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3000人待ちの「一万円選書」を疑似体験。 いわた書店店主が選ぶ「テッパン」の4冊も

  • 2022.2.2

「一万円選書とは、特製『カルテ』をもとに、あなたにあった1万円分の本を選書し、お届けするものです」――。

経営難にあった北海道砂川市のいわた書店が、2007年から始めた「一万円選書」。読者の琴線に触れる選書術で、多くの感動を生んでいる。募集は1年で7日間だけ。そこに約3700人の応募が集まるという。

いわた書店店主・岩田徹さんの『一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』(ポプラ新書)は、いわた書店の哲学を伝えるとともに、「一万円選書」を疑似体験できる1冊。

岩田さんは「一万円選書」をするとき、お客さんに「選書カルテ」を書いてもらっている。1人1人にぴったりの本を選ぶためには、人となりを知る必要があるからという。

「選書カルテ」

――これまで読まれた本で印象に残っている20冊を教えてください。
――これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことは?
――何歳のときの自分が好きですか?
――上手に歳をとることができると思いますか? もしくは、10年後どんな大人になっていると思いますか?
――これだけはしない、と決めていることはありますか?
――いちばんしたいことは何ですか? あなたにとって幸福とは何ですか?
――そのほか何でも結構ですので、あなたについて教えてください。ゆっくり考えて書いてみてください。

手から手へ、本を届けていく

2007年に始めた「一万円選書」だが、7年間は鳴かず飛ばず。いよいよ窮地に立たされた2014年、ある深夜番組で紹介されたことをきっかけに、ネットで話題を呼んでブレイクした。

いわた書店に中心に並ぶのは、新刊やベストセラーではない。岩田さんがこれまで読んできた約1万冊の中から、「心に響いた」「僕はこういう本を売りたいんだ」というものばかり。

「『この本、おもしろいから、ほら読んで』って、手から手へ、本を届けていく。それができていると実感するいま、本屋の仕事が本当に楽しい。楽しいんです。これからここで、ちょっと変わった北国の町の小さな本屋『いわた書店』と『一万円選書』を巡る話をしていきます」

本書は「第1章 いわた書店の店主になるまで」「第2章 『一万円選書』の極意」「第3章 僕はこうやって本を選ぶ――いわた書店の珠玉のブックリスト」「第4章 北海道砂川だからできる『やりたかった本屋』」の構成。

収録内容は、読者との書簡のやりとり、ネットですぐに情報が得られる時代にどうして本を読むのか、どうやって本を選んでいるのか、人生で影響を受けてきた本、「一万円選書」で選んでいる本など。

「生の読書体験」を

ここでは、「いわた書店の珠玉のブックリスト」の「初心者から玄人までおすすめできるテッパンの4冊」から。

「読みやすくてわかりやすい」「難しいことをやさしく書いてある」「人生において大事な言葉がぽっと書いてある」本の代表として、加納朋子さんの『カーテンコール!』、朝倉かすみさんの『田村はまだか』、いしいしんじさんの『トリツカレ男』、金井真紀さんの『パリのすてきなおじさん』を紹介している。

「『僕の人生、ここで詰んだのかな』と思ったときに、お客さんがいわた書店を見つけてくれた。たくさんいただいたご注文メールは、お客さんからのカーテンコールでした」。読書体験も人生経験も豊富な岩田さんならではの、唯一無二の紹介文がつづく。

「その人が歩んできた人生によって、読むタイミングによっても、響く言葉も印象もまったく異なるものになると思います。(中略)本の中には、簡単に説明できない複雑な物語、要約できない気持ちなんかが書かれている。実際に読んではじめて動かされる感情があるはず。そういうものが『生の読書体験』なんです」

町の本屋さんをめっきり見かけなくなったいま、こんなにも人のぬくもりを感じられる本屋さんがまだあるのかと、嬉しくなった。本離れと言われようと、本を欲している人は確実にいることを、「一万円選書」の人気ぶりは証明している。

「本をどう選び、どう読むか」。本好きの人はもちろん、読みたいけど何を読んだらいいのかわからない人にも、本書は絶対おすすめ。「あなたの人生に寄り添ってくれる本」を、ぜひ見つけてほしい。

■岩田徹さんプロフィール

1952年北海道美唄市生まれ。いわた書店店主。札幌市から車や電車で1時間ほどにある砂川市で、家業を継ぎ90年から書店を経営。独自の選書サービス「一万円選書」が話題に。

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