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エレガントな別れ方はある? 上手な破局の原則とは。

  • 2022.2.4

上手な別れ方はないとよく言われるが、とてもまずい別れ方は間違いなく存在する。一度は愛し合った者同士として友好的に別れることは可能なのか?行くべき道を専門家たちが指南する。

上手な別れ方ってあるの? photo: Getty Images

16年間続いたカップルがインスタグラムで終わりを告げた。去る1月12日、俳優のジェイソン・モモアがSNSに投稿した記事でリサ・ボネットとの破局を公表した。セレブたちの小宇宙では珍しくないニュースではあるが……、今回はいつもの騒々しい破局報道とはだいぶ様子が違う。「私たちはお互いに自由になる」とジェイソンは前置きした上で、互いの相手に対する愛と忠誠はこれからも変わらないと続ける。破局の平和条約とも呼べそうな、思いやりのある円満な別れを想像させる文面には考えさせられるものがある。

上手な別れ方などあるのだろうか?たとえ苦しみや怒りを覚えたり、恨みを抱くことがあっても、トラウマになるような出口を避け、双方にとってできるだけダメージを少なくする方法はあるのだろうか?

『別れ』(1)の著者で哲学者のクレール・マランは2019年に日刊紙『ル・モンド』のインタビューに応じて、こう語っている。「別れるときの言葉や行為は、ときに、別れの理由そのものよりも問題になることがある」。なぜなら、相手に別れを切り出すときに心得ておきたい、それなりにエレガントな手段があることを誰も知らないからだ。

無神経に別れを告げられて大きなショックを受けた。グサリとくる言葉や批判を言われ、別れた後もなかなか傷が癒えない。あまりに配慮に欠けるタイミングで別れ話を切り出され、侮辱された気分になった。こうしたことは誰でも身に覚えがあるだろう。

これには大きな問題が関わっている。別れの苦しみは軽視されがちだ。そのことは「失恋の悲しみ」という言葉の軽さにも如実に表れている。しかし心理的なレベルでは、振られたほうは自己愛の点で非常に大きな痛手を負うことになる。それはたとえカップルの間で愛情が冷めかけていたり、なくなっていても変わらない。

精神分析家で著述家のソフィ・カダラン(2)はこう話す。「他者から愛されることは存在の保証です。一言で言えば、自分のことを大切に思ってくれる人がいるということ。その人が去ってしまうと、この価値が崩壊し、自分にはもう何の価値もないと感じてしまう」

喪失感から身体的な苦痛が実際に引き起こされることもある。「このときに関与する神経回路は薬物依存症の人に見られるものと同じであることが知られています。ですから突然すべてが中断されると、しかるべき反応が生じるのです」と、神経科学博士で性科学者、カップルセラピストでもあるオロール・マレ=カラは話す。

言葉にする

ならば別れを切り出すときは少しは気を遣おうと、良識のある人なら思うだろう。もちろん、上手にすっきりと別れるための手軽な概説書があるなら、もうとっくに知られているはずだし、間違ったやり方をする人に憤慨したり悪意を抱いたりすることもないはずだ。ただ、大惨事を避けるために、デリカシーや誠実さ、そして言葉を信頼するという基本的な大原則を守ることならできそうだ。

精神分析家のソフィ・カダランによれば、大切なのは必ずしも説明することではなく、言葉にすることだという。「事前に何も告げず、別れるときにも何も言わずに、ただ“そういうことだから”と相手に既成事実をつきつけるようなやり方は、大きなダメージを与えます」。材料を一切提供しないで、どうやって理解し、立ち直れというのか?したがって最良の方法は勇気を持つこと。もう愛はない、気持ちが変わってしまったと勇気を持って伝えることだ。

こうした考え方は素朴で非現実的に見えるかもしれない。しかし精神分析家のカダランはカップルたちに別れの道のりをできるだけ「ふたりで一緒に歩む」ように呼びかける。この作業には、きちんと時間を取ること、相手に対して十分に時間を与えることも含まれている。別れに際し、カップルはそれぞれ異なる時間帯を生きている。別れを切り出したほうは、長々と考えて下した決意を告げたことで気持ちが軽くなるかもしれないが、別れを告げられたほうは呆然としてしまうだろう。そのため、「別れをいくつかの段階に分け、相手の疑問を受けとめることです」とマレ=カラは補足する。

すべて言わない、後で言う

では何を言えばいいのだろう?別れ話の雰囲気から可能であれば、つねに「あなた」ではなく「私」を中心にして会話をするほうがいいことを肝に命じよう。「“私が出て行くのはあなたのせい”と言われるのと、“これまでと違う人生を、これまでと違うやり方で生きるために、私は出て行く”と言われるのとでは印象が違います」と精神分析家のフローランス・ロトレドゥ(3)は説明する。相手をとがめない、相手の本質に関わることには触れない、それが最善の方法だ。「話す内容はふたりの関係や、ふたりの身に起きていることに絞り、たとえ相手に欠点があったとしても、そのことで相手を責めたり、相手が自信をなくしたりすような言葉は避けるのが得策です」

言うは易く行うは難しと言いたくなる人もいるだろう。確かに「別れ話になったとき、いつでも巧みに言葉を選別できるとは限りません」とカダランは認める。しかしたとえ怒りが込み上げて、堪忍袋の緒がいまにも切れそうな状況でも、すべてを言わない、あるいは後で言うように、と精神分析家は呼びかける。それは、ひどい言葉を言ってしまったり、嫌な思いが残ったりするのを避けるためだ。過去のふたりの関係に似つかわしくないばかりか、ふたりの関係を汚し、双方に大きな打撃を与える、後で後悔するような言動を回避するための防衛策なのだ。

別れの理由によっては、相手に言わないほうがいいこともある。カップルのどちらかにほかに好きな人ができた場合を例に取ろう。エゴの面では別れを切り出された人は非常に苦しい思いをするとカダランは言う。別れ話を切り出す側の気持ちはすでに別の人のほうへ向かっている。「妄想の海から這い上がるのは難しいものです。あまり詳しく状況を打ち明けて相手を苦しめないほうがいい。慎重に言葉を選んで、新たに好きになった人のことを褒めそやさないように気をつけるべき」と精神分析家は強調する。

「なかには罪悪感のあまり、洗いざらい打ち明けないといけない気持ちになる人もいますが、相手を尊重することは、相手が知りたいと望むことに敢えて答えないことでもある」。細かいことを聞かれても、例えば「このことで自分は充実した人生を送っていないと気づいた」といったような言い方をし、詳細には触れないほうがいいと専門家は言う。

寄り添う

別れ話を切り出した後は、具体的にどうしたらいい?「励まし合うことです」と精神分析家のロトレドゥは断言する。「しばらく繋がりを断ちたいと考える人もなかにはいますが、元パートナーとコンタクトを取り続けることが励みになる人もいます」。できる限り、ふたりの関係に最後まで敬意を払うことを目標としてほしい。ふたりともそのための道具を持っていない、あるいは入り乱れる感情と苦しみのせいでそれが難しい場合は、カップルセラピストに適切な支援を求めましょう、とマレ=カラはすすめる。

(1) Claire Marin著『Rupture(s)』L’Observatoire出版刊(2) Sophie Cadalen著『Aimer sans mode d’emploi』Eyrolles出版刊(3) Florence Lautrédou著『L’amour, le vrai』Odile Jacob出版刊

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