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日本の白小林エリカの文房具トラベラーvol.23

  • 2022.2.1
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出典 andpremium.jp

熟れたベリーの赤、夕焼け空のピンク、ホースのブルー、好きな色は無数にある。けれど、どうしてもその中から1色だけを選ぶなら、私は白。北極圏で雪の白を幾つもの言葉で言い表せたらどんなにか素敵だろう。
中でもずば抜けて素晴らしいと思うのは日本の紙の白。伝統的な和紙は勿論のこと、書籍から、コンビニのコピー用紙に至るまで、私の白い欲望をこんなにも満たしてくれる紙天国は、他に見たことがない。
そんなに白い紙が好きならばと思い立ち、以前一度和紙漉き教室へ通ったことがあるのだが、一朝一夕で職人技をマスターできるはずもない。
理想だけは高い私が思い描くのは、6世紀初頭からはじまったともいわれ画伯たちが愛用した越前和紙や、正倉院に残るという美濃和紙であり、断然それは自分で漉くより買うべきものであった。
白い紙を何枚も重ねてみる。そしてその上に白い絵の具で線を描く。ああうっとり。外をふと見れば秋雨の空の雲も垂れこめ白い。あと数ヶ月もすれば雪も降るだろう。

左/鳥取県の因州和紙封筒(高松のBOOK MA RUTEで買ったけれど)。右/京都国立博物館蔵、俵屋宗達画「鶴図下絵三十六歌仙和歌巻」がアレンジされた便箋。下/日本画用の絵具の白は貝殻から作られた「胡粉」。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.24 2015年 10月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。

&STATIONERY

作家・マンガ家 小林 エリカ
出典 andpremium.jp

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。

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