という使命も黒字にすることができた。僕も満足したんです。もう二度と彼らの映画を作ることもないだろうと。肩の荷を下ろし、一ファンに戻ったんです。

電気グルーヴ 石野卓球とピエール瀧
電気グルーヴ 石野卓球とピエール瀧
フジロック2021 電気グルーヴのライブ

ゴールはどこにあるのか?どっちかが死ぬときなのか?

2019年。僕はNHK大河ドラマ『いだてん』の撮影に参加していました。ご存じのように、瀧さんはそこで重要な役を演じていて。意外にも、瀧さんと仕事をするのはそれが初めて。俳優と演出家の関係はそれまでなかったんです。で、あの事件が起こった。

プロデューサーと演出チームが集まって重苦しい会議が続いていたとき、僕だけ別のことを考えていたんです。「映画のパート2をやんなきゃ」って。今回は前回と違って明確な物語を紡ぐことができる。これはもう、絶対に撮らなくちゃいけない。絶対に面白い。別の血が騒ぐっていうかね(笑)。

大騒動から1ヵ月ぐらい経った頃、卓球さんに連絡したんです。「ちょっと話をしたいんですけど」
「いいよいいよ、会おう」。で、中目黒の個室のある居酒屋に行って。卓球さん、部屋に入ってくるなり「映画でしょ?やろうよパート2。絶対盛り上がる」(笑)。そこから2〜3週間後、卓球さんから電話がかかってきて。「明日空いてる?」「夕方に仕事終わります」

「じゃあうち来てよ」。それで撮ったのがYouTubeで公開している予告編。獣神ライガーのマスクを被ってるコレです。「今日さ、これ買ったんだよ」ってライガーのマスクを見せられて。「え、被るんですか?」「マスコミのヤツらがすげえ来てるから遊んでやろうと思ってさ」って(笑)。

獣神ライガーのマスクを被った、電気グルーヴ石野卓球

あの日撮っただけでもめちゃめちゃ面白くて。なんといっても、詰めかけた報道陣の滑稽ぶり。撮りながらふっと頭をよぎったのが森達也さんのドキュメンタリー『A』。ああ、森さんが見ていたのはこの光景だったんだなって。

逮捕、SNSのバッシング、音楽の配信停止、マスコミのバカ騒ぎ、2人の友情、そして来る2020年フジロックのヘッドライナーで復活。そういう物語が美しいと思っていたし構成もできていた。でも世界はコロナで一変。物語もいったん途切れてしまったんです。

2021年のフジロックで電気は完全に復活しました。めちゃくちゃいいライブで盛り上がって。でも、撮りながら、これはこの映画の出口ではないなと。感覚として、今年のフジロックは映画前半のピークだろうなって。
いや、前半にも到達してないかもしれない。いつ終わるのかがわからなくなった、というのが正直なところ。2人の還暦がゴールなのか、それともどっちかが死ぬときか。僕が先に死ぬかもしれないですけど。

profile

映画監督 大根仁

大根仁(映画監督)

おおね・ひとし/1968年東京都生まれ。主な監督作に『バクマン。』『モテキ』『SCOOP!』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』など。テレビドラマの演出も多く、近作に『いだてん』『共演NG』など。2021年、大山勝美賞受賞。

twitter:@hitoshione

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