食のプロを唸らせたドキュメンタリー『プロフェッショナル 仕事の流儀 羊飼い・酒井伸吾』推薦人：菊池一弘

命をいただくことへの感謝を改めて実感。

北海道の羊飼いさんのなかでもとても尊敬しているのが、白糠町で300頭もの羊を家族で育てている酒井伸吾さんです。初めて酒井さんが育てた羊肉をいただいた時の衝撃はすさまじく、どうしたらこんなにピュアでおいしいお肉に育つのだろうと思っていた時にこの番組を観て、どんな時でも羊ファーストで生きる酒井さんの姿に感動しました。

日本での流通量が1％にも満たない国産羊は本当に稀少な食肉で、扱う店も少ないです。牛や豚などの畜種に比べて、国からの助成金が圧倒的に少ないので、羊飼いとして生きていくのには相当な覚悟がいります。

生まれてきてくれた羊たちに感謝をしながら、大切に育てる酒井さんには飼い方の哲学があり、ストレスなくのびのびと育てるのはもちろんですが、自分のことを後回しにしても、羊たちにどれだけ愛情を注ぐかがとても大切なことなんだと、ものすごく伝わってくる。

肥育環境にしても飼料にしても、独自の哲学は貫かれていて、まずは何をおいても羊の声を聴く、ということを一番大切にされている。自分の羊飼いとしての人生を支えてくれるすべての人や物事に感謝をし、謙虚にたくましく、そしてしなやかに生きる姿に心が揺さぶられるドキュメンタリーです。

『プロフェッショナル 仕事の流儀 空と大地と羊と共に～羊飼い・酒井伸吾』ここがおいしい！

「生産者の純粋かつ力強い生き方に胸を打たれる！」
酒井さんの明るく自然体な人柄に心が惹きつけられると同時に、自分たちが普段いただいている命への感謝の思いが湧き上がる作品。人間としていかに生きるかということについても考えさせられる。

Information

『プロフェッショナル 仕事の流儀 空と大地と羊と共に～羊飼い・酒井伸吾』

北の大地で羊と向き合い生きる羊飼いがいる。東京の有名店のシェフたちも絶賛する羊を育てる彼の名前は酒井伸吾。羊に魅了され、生産者として、一人の人間として命と密接に関わり、羊とともに生きることを選んだ“プロの流儀”とは。NHKオンデマンドで配信。

profile

菊池一弘（羊齧協会主席）

きくち・かずひろ／羊肉の消費団体〈羊齧協会〉の設立者。羊肉普及のために、羊フェスタなどイベントを開催。日本初のラム肉レストラン本『東京ラムストーリー』を監修するなど、羊愛を原動力に、多岐にわたり活動。